#知財戦略体系化 第10回 プロジェクト再スタート
第9回(2026-02-28)からの振り返りと、これからの体系化
羽矢崎 聡(知財戦略実践家) | 2026年10月18日
全体像
1
原点
事業で勝つための知財。三位一体(丸島)は変わらない
2
半年の実証
AI で作る・探すは安くなった。詰まりは問い・着想・決める場へ
3
体系化
論考148本を6層27ノードの地図に。67事例を5つのレンズで分析
4
発見
噛み合いを決めるのは局面より「当事者」。誰が引き受けて束ねるか
5
進め方
生きた体系を母艦に、会・道具・本をつなぐ。まず次の90日
知財戦略は、分析では終わらない。長期の投資を引き受けて束ねる当事者まで設計して、初めて事業を強くする。
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02
前回までのおさらい
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03
半年の棚卸し
青=書く・まとめる 橙=社外の場をつくる 濃紺=社内で作る・回す 灰=止めたもの
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
YouTube シリーズ
note(98本)
AI 仮想会社
NotebookLM
OI-WG 卒業制作
もくもく会の教材
社内の道具づくり
今夜 第10回
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04
半年の棚卸し
note
98本
2/04〜10/08。春は思想と物語、秋は事例の読み解き
もくもく会の知財教材
58本
知財ビジネスモデル図鑑は30事例
OI-WG の論考・作品
31
オープンイノベーション研究の系譜で書いた
AI の道具(スキル)
36
調査・起草・出願・届け方を道具にした
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05
原点
「この原理で、誰が何を
繰り返し買うのか」
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06
3月に描いた未来
物語『知財設計』(note 2/28〜3/01)。架空の精密機器メーカーの知財部長、48歳
1
AI の下書きが人の明細書に並び、「製造」は AI に任せられる
2
浮いた力は「設計」へ。製造責任から設計責任へ
3
件数 KPI の罠に気づく
4
誰にも頼まれていない若手の仕事が、組織を動かす
5
知財部門が「なくても良い」世界。知財の民主化
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07
答え合わせ
| 3月の想定 | 半年後の実際 | 判定 |
|---|---|---|
| 製造は AI へ | 起草から送信まで、自分の手で通した | 当たった |
| 解析は当たり前に | 全件を手元に持ち、精度を測る段階へ | その先へ |
| 浮いた力は設計へ | 案は一晩で千件単位。律速は「お題」と人の着想 | 一部 |
| 件数 KPI の罠 | 報告の言葉を変え、「動かした判断」を数え始めた | 当たった |
| 頼まれない仕事 | たくさん作れた。次は、使われる形で届けること | 形を変えて |
| 知財の民主化 | 言葉は消え、「渡す」「持ち寄る」場へ | 形を変えて |
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08
答え合わせ
経営の圧力も、社内の対立もなかった。危機は、自分で AI を持ち込んだときに内側から来た
頼まれない仕事をしてくれたのは、社内の部下ではなく、持ち寄りの会の参加者だった
「知財設計」の語は4月で論考から消えた。名乗ったのは、現場に張りついて道具を作る知財
物語は逆転で閉じた。現実は「不安が消えたわけではない」で閉じている
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09
新しく分かったこと
作ること
探すこと
どこを狙うかの問い
人の着想と実測
決める場
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10
新しく分かったこと
4月
変換の速度を10倍に
作る速さが課題だと思っていた
8月
「お題」が足りない
発明者の数ではなく、どこを狙うかの問い
8月末
届け方
作ったものを、相手が使える形と入口で届ける
9月
速さが信頼を壊す
AI 調査の判定が1日に6回ひっくり返った
10月
決める場
知財の中の判断は日単位、事業側は月単位
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11
