知財戦略体系化 ― 事例分析

事例を五つのレンズで読み、分析を実行につなげる条件を探す。

 羽矢崎 聡。知財ビジネスモデル図鑑、もくもく会と note の事例、JIPA OI-WG の合弁・技術導入・制度史の研究から 67 件を選び、同じ枠で分類・分析しました。レンズは、丸島儀一の三位一体、Teece の Profiting from Innovation、スミスから続く分業と結合、小川紘一のオープン&クローズ、そして「所有と実行」(ベイン型の当事者性)。時間軸に BCG ダイヤモンド(本によっては「BCG ダイアモンド」)を置きます。判定は既に書いた頁の記述だけを根拠にし、[本文][推論]を分けています。分析は AI(Claude と Claude Fable)に頼み、人が確かめました。

67事例
5+1レンズ+時間軸
9類型
12戦略の命題

一五つのレンズの見取り図

六つの枠を一枚にすると、問いの順番になる。丸島の三位一体=何を揃えるか(事業・研究開発・知財の向き、主語は経営者)。Teece=誰が価値を取るか(専有可能性×補完資産)。分業と結合=どこまでを自分の内に持つか(企業の境界は繋ぐコスト、可視情報と隠れ情報)。小川のオープン&クローズ=どこを開きどこを閉じるか(境界と結節点)。所有と実行=誰がそれを引き受けて実行するか(権限・資本・時間・報酬の束ね、担保の置き場所)。BCG ダイヤモンド=いつ・どの順で(局面と四つの移り目)。67件を通して見ると、噛み合いを決めるのは局面そのものより、長期の投資を引き受ける当事者が換金装置(補完資産)を持つ位置にいるか、四つの時計(権利・技術・資本・科学)を一枚で読める権限を持つか、束ねの単位が価値の重心と同じ層にあるか、だった。

丸島儀一の三位一体

事業・研究開発・知財は同じ勝ち方を向いているか。主語は経営者か。自分の規模でこの権利はどれだけ効くか(相対的知財力)。

何を揃えるか

Teece — Profiting from Innovation

専有可能性は強いか弱いか。換金装置(製造・販路・規格・資本)は誰が持つか。支配的デザインの前か後か。

誰が価値を取るか

分業と結合(スミス→チャンドラー→Baldwin & Clark→小川の伸びゆく手)

どの工程を自分が担い、どこを他者に任せるか。繋ぐコストはどこで下がり、結節点はどこに生まれるか。

どこまでを自分の内に持つか

小川紘一のオープン&クローズ

市場を広げるために何を開き、利益を取るために何を閉じるか。閉じる一点は開く時点で決めたか。

どこを開き、どこを閉じるか

所有と実行(ベイン型・当事者性)

長期の技術投資の下振れを誰が引き受けるか。権限・資本・時間・報酬は同じ当事者に束ねられているか。担保は特許か、契約か、資本か、国家か。

誰がそれを引き受けて実行するか

BCG ダイヤモンド(相葉宏二『プロが教える 問題解決と戦略スキル』第III章)

事業はどの局面にあり、次の移り目(事業化・事業戦略・オペレーション・イノベーション)で何が要るか。

いつ・どの順で

レンズどうしの関係

二仮説を確かめる ― 三位一体は創造期に噛み合うか

はじめの仮説

三位一体(事業・研究開発・知財)の噛み合いと、所有と実行(権限・資本・時間・報酬)の束ねが実現するのは、新規事業の創出期(創造期)と宿命的に重なる。成長・成熟で分業が進むと分かれ(知財部門のジレンマ)、転換期に外から束ね直される(合弁・カーブアウト・ベイン型)。——丸島の三位一体を、所有と実行の側から読み直す羽矢﨑の仮説。

三位一体の噛み合い所有と実行の束ね
創造期
345813
60件
2411916
60件
成長期
2112510
48件
199911
48件
成熟期
112313
29件
114410
29件
転換期
6219
27件
111312
27件
整合/束ねた部分的ずれ/分かれた不明

数えたのは、各事例の「局面ごとの記録」です(1事例に複数の局面がある)。局面の割り当ての多くは推論です。

判定

部分的に支持。67件・164の局面記録のうち、噛み合い(整合)と束ね(束ねた)が同時に記録された局面は創造期16件が最多だが、判定できた記録に占める割合は創造期43%(16/37)・成長期39%(13/33)・成熟期50%(8/16)で勾配はない。『成長・成熟で分かれる』は支持されない(19件が成長期・成熟期まで整合×束ねたを保った)。『転換期に外から束ね直す』は向きとしては支持される(束ねた11件・分かれた3件)が、束ねたのは資本市場・国家・外生ショック・内側と多様で、ベイン型(資本市場による束ね直し)はその一形態にとどまる。合わない事例の型は七つに分けられ、それぞれが仮説の磨き直しの材料になった。

合う事例

ベル花王 バブダイソンハーバー・ボッシュ法ダイセルのキラルカラムPeak Design × Amazon Basics東京通信工業のトランジスタ特許ライセンスFingerWorksiモード課金代行iPhoneクアルコムリーバイス/ジェイコブ・デイビスNAND型フラッシュメモリエジソン日本の機関車国産化

