もくもく会の掲示板に、やりたいことが書き込まれています。そのうち三つに答えます。ただし完成した手順書は書きません。 出来上がったものを渡すと、いちばん面白いところ——自分で試して転んで直す時間——を奪ってしまうからです。 ここで渡すのは最初に打つプロンプトと、先に知っておくと転ばずに済む穴だけです。
質問に完璧に答えると、質問した人は読んで終わりになります。手を動かさないまま「わかった気」になって、 三日後には何も残っていない。これは自分がさんざんやってきた失敗です。
それに、私が書ける「正解」は私の環境での正解でしかありません。使っているツールも、扱う技術分野も、 社内の制約も違う。手順書をそのまま渡しても、たいてい三行目で合わなくなります。
だからここでは、難所がどこにあるかを先に言います。そのうえで、最初の一手だけ渡します。 転ぶ場所が分かっていれば、あとは自分で進めます。
掲示板に書く → 誰かが途中まで答える → 試す → 結果をまた掲示板に書く。 この往復が回るかどうかを試しています。うまくいったこと以上に、うまくいかなかったことを書いてもらえると助かります。 詰まった場所こそ、次の教材が要る場所だからです。
競合他社の特許公報を、J-PlatPatで定期的に検索し、他社動向、自社ポジションが分かる特許マップを作りたい。
自動化から入りたくなりますが、間違った式を毎週自動で回しても、間違った絵が毎週出てくるだけです。 しかも自動化されている分、疑わなくなる。ここがいちばん危ない。
先に固めるべきは検索式です。そして式の良し悪しは、取れた件数では判定できません。 「500件取れました」は何の保証にもならない。判定する方法は一つで、 この式なら当然引っかかるはずの特許を、先に5件挙げてから回すことです。
私は【技術分野/製品名】の競合動向を追いたい。 まず検索式を作りたいので、順にやってください。 1. この分野の技術要素を5〜8個に分解して 2. 各要素について、FI / Fターム の候補と キーワード(同義語・表記ゆれ・カタカナ/漢字の両方)を挙げて 3. J-PlatPat の論理式として組み立てて ※ J-PlatPat の論理式は後置記法(postfix)です 4. その式で当然ヒットするはずの特許を、 公開番号つきで5件、先に予想して挙げて 5. 私が J-PlatPat で5件を確認します。 外れていたら、式のどこをどう直すか教えて
4と5が肝です。式を作らせっぱなしにしない。 5件で往復して初めて、その式は信用できます。私はこれを省いて、 半年分の集計をやり直したことがあります。
出願人 × 年次の棒グラフを作って、眺めて、「で?」となる。これは可視化の失敗ではなく、 軸の設計をしていないことの結果です。
「自社ポジション」を知りたいなら、見るべきは埋まっている場所ではなく空白です。 他社が出していて自社が出していない領域。逆に自社だけが居る領域。 空白の方が、埋まっている場所より情報量が多い。
式を1本。予想5件で往復。CSVを1回だけ手で書き出す。
定期化はそのあとで十分です。
拒絶応答などの検討の際、審査官の過去の応答内容から審査官ごとに「通り易い筋」も加味した上で応答方針を立てる
やりたいことは実現できます。審査官名は公報にも経過情報にも載っている公開情報です。 ただし先に言っておくと、「この審査官は◯◯を認めやすい」と言えるだけの件数は、たいてい集まりません。 一人の担当件数は限られ、しかも技術分野が偏ります。
n が足りないまま傾向を語ると、審査官の癖ではなく、その技術分野の癖を見ていることになります。 これは統計的な失敗というより、方針を誤る実務的な事故です。
そこで、狙いを少しずらすことを勧めます。効くのは審査官個人の当たり外れではなく、 その審査官が拒絶理由をどう組み立てるかの「型」です。29条2項なら、主引例と副引例の関係をどう説明するか。 動機づけを課題の共通性に求めるのか、作用効果に求めるのか。周知技術をどこまで使うか。 これは1通の拒絶理由通知を精読するだけで見えはじめます。