新しく分かったこと
設計責任と並んで、検証責任が知財の専門性の中心に入ってきた
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12
体系化した
原点と思想
三位一体・謀と不敗・問い・当事者性 — 変わらないもの
戦略の原理
三つの重心・補完資産・境界・分業と結合・所有と実行
組織と OS
ジレンマ・製造から設計へ・翻訳者・キャリア
実行戦術
お題・探す・作る・原理から読む・作り手(IPFDE)
測る・確かめる
成果の測り方・証拠の規律・速さが壊すもの
場と共通言語
持ち寄る場・教材と地図・届け方と物語
横軸は事業の局面(創造期・成長期・成熟期・転換期)。各ノードに定義・問い・使いどころ / mokumoku.ipfde.com/docs/ipstrat-map-2026.html
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13
事例で確かめる
何を揃えるか
誰が価値を取るか(専有可能性×補完資産)
どこまでを内に持つか(スミス→小川)
どこを開き、どこを閉じるか
誰が引き受けて束ねるか(ベイン型)
いつ・どの順で(創造→成長→優位性確立→効率性追求)
事例:知財ビジネスモデル図鑑・もくもく会と note・OI-WG の合弁と技術導入の歴史 / mokumoku.ipfde.com/docs/ipstrat-cases-2026.html
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14
仮説を確かめる
仮説:事業・研究開発・知財の噛み合いと、所有と実行の束ねは、新規事業の創造期に宿命的に重なる。成熟で分かれ、転換期に外から束ね直される
67事例での判定
部分的に支持
創造期は束ねが「一人の覚悟」で済む局面。ただし噛み合いの割合は創造期43%・成長期39%・成熟期50%で、創造期だけが高いわけではない
成熟期まで噛み合いを保つ事例が多い(クアルコム、コカ・コーラ、ダイソン、ダイセル…)
転換期の束ね直しは、束ねる主体が分かれる(資本市場・国家・外の衝撃・内側)。ベイン型はその一形態
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15
発見
長期の投資の下振れを引き受ける当事者が、次の三つを満たすとき三位一体は噛み合う
製造・販路・標準・データ・資本(補完資産)
権利・技術・資本・科学の四つの時計を一枚で読む
価値の重心と同じ層・同じ国で束ねる
対比:硤合反応は31年の研究があっても事業化を引き受ける当事者が現れず、不斉合成は工場と顧客を持つ事業会社が十年単位の投資を引き受けた。NAND はカーブアウトで外から束ね直された
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16
次の仮説
スミス「分業」
市場が見えない探索期は、分業より一体で回すほうが合理的
March・入山「知の探索」
探索はコスト高で失敗が多い。効率で測ると深化に負ける(コンピテンシー・トラップ)
バンディット・Manso
探索の損失はゼロにできない。失敗を罰しない当事者が引き受ける
Thomke「実験」
効率化できるのは試行の単価と学習の速さ。AI が下げたのはここ
創造期に三位一体が噛み合うのは、探索が一体でしか回らないから。その非効率を引き受ける当事者がいて、初めて噛み合う
入山章栄『世界標準の経営理論』第12・13章/March (1991)/Levitt & March (1988)/Lai & Robbins (1985)/Manso (2011)/Thomke『Experimentation Matters』
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17
体系化への提案
丸島儀一の三位一体、ポランニーと SECI、クリステンセン
問い:AI 時代に、知財の人は何を担うのか
Chesbrough、組織の境界、Teece、吸収能力、小川紘一
問い:守りながら開くには、境界をどう設計するか
「三位一体」は note 14本、OI-WG は1頁。「オープン&クローズ」は OI-WG 9頁、note は0本
引く文献はほとんど重ならない。体系化で、この二つを結びたい
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18
体系化への提案
| 楠浦案の部 | 半年の材料で足したいもの |
|---|---|
| 第1部 危機とジレンマ | ジレンマは部門の外へ移った。律速は事業側の「決める場」 |
| 第2部 設計へ | 三つの重心を合わせる+新章「所有と実行 ― 誰が引き受けて束ねるか」 |