合わない事例の型

偏りについて (1) 有名な成功事例に偏る:図鑑 a・b 群は『名だたる発明』を選んだ事例集で、淘汰・失敗は hypernet・overture・printing・soai・reverberatory_furnace・yawata_works・browserwar(ネットスケープ側)・wright 程度。成功の裏にある同型の失敗は数えられていない。(2) 局面の割り当ての多くが推論:164の局面記録のうち106件(65%)が推論の注記を持ち、頁が BCG の局面の言葉を使っている事例はほぼ無い。転換期は27記録中19件が噛み合い『不明』。(3) 所有と実行の材料が薄い:資本の出し手が『不明/頁にない』で始まる事例が21件(bell・gillette・wright・polaroid・coke・ajinomoto など)。bundled の判定は推論が多く、図鑑カードは資本と経営の体制をほとんど書いていない。(4) d 群(OI-WG)は国家・制度が主語で個社の利潤が書かれておらず、c 群の note の一部は外部資料の要約で知財の記述が無い(container・browserwar・subseacable・tsmc)。(5) 一頁の記述に依存する判定がある(Teece 頁のケースマッパー、OI-WG の二頁で時価総額の数字が食い違う NAND)。(6) フィクション1件(zoltraak)、制度以前の事例(fire・printing・reverberatory_furnace)、系譜の表だけの事例(fasensor)を含む。

磨き直した仮説

三位一体が噛み合うのは、長期の技術投資の下振れを引き受ける当事者が、(a) 換金装置(補完資産:製造・販路・標準・データ・資本)を持つか作れる位置にいて、(b) 権利・技術・資本・科学の四つの時計を一枚で読み、『説得』でなく『決定』できる権限を持ち、(c) その束ねの単位が価値の重心と同じ層・同じ国にあるときである。創造期が噛み合いやすく見えるのは、束ねが『一人の覚悟』の大きさで済む局面だからで、制度が信用できる環境なら束ね(資本)の代わりに契約でも噛み合う(担保の置き場所の反比例則)。成長・成熟で壊れるのは束ねではなく、束ねの単位と価値の重心の対応で、重心が層・国・時間をまたいで移るとき、知財部門のジレンマは『継ぎ目』として現れる。転換期の束ね直しは、誰が束ねるか(内側・資本市場・国家・コミュニティ・外生ショック)で、能力と発明者がどう扱われるかが分かれる。ベイン型(資本市場が支配権・資本・EXIT・報酬を一人の当事者に束ね直す)は、親会社の資本構造が長期投資を担保できないときに効く一形態であり、唯一の形ではない。丸島の『知財戦略の主語は経営者』を所有と実行の側から読むなら、経営者とは『下振れを引き受けて決定できる当事者』のことである——これは丸島がそう述べたのではなく、羽矢﨑の読み直しとして置く。

次に確かめる仮説 ― 探索と深化

創造期が一体的になるのは、探索の性質そのものではないか。スミスの「分業は市場の広さに制限される」によれば、市場が見えない探索期は分業より一体が合理的になる。March の「探索と深化」(入山章栄『世界標準の経営理論』第12・13章が「知の探索・知の深化」として整理)によれば、探索はコストがかかり失敗も多く、効率で測ると深化に負けて締め出される(コンピテンシー・トラップ)。多腕バンディットの定理(Lai & Robbins)は探索の損失がゼロにならないことを、Manso は短期の失敗を罰しない報酬が探索を引き出すことを示す。だから探索の損失を引き受ける当事者が要る。Thomke の言うとおり、効率化できるのは試行の単価と学習の速さで、AI が下げたのはそこである。仮説

次の仮説

創造期に三位一体が噛み合うのは、探索が一体でしか回らないから。その非効率を引き受ける当事者がいて、初めて噛み合う。

確かめ方:67事例の局面ごとの記録に「探索/深化」を付け直し、噛み合いが「創造期」より「探索中」に集まるか、成熟期でも噛み合いを保った事例(クアルコム、コカ・コーラ、ダイソン、ダイセルなど)が探索を続けていたか(両利き)を見る。羽矢崎の OI-WG 論考「荒れた地形の歩き方」は、標準化・標準必須特許・長期ライセンスを深掘りの側に置いており、知財活動の中にも探索型と深化型がある。

三類型

T1創業者一体型11件

主語=発明者本人または創業者が経営を兼ねる × 束ねた × 閉じる(または閉じて一部を開く)× 補完資産を自分で作る。権限・資本・時間・報酬が一人(一家族)に束ねられる。

帰結
革新者が刈り取る(dyson・bell・takamine・mabuchi・peakdesign)。ただし資本の側の決定権が別にあれば転換期に発明者が外れ(edison)、権利の強さが係争に資源を向ければエコシステムごと止まる(wright)。
局面
創造期・成長期
教訓
束ねが小さくて済む分、時間を支える資本と、自分の資産が次の方式への転換を縛っていないかの点検が要る。

ダイソンベル高峰譲吉エジソンマブチモーターPeak Design × Amazon Basicsゼロボードダイキン工業ユニ・チャーム三菱の官業払下げと人材投資ライト兄弟

副類型として:東京通信工業のトランジスタ特許ライセンスハイパーネット豊田佐吉・喜一郎

T2事業会社内製型10件

主語=事業会社 × 垂直統合 × 閉じるだけ(コアは秘匿・特許・ブランド)× 束ねた × 専有可能性 強〜混合。研究・権利・製造・販売を一社の内側に持つ。

帰結
革新者が刈り取る。専用資産は市場と共に沈み(polaroid)、補完資産の地理的範囲がそのまま刈り取りの範囲になる(imode)。束ねが続く限り成熟期まで噛み合いが続く。
局面
創造期・成長期・成熟期
教訓
権利は原理でなく商品が成立する最後の一点に宿る(bab)。基本特許はノウハウと組んで初めて事業になる(haber)。国境の外の資産は別に設計する。

花王 バブハーバー・ボッシュ法コカ・コーラポラロイド v. コダックキラルスイッチ不斉触媒の製法・触媒の特許ダイセルのキラルカラムiモード課金代行iPhone理研コンツェルン

副類型として:クアルコムFingerWorks東京電気・芝浦製作所 × GE

T3契約結合型9件

発明者・大学と、補完資産を持つ事業会社を、ライセンス・独占実施契約・共同出願・連合の契約で結ぶ × 分かれた/部分的 × 担保=契約・特許。制度が信用できることが前提。