以下は、同じ審査官が出した拒絶理由通知◯件の本文です。 完全な結論は要りません。「仮説」を立ててください。 1. この審査官が29条2項を組み立てるとき、 主引例と副引例の関係をどう説明する傾向があるか 2. 「動機づけ」をどこに求めているか (課題の共通性/作用効果/技術分野の関連性) 3. 周知技術・慣用手段をどの程度使うか 4. 補正で通った案件と通らなかった案件の差はどこか 5. この仮説を検証するには、あと何を見ればいいか 制約: - 各項目に、根拠となる原文の記述を必ず引用すること - 引用できない項目は「根拠不足」とだけ書くこと - 一般論としての審査実務の説明は不要です
最後の三行が本体です。根拠を引かせないと、それらしい傾向論を創作します。 しかもその創作は非常に読みやすく、もっともらしい。「根拠不足」と書かせる余地を残しておかないと、 全項目が埋まって返ってきます。
この分析は自分の手元の判断材料として持つのが本筋です。 分析すること自体はまったく問題ありませんが、書き方を誤ると相手の心証に触れます。
意見書に「貴官は従来◯◯と判断されており」とは書かない。 分析結果は方針決定に使い、書面には筋のよい主張だけを残す。ここは分けたほうが安全です。
1人 × 10件。根拠引用つきで仮説を書かせる。
読んで「当たっている」実感があれば、そこから広げる。
医薬バイオ系の判例を長期間にわたって解説しているブログの内容を自分の相談相手にしたい
ひとつは著作権です。自分ひとりが手元で使うのと、チームで共有するのとでは、まったく別の話になります。 私的複製の範囲に収まっているうちは問題になりにくい。共有した瞬間に、他人の著作物の複製物を配布したことになります。 技術的には同じ作業なのに、法的な立ち位置が変わる。ここは最初に決めておかないと、後から戻れません。
もうひとつは「いつ時点の理解か」です。長期連載ということは、 後の記事が前の記事を修正している可能性があります。そして判例の理解は、 その後の上級審や後続判決で変わります。
ここに、RAGでいちばんよく踏む地雷があります。 チャンクに分割するとき、公開日が落ちる。 落ちたまま検索すると、令和3年の理解と令和6年の理解が同じ重みで混ざって返ってきます。 しかも出力は自信たっぷりです。私はニュース記事で同じことをやって、古い数字を最新として引きました。
ある法律ブログの記事◯年分を、検索して相談できるようにしたい。 実装の前に、設計の穴を指摘してください。 前提: - 記事は時系列で、後の記事が前の記事を修正していることがある - 判例の理解は上級審や後続判決で変わることがある - 私は「いつ時点の理解か」を必ず知りたい - ブログ主の見解と、判決文そのものは区別したい 質問: 1. チャンクに必ず持たせるべきメタデータは何か 2. 「古い理解を新しい理解と混同して答える」事故を防ぐには、 検索時と生成時それぞれで何をすべきか 3. 最初の10記事だけで設計の正しさを確かめるための、 検証用の質問を3つ作って
そして、出来上がったら必ずこの三つを聞いてください。設計が正しければ答えられ、 間違っていれば答えられません。
・この論点について、いちばん新しい記述はいつのものですか ・同じ論点で、時期の違う記述が複数ありますか。 あれば、古い方と新しい方を両方出してください ・いまの回答は、ブログ主の見解ですか、判決文の記述ですか。 出典の記事タイトルと日付を添えてください
10記事だけ入れる。上の検証用の質問3本を投げる。
日付が返ってこなければ、設計を直してから増やす。
書きながら気づいたのですが、三つとも「作る前に決めておくこと」でつまずく形をしていました。
どれも技術の問題ではありません。作り始めると決めにくくなることを、作る前に決めるという同じ形です。 そして三つとも、最初の一歩は「10件」や「5件」で足りる。 全部やろうとすると重いのに、確かめるだけならその日のうちに終わります。
掲示板に書いてもらえれば、同じ形で返します。やりたいことでも、詰まっていることでも、うまくいった話でも。
とくに歓迎なのは失敗の報告です。「ここで動かなくなった」は、次の教材が要る場所を教えてくれます。 うまくいった話より価値があります。
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