| 第3部 どうやるか | 新章「測る・確かめる」:精度の測り方、判断の台帳、検証責任 |
| 第3部(続き) | 新章「境界」:OI 研究の系譜。知財部門は翻訳者 |
| 第4部 人と組織 | 設計する知財から「作る知財(IPFDE)」へ。持ち寄る場 |
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19
体系化への提案
| 第9回(2/28) | 7か月半後 |
|---|---|
| 「書くべきは本ではなく AI」 | 道具は作った(調査・起草・出願・届け方)。ただし設計そのものではなく、材料と検証を速くする AI |
| 「3人の議論を AI が再現しても驚かない」 | 要約はできた。だが AI は新しい言葉を消す(第5回の要約で「知財のジレンマ」が落ちた) |
| 「(仮)知財設計の会」を開く | 4/6 にクローズドで開いた。「設計」は伝わりにくく「戦略のままが分かりやすい」の声も。名前は未決 |
| 「この1年は今までの10倍変わる」 | 出願の手続き・調査の取り方・成果の測り方の三つが入れ替わった |
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20
この先
半年の記録から延ばした見通し。確かめた事実ではない
1
製造部 → 設計部 → 判断を動かす部へ。成果は動いた判断で測る
2
検証が専門性になる。「どこまで確かか」を示せる人が強い
3
内製と外部の配分が組み直される。すぐ出せる・自分で直せる
4
知財の仕事は境界で起きる。連携・データ・標準化
5
共通言語は、本より先に場と教材で育つ
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21
これからの進め方
| プラン | 何を作るか | 強み | 弱み |
|---|---|---|---|
| A 本にする | note の連載から電子書籍・本へ | 形が残り、遠くまで届く | 書く間に中身が古くなる |
| B 生きた体系 | サイトに常設し、配信のたびに更新する | 速さに追いつく。教材や図鑑とつながる | 完成しない。編集の仕組みが要る |
| C 場を回す | 知財設計の会で、実務の事例を持ち寄る | 実務で確かめられる。言葉が育つ | 運営の手間。社内の事例は出しにくい |
| D 道具にする | 問いのリストやスキルとして配る | 使われ、効き目を測れる | 思想が道具に埋もれる |
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22
これからの進め方
知財設計の会、YouTube 配信、もくもく会の掲示板から、論点と事例が入る
生きた体系。章ごとに版と更新日を付け、誰の論点かを明記する
各章に「使える問い」と道具(チェックリスト・スキル)を付ける
区切りのよいところで版を固め、電子書籍や本にする。書籍化はゴールの一つで、終わりではない
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23
これからの進め方
| いつ | やること・成果物 | 「できた」の判定 |
|---|---|---|
| 11月 第11回 | ゴールと骨格を3人で合意。置き場所・名前・役割の決め方を決める | 骨格 v0.1 が公開 URL にあり、3人が1ノードずつ持ち主になっている |
| 12月 第12回 | 配信の要約から章の差分を反映。序章〜第2部に「使える問い」v0.1。67事例に「探索/深化」を付け直す。会の再開案 | 差分の履歴が2件残っている |
| 1月 第13回 | 知財設計の会(第2回)。「測る・確かめる」「所有と実行」v0.1、用語集(設計・戦略・OS) | 持ち寄られた事例か反論が1件以上、体系に戻っている |
羽矢崎が引き受けること 体系マップと事例分析の更新(探索と深化の観点を含む)/配信ごとの差分案づくり/「所有と実行」の章の下書き/会の段取り
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24
今夜の論点
1
書籍化の位置づけ
ゴールか、節目ごとに固める版か
2
母艦の置き場所
もくもくサイトの一角/専用の頁/note
3
名前
「知財設計」のままか。「戦略の方が伝わる」の声も
4
役割の決め方
ノードの持ち主制/リレー/分担
5
次の日程
第11回と、知財設計の会の第2回
つなげたいもの:楠浦さんの「調べる」から「決める」へ / 野崎さんの黒本(特許インテリジェンス)
知財戦略体系化 第10回 | 2026-10-18
25
このスライドは YouTube「#知財戦略体系化」第10回(2026-10-18)で使ったものです。詳しくは 全体像 / 体系マップ / 事例分析 / もくもく会のライブラリ / もくもく会に参加する