帰結
混在。分け前は契約の設計と交渉力で決まり、権利の時計が切れると補完資産の側へ移る(tesla)。権利は動くが能力は動かない(toyoda)。独占ライセンス+株式は発明側の報酬と実施の独占を両立させた(pagerank)。
局面
創造期・成長期
教訓
資本を動かさずに束ねる手段。契約に権利の帰属・改良・株式・実施権の範囲を書き、暗黙知を運ぶ人(岩間レポート)を並行して置く。

味の素PageRankテスラ/ウェスチングハウスLD転炉の導入三菱電機 × Westinghouse東京通信工業のトランジスタ特許ライセンスリーバイス/ジェイコブ・デイビス豊田佐吉・喜一郎日本郵船 ボンベイ航路

副類型として:不斉触媒の製法・触媒の特許ダイセルのキラルカラムモールスPCR

T4資本結合型8件

合弁・資本参加・買収・カーブアウトで所有と実行を束ねる × 協業・合弁 × 担保=資本 × 部分的〜束ねた。契約で履行を担保できないとき、または親会社の資本構造が長期投資を担保できないときの器。

帰結
混在。資本の出し手が履行を担保し、日本側は事業基盤を得た(電機四社)。技術の節目と資本の節目は別の時計で動く(jv_nec_we)。カーブアウトは赤字でも投資を続けられる当事者を作った(nand)が、持分構造がリターンを決める(pokemongo)。
局面
創造期・転換期
教訓
資本参加を求める理由(履行の担保か、市場アクセス・人材・規制か)を明示する。束ね直し後の知財戦略は別に書く(NAND の頁には無い)。

日本電気 × Western Electric東京電気・芝浦製作所 × GE富士電機製造 × Siemens送電インフラの技術導入と工業所有権制度FeliCa と FeliCa NetworksポケモンGOFingerWorksNAND型フラッシュメモリ

副類型として:活版印刷おサイフケータイ 遠隔ロックTSMC と台湾のファウンドリ専業モデル三菱の官業払下げと人材投資エジソン

T5結節点オープン&クローズ型6件

分業の結節点(標準の仕様を実施する権利・名前・課金・供給力・製造工程)の一点で閉じ、他を開く × 水平分業/ライセンス分業 × O&C × 伸びゆく手。

帰結
結節点を握る側が刈り取る(qualcomm・tsmc・mabuchi)。名前だけを握ると秩序は保てるが収益は補完資産の層へ移る(linux・tex)。原理そのものを閉じようとすると司法でレジームが崩れる(morse)。
局面
成長期・成熟期
教訓
開くほど自前の結節点が要る。閉じる一点を開く時点で決め、FRAND・競争法との均衡を織り込む。

クアルコムジレットLinux/GPLTeXTSMC と台湾のファウンドリ専業モデルモールス

副類型として:マブチモーターiモード課金代行iPhoneポケモンGOゼロボード

T6公共財・コミュニティ型5件

開くだけ/開かれてしまった × 分かれた × 価値は使う側・社会・補完資産の保有者へ。設計された開放(規格・コミュニティ)と、規制・フォーク・満了による開放を含む。

帰結
誰も(公共財化)または補完資産の保有者(OS に同梱する側、サービス事業者)。独占の余地は普及が生んだ後工程に移る(ssh の鍵管理)。
局面
成長期・転換期
教訓
標準化は個別の技術的卓越に勝ることがある(profibus)。設計段階で FTO を済ませた規格は普及後の権利主張を受けない(png)。普及の後にどんな問題が生まれ、誰が先に書くかを問う。

PNGPROFIBUSAT&T と UNIXコンテナ革命SSH

副類型として:Linux/GPLTeXGIF と LZW 特許硤合反応鉄道の誕生

T7国家束ね型6件

主語=国家(政府・藩・官営) × 担保=国家 × 国内に開き国外に閉じる/発注者の一本化/認可権。資本と権限は国家に束ねられる。

帰結
産業は立つ(機関車の国産化、LD転炉の最速普及)が、個社の利潤は散りうる(鉄鋼型)。翻訳者(野呂景義)と前提(原料・身体知)が無ければ束ねても噛み合わない。
局面
創造期・転換期
教訓
国家が束ねるのは資本の壁を一度越えればよい財に向く。陳腐化の速い財では更新し続けられるかが問われる。誰を翻訳者に置くかを設計する。

内国勧業博覧会と専売特許条例日本の機関車国産化官営八幡製鉄所幕末諸藩の反射炉鉄鋼型の構造大英帝国の海底ケーブル網

副類型として:送電インフラの技術導入と工業所有権制度LD転炉の導入TSMC と台湾のファウンドリ専業モデルAT&T と UNIXライト兄弟

T8分離・漂流型4件

権利の所有者・形式の持ち主・換金装置の持ち主・投資の引受者が別人格で、束ねる器(契約・資本)を誰も設計しなかった × 分かれた × 専有可能性 弱〜混合 × 補完資産の保有者または混在。

帰結
補完資産の保有者(出資者の工房、OS を持つ側、端末・プラットフォーマー)が刈り取る。普及後の権利行使は代替規格を生む(giflzw→png)。
局面
創造期・成熟期
教訓
器を設計する(契約か資本か)。権利の所在と価値の所在が別の国・別の層にないかを毎局面で確かめる。

活版印刷ブラウザ戦争GIF と LZW 特許おサイフケータイ 遠隔ロック

副類型として:モールステスラ/ウェスチングハウスNAND型フラッシュメモリOverture/GoTo.comAT&T と UNIX

T9発見先行・当事者不在型5件

発見・発明の時計が、市場と当事者の時計より先に来る × 事業化の下振れを引き受ける当事者が発見の近くにいない × 権利の時計(審査請求・on-sale・存続期間)が先に切れる。研究の束ねはあっても事業の束ねが無い。

帰結
価値は科学の評価・研究資金・人材という別の通貨で回収されるか(soai)、事業が消えて権利だけが残る(hypernet→GMO)か、本命の権利が取れない(overture)。繰り返し買われる物があれば市場が先に価値を見つける(pcr)。
局面
創造期
教訓
発見の直後に『誰が何を繰り返し買うか』を一行で言い、補完資産を持つ相手と組み、出願を科学の時計に合わせて積む。囲わないなら囲わないと決めて開く。

硤合反応PCR鉄道の誕生ハイパーネットOverture/GoTo.com

副類型として:ライト兄弟ゼロボードFA の位置センサの系譜

四戦略の命題

  1. P1知財戦略は、長期の技術投資の下振れを引き受ける当事者がいて初めて実行される。分析と権利だけでは事業は動かない。

    レンズ:ownership・丸島:三位一体 局面:創造期・転換期

    裏付け:ダイソンハーバー・ボッシュ法花王 バブダイセルのキラルカラムNAND型フラッシュメモリPeak Design × Amazon Basics不斉触媒の製法・触媒の特許

    反する事例:硤合反応ハイパーネット幕末諸藩の反射炉活版印刷

  2. P2束ね(資本による所有)の要否は、知財制度への信頼度と反比例する。契約で履行を担保できるなら資本で束ねなくてよい。

    レンズ:ownership・分業と結合 局面:創造期・成長期

    裏付け:味の素PageRank東京通信工業のトランジスタ特許ライセンスLD転炉の導入送電インフラの技術導入と工業所有権制度三菱電機 × Westinghouse

    反する事例:活版印刷豊田佐吉・喜一郎日本電気 × Western Electric

  3. P3専有可能性が弱いとき、価値は補完資産の保有者へ流れる。開くなら、閉じる一点を開く時点で決める。

    レンズ:Teece:誰が価値を取るか・小川:オープン&クローズ 局面:創造期・成長期・成熟期

    裏付け:ブラウザ戦争Linux/GPLTeXマブチモーターiモード課金代行コンテナ革命iPhone

    反する事例:ポラロイド v. コダックコカ・コーラキラルスイッチ

  4. P4権利の時計・技術の時計・資本の時計・科学の時計は別に進む。噛み合いが壊れるのは局面ではなく時計のずれである。

    レンズ:ownership・bcg・Teece:誰が価値を取るか 局面:創造期・成熟期

    裏付け:Overture/GoTo.comハイパーネット硤合反応テスラ/ウェスチングハウスGIF と LZW 特許PCR

    反する事例:ベル高峰譲吉リーバイス/ジェイコブ・デイビス

  5. P5価値の重心は層・国・時間をまたいで移る。ポートフォリオと束ねの単位は、重心の移動先へ打ち直す。

    レンズ:Teece:誰が価値を取るか・ownership・分業と結合 局面:成長期・成熟期・転換期

    裏付け:NAND型フラッシュメモリテスラ/ウェスチングハウスSSHおサイフケータイ 遠隔ロックiモード課金代行モールス

    反する事例:クアルコムコカ・コーラ

  6. P6特許は動くが、能力は自動的には動かない。権利の移転は、それを回す組織能力・暗黙知・翻訳者が伴って初めて相手の事業になる(発明者ごと取り込んだ FingerWorks のように、人ごと移せば能力も移る)。

    レンズ:分業と結合・Teece:誰が価値を取るか・丸島:三位一体 局面:創造期・成長期

    裏付け:豊田佐吉・喜一郎ハーバー・ボッシュ法幕末諸藩の反射炉官営八幡製鉄所東京通信工業のトランジスタ特許ライセンス三菱の官業払下げと人材投資

    反する事例:FingerWorksダイセルのキラルカラム

  7. P7創造期は束ねが『小さくて済む』局面であって、束ねが自動的に成立する局面ではない。

    レンズ:bcg・ownership 局面:創造期

    裏付け:ダイソン花王 バブPeak Design × Amazon Basics東京通信工業のトランジスタ特許ライセンスベルハイパーネット

    反する事例:活版印刷味の素テスラ/ウェスチングハウスNAND型フラッシュメモリ硤合反応日本の機関車国産化

  8. P8成長・成熟で壊れるのは束ねではなく、束ねの単位と価値の重心の対応である。一社が換金装置を持ち続ける限り噛み合いも続く。知財部門のジレンマはその継ぎ目に現れる。

    レンズ:bcg・丸島:三位一体・ownership 局面:成長期・成熟期

    裏付け:クアルコムコカ・コーラ花王 バブダイソンダイセルのキラルカラムキラルスイッチポラロイド v. コダックマブチモーター

    反する事例:NAND型フラッシュメモリおサイフケータイ 遠隔ロック東京電気・芝浦製作所 × GEiモード課金代行

  9. P9転換期の束ね直しは、誰が束ねるかで帰結が分かれる。資本市場は意思決定者ごと入れ替え、国家は発注者を一本化し、内側からの組み直しは能力と人を温存する。

    レンズ:ownership・bcg 局面:転換期

    裏付け:エジソンNAND型フラッシュメモリ日本の機関車国産化豊田佐吉・喜一郎SSH東京電気・芝浦製作所 × GE

    反する事例:日本電気 × Western Electric理研コンツェルンハーバー・ボッシュ法ポケモンGO

  10. P10国家が束ねると産業は立つが、個社の利潤と翻訳者の問題は残る。資本の壁を一度越えればよい財に向き、陳腐化の速い財には向かない。

    レンズ:ownership・分業と結合・小川:オープン&クローズ 局面:創造期・転換期

    裏付け:日本の機関車国産化内国勧業博覧会と専売特許条例LD転炉の導入TSMC と台湾のファウンドリ専業モデル大英帝国の海底ケーブル網

    反する事例:官営八幡製鉄所幕末諸藩の反射炉鉄鋼型の構造AT&T と UNIX

  11. P11開放は設計できる。中身を全部渡しても、名前・品質基準・結節点の一点で秩序は保てる。意図しない開放と普及後の権利行使は代替規格を生む。

    レンズ:小川:オープン&クローズ・分業と結合 局面:成長期・成熟期

    裏付け:Linux/GPLTeXPNGPROFIBUSマブチモータークアルコム

    反する事例:GIF と LZW 特許SSHAT&T と UNIXFeliCa と FeliCa Networks

  12. P12相対的知財力——事業が小さいほど特許は効く——が効くのは、補完資産を自分で作るか契約で確保するまでの期間である。エコシステムを止める行使は自分の発展も止める。

    レンズ:丸島:三位一体・Teece:誰が価値を取るか 局面:創造期・成長期

    裏付け:ダイソン高峰譲吉Peak Design × Amazon Basicsベル

    反する事例:ライト兄弟ポラロイド v. コダックテスラ/ウェスチングハウス

体系マップに足すノード(提案)

所有と実行 — 誰が引き受けて束ねるか(L2) 知財戦略は分析しただけでは効かず、長期の技術投資の下振れを引き受ける当事者がいて初めて実行される。権限(支配権)・資本(リスクマネー)・時間(EXIT の規律)・報酬(価値増分)が一人の当事者に束ねられているかを見る。束ねの要否は知財制度への信頼度と反比例し(契約で担保できるなら資本は要らない)、束ねる主体(創業者・事業会社・契約・資本市場・国家・コミュニティ)によって帰結が分かれる。丸島の『知財戦略の主語は経営者』を所有と実行の側から読み直す羽矢﨑の仮説として置く。

問い:この構想で、長期の投資の下振れを引き受け、『説得』でなく『決定』できる当事者は誰か。その当事者は換金装置を持ち、四つの時計を一枚で読めるか。

使いどころ:新事業・カーブアウト・合弁・資本参加・ライセンスの器を選ぶとき。知財部門が分析を実行につなげられない原因を切り分けるとき(当事者・権限・資本・時間・報酬のどれが欠けているか)。転換期に誰が束ね直すか(内側・資本市場・国家)を設計するとき。ベイン型の三モデル(知財運用ファンド・知財を梃子にした再生・テック PE の知財オペレーティング・パートナー)を検討するとき。

五実行の戦術 ― 局面と移り目ごとに確かめる問い

創造期

確かめる問い

  • この原理で、誰が何を繰り返し買うか(物・製法・用途・道具のどこでお金になるか)を一行で言えるか
  • 長期の技術投資の下振れを誰が引き受けるか——自分(創業者)・事業会社・資本・国家のどれか。その主体は『説得』でなく『決定』できるか
  • 換金装置(製造・販路・標準・データ)はどこにあるか。作るか、組むか、買うか
  • 権利の時計と事業の時計は合っているか(販売開始前の出願、審査請求の見極め、優先日)
  • 閉じる一点と開く範囲を、開く時点で決めたか

典型的な失敗

  • 権利の強さで安心し、実行の資源が開発より係争に向かう(wright)
  • 早すぎて事業が権利に追いつかず、時間を支える資本が無い(hypernet)
  • 本命の出願期限を資本市場の時計(IPO 準備)に押されて逃す(overture)
  • 出資契約の設計なしに資本を受け、訴訟で資本の側が設備ごと回収する(printing)
  • 研究の束ね(研究費と研究室)を事業の束ねと取り違える(soai)

①→② 事業化

確かめる問い

  • 束ねる器を選んだか——創業者経営(T1)・事業会社の内製(T2)・契約(T3)・資本(T4)。制度を信用できるなら契約で足りるか
  • 補完資産を持つ相手と組む契約に、権利の帰属・改良発明・実施権の範囲・株式(報酬)を書いたか
  • 発明・実装・権利・換金の四つの重心はいま誰にあり、どれをいつまでに自分の側へ寄せるか
  • 権利と一緒に能力を運ぶ人(翻訳者)を置いたか
  • 国境の外の補完資産と権利化を別に設計したか

典型的な失敗

  • 権利だけを売り、図面を直し続ける組織の能力が移らない(toyoda)
  • 書かれていない前提(原料・身体知)が一緒に渡らない(reverberatory_furnace・yawata_works)
  • 補完資産が国内に留まり、同じ構造を後から外の側が総取りする(imode)
  • 取得(払下げ・買収)と吸収能力がすぐには噛み合わない(mitsubishi_nagasaki)

成長期

確かめる問い

  • 分業が進む中で、結節点(標準の実施権・課金・名前・供給力)はどこにあり、誰が握るか
  • 価値の重心が上の層(システム・OS・端末)や別の国へ移り始めていないか
  • 知財担当と事業・技術のリーダーの間で、全体像の共有は続いているか(中間処理に埋もれていないか)
  • 国際標準に収容されているか。閉じて完成させる設計にしたとき、後から取り込まれる道を残したか
  • 資本参加を求められている理由は履行の担保か、別の理由か

典型的な失敗

  • 分業の継ぎ目で知財が中間処理に追われ、全体像を事業と共有しきれない(imode)
  • ライセンスを厳しくしてフォークを招き、名前も取り戻せない(ssh)
  • 補完資産(OS)を持つ相手が無償化で取り込みにくる(browserwar)
  • 国際標準化が否決され、型が外の端末に取り込まれるまで待つことになる(felica)
  • 技術的自立の節目と資本・経営権の節目を取り違える(jv_nec_we)

②→③ 事業戦略

確かめる問い

  • 基本特許の満了を時計として、満了後に残るもの(商標・ブランド・ノウハウ・データ)へ橋を架けたか
  • 優位性の源は専有(特許・秘匿)か、補完資産か、標準か。厚いポートフォリオの維持コストと市場の寿命は釣り合うか
  • 束ねの単位(事業部・合弁・親会社)は価値の重心と同じ層にあるか

典型的な失敗

  • 満了後に模倣が氾濫してからブランドへ移る(levis は事後に載せ替えた)
  • 専用資産が市場と共に沈む(polaroid)
  • 権利の交渉力が効く期間(数年)を見誤り、その間に取りにいくものを決めない(tesla)

成熟期(③優位性確立期・④効率性追求期)

確かめる問い

  • 束ねは続いているが、価値の重心は同じ層・同じ国にあるか
  • 投資を続けられる資本構造か(親会社の連結決算・他事業の損失・グループ内の優先順位に縛られていないか)
  • 既存の資産と評価関数が、次の方式への転換を縛っていないか
  • 普及後の権利行使が、使う側に代替規格を設計させないか
  • ロイヤリティと導入技術の消化に研究資源が固定されていないか

典型的な失敗

  • 親会社の資本構造が露呈し、事業体ごと手放す(nand の東芝時代)
  • 直流資産と電球特許に投じた資本が更新を妨げる評価関数になる(edison)
  • 普及しきってからの使用料要求が代替規格を生む(giflzw)
  • 段階的大容量化のたび提携を更新し、自主技術が全社方針になるまで時間がかかる(jv_toshiba_ge)

③→④ オペレーション

確かめる問い

  • 知財の仕事の何割が、決まったことを回す仕事か
  • 維持・放棄・年金の判断は、事業判断(どの権利がどの判断を支えたか)と結びついているか
  • 成果を件数でなく『動かした判断』で測っているか

典型的な失敗

  • 年金・期限・棚卸しが目的から切り離れて消耗になる(図鑑の冒頭「考え方」)
  • 成熟期に最適化された OS が新事業に合わなくなる(知財部門のジレンマ)

転換期(④→①の再創造)

確かめる問い

  • 束ね直しは誰が担うか——内側(自主技術・新事業)・資本市場(カーブアウト・買収)・国家(国有化・認可)・コミュニティ(代替規格)
  • 発明者・技術者を外す形の束ね直しになっていないか。報酬(SO・相当対価)は誰に届くか
  • 下振れを引き受ける資本と、EXIT の時計(上場・売却)はあるか
  • 今の事業に残った能力(自働化・鍵管理・データ)のうち、次の事業へ移せるものは何か
  • 普及の副作用のどこに、次の独占の余地があるか

典型的な失敗

  • 資本市場が意思決定者ごと入れ替え、発明者が自分の名を冠した会社から外れる(edison)
  • 外生ショックによる所有の移転を、技術の成熟・自立と読み違える(jv_nec_we)
  • 外からほどかれる(riken_konzern の軍部の干渉)
  • 自ら事業を切り分けてデータの側を残す選択肢を見落とす(pokemongo)
  • 束ね直し後の知財戦略を書かないまま進む(nand の頁には無い)

④→① イノベーション(再創造)

確かめる問い

  • 再創造は不連続である(BCG 第III章)。既存事業の OS で測っていないか
  • 長期の赤字投資を引き受ける当事者を、親会社の外に置く必要があるか(カーブアウト)、内側で作れるか(事業部・分社)
  • 権利・技術・資本・科学の四つの時計を一枚に並べ、どれが先に切れるか書いたか

典型的な失敗

  • ③④に縛られて①へ移れない(シリーズ第4〜6回の定式化)
  • 再創造を担うのが権利者の外(コミュニティ・競合国)になり、自分は置き換えられる側に回る(giflzw→png、subseacable→無線)

分析を実行につなげる条件(チェックリスト)

六事例カード

Peak Design × Amazon Basics(Everyday Sling の形と名前)2010年(創業)〜2020年10月(Amazon Basics 版の発売)〜2021年3月(動画と改名)〜2025年11月(Schedule A 訴訟)T1 創業者一体型
丸島:三位一体部分的 事業:新製品はほぼ Kickstarter から出し(2025年の Roller Pro は2万3,461人から約1,294万ドル)、生涯保証、製品同士のつながり、外部資本を持たないこと、銀座の直営店、支援者との関係で、製品の外に競争優位を積んだ[本文]。/研究開発:アンカーリンク、Capture クリップ、モバイルマウントなど、同社の製品同士でつながる仕組み[本文]。/知財:約40件の米国特許(うち意匠20件超、概数)。初代の形は意匠特許 US D808,162 で登録済み。社名と「pd」ロゴの商標も登録済み。「EVERYDAY SLING」の米国商標出願はコピー発売の3か月後(2021-01-26)だった[本文]。2025年には意匠特許2件(カメラ用アンカー、クイックリリースのストラップ)と商標2件で模倣品業者をまとめて提訴[本文]。
Teece専有可能性 混合・価値を取った側 混在 補完資産:棚(EC の販路、検索順位・おすすめ枠・価格)と需要のデータは棚の持ち主の側、先行販売の需要データ・支援者との関係・保証・直営店は Peak Design の側[本文](持ち手:販路とカテゴリ横断のデータは Amazon、需要の先取りと顧客関係は Peak Design[本文])
分業と結合水平分業 Peak Design は設計・先行販売・保証・直営店を担い、販売の一部をプラットフォームに任せた。棚の持ち主は出品者の場を運営しつつ自分も売る「二重の役割」を持つ[本文]
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:意図して開いた記述はない。Kickstarter で製品を先に公開し支援者を集めた[本文]/閉じた:形(意匠特許)、製品同士をつなぐ部品(特許・意匠)、社名とロゴ(商標)[本文]
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:創業者の会社自身:創業から外部投資家なし(Dering 氏)、資金は先行販売から[本文]。/実行の権限:創業者の Peter Dering 氏[本文]
担保の置き場所特許・データ

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 2010年に創業し、2011年に初製品のカメラクリップを Kickstarter で発表、日本でもその名前(CAPTURE)を2011年に商標出願した(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。
  • 成長期 噛み合い=部分的・束ね=束ねた 2016年にスリングの意匠を出願し2018年に登録したが、名前の米国商標出願は2020年10月の Amazon Basics 版の発売後で、2021年3月の動画で名前は変わり、形の近い品は残った[本文]。束ねは保たれたまま、権利の時期だけがずれた例で、仮説(成長で分かれる)とは合わない[推論]。
  • 成熟期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 2025年に同社最大のキャンペーンを成功させ、意匠特許2件と商標2件をまとめて模倣品業者を提訴した(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。

結果 Amazon 版の名前は変わったが、形の近い品は残った[本文]。Peak Design は2025年に同社最大のキャンペーンを成功させ、意匠と商標で模倣品業者を提訴した[本文]。頁は、Amazon の製品が権利を侵害したかどうかを評価していない[本文]。

戦略への示唆 丸島(相対的知財力)と Teece(補完資産)から:権利と関係は二者択一ではない。名前の商標は最も安く守れて最も後回しにされる。規制が止めるのはデータの流用までで、似た商品を止めるのは自分で取った権利だけ[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 発売前に、名前の商標と、特徴のある部分の部分意匠を出願したか
  • 自社の売れ筋から形と名前を引き算したとき、顧客の手元に何が残るか

出典:売れ筋は、棚の持ち主に見られている — Peak Design×Amazon Basics から考える、プラットフォームに奪われない商品の設計

エジソン(電灯システム)1880〜1892(パール街1882、GE 成立1892)T1 創業者一体型
丸島:三位一体整合 事業:ガス灯に代わる電気照明を家庭に普及させる。発電〜配電〜計測まで垂直統合し「照明システム」を販売(パール街発電所, 1882)[本文]/研究開発:高抵抗炭素フィラメント→細い銅線→並列配電→計測を、系として設計した[本文]/知財:守=白熱電球(US 223,898)ほか並列配線・三線式配電などの特許群/広=ねじ込み口金・電圧の標準化/隠=フィラメント炭化のノウハウ[本文]
Teece専有可能性 強・価値を取った側 混在 補完資産:発電所・配電網・メーター——システムごと自社で構築[本文:Teece 頁](持ち手:エジソン陣営[本文])
分業と結合垂直統合 発電・配電・計測まで自社で担った[本文]
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:ねじ込み口金・電圧の標準化[本文]/閉じた:電球・配電の特許群と、フィラメント炭化のノウハウ[本文]
所有と実行部分的 投資の引き受け手:創造期の資本の出し手は頁にない(不明)。1888〜96年には資本家モルガンが係争と重複投資で資本が溶けることを恐れ、統合(1892)とプール(1896)を見ていた[本文]/実行の権限:エジソン(発明者が系を垂直統合)→1892年の GE 成立で経営から排除[本文]
担保の置き場所特許+秘匿+標準・ルール

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=部分的 高抵抗フィラメントの特許(1880)を核に、発電から計測までを系として設計し、パール街発電所(1882)で照明システムを販売した[本文](束ねの判定は[推論]:資本の出し手は頁にない)
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=部分的 電流戦争で、三つは直流の系に揃ったまま、安全性を論点に戦い、「変圧できる物理が標準を決める」因果を読み違えた[本文](局面の当てはめと噛み合いの判定は[推論])
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=束ねた 1892年、トムソン・ヒューストンとの合併で GE が成立し、エジソンは経営から排除された=資本市場が外から意思決定者ごと入れ替えた[本文](束ねの判定は[推論])

結果 電灯システムを系として普及させた[本文]。電流戦争で直流は交流に標準を譲り、1892年にエジソンは自分の名を冠した会社の経営から外れた[本文]

戦略への示唆 守・広・隠は組み合わせるもの[本文](小川 O&C)。ただし共特化資産を自前で持つほど、その資産が次の方式への転換を縛る[本文:図鑑「考え方」・テスラは取締役会にいない §3](Teece と所有と実行のレンズ)

実行のときに確かめる問い

  • 手段ごとに守・広・隠のどれを当てたかを一枚にしたか(口金=広、フィラメント炭化=隠…)
  • 自社が持つ資産のせいで更新できなくなっている前提はないか(何を損失と数えているか)

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/ティースの専有可能性レジーム — 発明で勝った者が、事業で負けるのはなぜか/ボトルネックは、動く — 三相誘導モーターとリバース・サライエント/テスラは、取締役会にいない — Tesla in the Deeptech Startup(書籍骨子)/同じ発明を、誰がどこまで「分かって」いたか——電流戦争で読む「理解の深さ」の五段

ゼロボード(代表が発明者の GHG 排出量算定の特許)2026年(記事の時点。特許第7446012号・特開2026-11781)T1 創業者一体型
丸島:三位一体整合 事業:サプライチェーン排出量(Scope 3)の把握という課題を、ソフトウェア提供の枠を超え、技術のアーキテクチャで解く。ESG 経営全般を支える「ガバナンス・プラットフォーム」へ[本文]。/研究開発:按分ロジックと一次データ比率の可視化、証憑の AI-OCR 読み取りとハッシュ値での連結、炭素価格シミュレーション(IEA の STEPS・NZE シナリオ)、車検証からの車両マスター登録、運用ルール(規定情報)の共有と登録制限[本文]。/知財:特許第7446012号(排出量を所定の基準で按分した商品別排出量から排出原単位を計算する、請求項1の引用あり)と、特開2026-11781(規定情報をサプライチェーンで共有し、一方の事業主体が他方の変更を制限する)[本文]。
Teece専有可能性 不明・価値を取った側 不明 補完資産:サプライヤーからの一次データ、証憑(請求書・領収書)、監査人と投資家の信頼、サプライチェーン全体で共有される運用ルール[本文/推論](持ち手:不明(サプライヤー・親会社や元請け・監査人に分かれる)[推論])
分業と結合不明 親会社や元請けが規定を登録し、サプライヤーの変更や誤入力を制限する=複数の事業主体のデータ統合の結節点をシステムが担う[本文]
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:運用ルール(何月の請求書をどの期間の排出量とするか等)をサプライチェーン全体で共有する[本文]/閉じた:按分・ハッシュ連結・規定の登録制限などの仕組みを特許に[本文]
所有と実行部分的 投資の引き受け手:不明(資本の出し手は記事に無い)/実行の権限:代表の渡慶次道隆氏(創業以来一貫して発明者として特許に名を連ね、技術の核心部を設計し続けている)[本文]
担保の置き場所特許・データ

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=部分的 代表が発明者として、GHG 排出量の按分・証憑の連結から、ESG 経営全般の運用ルールの共有と登録制限へ出願を広げている(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。

結果 記事の時点では結果は出ていない。記事は、知財に裏打ちされたデータ基盤が ESG 経営の堀になると見通す[本文]。

戦略への示唆 丸島(知財戦略の主語は経営者)から:代表自らが発明者として特許の細部に関わると、現場の実務と経営の意思決定が直結する、と記事は読む[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • サプライチェーンの中で、どの事業主体がルールを決め、だれの入力を制限できるかを、請求項がどこまで掴んでいるか
  • 一次データ比率のように、データの確かさを示す指標を、権利と製品の両方に置けているか

出典:代表自らが「発明者」。Zeroboard特許から読み解く、脱炭素経営を劇的に変える5つの技術的パラダイム

ダイキン工業(冷媒フロンの国産化と、冷凍機との統合)1924〜1935年〜(現在の構造まで)T1 創業者一体型
丸島:三位一体部分的 事業:軍工廠出身者が放熱という一点から熱の産業へ進み、「冷媒を自前で作る会社が冷凍機も作る」という統合を選んだ[本文]。/研究開発:冷媒フロンの輸入依存を背景に、1935年に国産化した[本文]。/知財:頁に特許の記述はない。事例ライブラリは形式知が特許に載らない B 型に分類する[本文]。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 補完資産の保有者 補完資産:冷媒の自前生産と、軍の調達[本文](持ち手:ダイキン自身)
分業と結合垂直統合 冷媒(化学)と冷凍機(機械)の両方を自社で担った[本文]。
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:不明/閉じた:冷媒を自前で作った[本文]。
所有と実行不明 投資の引き受け手:不明(資本構成は頁にない)/実行の権限:山田晁[本文]
担保の置き場所国家

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=不明・束ね=不明 1924年、軍工廠出身者が放熱という一点から熱の産業へ進んだ[本文]。
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=不明 冷媒フロンの輸入依存を背景に1935年に国産化し、冷媒を作る会社が冷凍機も作る統合を選んだ[本文]。
  • 成熟期 噛み合い=不明・束ね=不明 空調と化学(フッ素樹脂)が同じ社内にある現在の構造は、この越境の直系である[本文]。

結果 空調と化学(フッ素樹脂)が同じ社内にある構造が今に続く[本文]。

戦略への示唆 分業と結合・Teece のレンズから:輸入が途絶える補完財(冷媒)を自前で持つ垂直統合が、製品と会社の形を決めた[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 自社製品が依存する補完財の供給が止まったとき、それを自前で作る選択を検討したか
  • 参入の許可や最初の需要を誰(調達者・規制者)が握っているか

出典:新産業が生まれる条件 ― 明治〜昭和の事例ライブラリ

ダイソン(サイクロン掃除機)1980年代〜2000(特許1983、DC01 1993、英高裁2000)T1 創業者一体型
丸島:三位一体整合 事業:他社に作らせる(ライセンス)を狙ったが拒まれ、自社ブランドで製造販売へ転換[本文]/研究開発:紙パックの目詰まりを遠心分離(サイクロン)で解く[本文]/知財:US 4,373,228(1983)ほかサイクロン分離の特許群。後に模倣した Hoover を提訴し、2000年に英高裁で侵害認定(賠償£400万+訴訟費用)[本文]
Teece専有可能性 強・価値を取った側 革新者 補完資産:製造・販売(既存メーカーが持ちライセンスを拒否→自ら構築)[本文](持ち手:当初は既存メーカー、のちダイソン自身[本文])
分業と結合垂直統合 当初はライセンスで他社に作らせる計画、拒まれて自社で製造・販売[本文]
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:ライセンスを申し出たが拒まれた[本文]/閉じた:サイクロンの特許群と自社の製造・ブランド[本文]
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:ダイソン自身(自ら資金を作った)[本文]/実行の権限:ダイソン[本文]
担保の置き場所特許+資本

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 既存メーカーにライセンスを拒まれ、自ら資金を作って製造・販売へ転じ、1993年に DC01 を出した[本文](判定は[推論])
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=束ねた ライセンスを拒んだ Hoover が模倣し、特許で反撃して2000年に英高裁で侵害が認定された[本文](局面の当てはめは[推論])

結果 自社ブランドで製造販売し、模倣した Hoover に特許で勝った(賠償£400万+訴訟費用)[本文]

戦略への示唆 ライセンスが唯一の出口ではない。拒まれたら補完資産を自分で作る道があり、特許はその選択肢を開くオプション(Teece と所有と実行のレンズ)[本文]

実行のときに確かめる問い

  • ライセンス先の既存事業(消耗品など)と、この技術は利害が衝突しないか
  • ライセンスを拒まれたとき、自社で作る資金と製造の当てがあるか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む

ベル(電話)1876〜(特許期間中に市場と規格を掌握)T1 創業者一体型
丸島:三位一体整合 事業:特許を核に電話会社(のちの AT&T)を構築し、満了までに市場と規格を掌握[本文]/研究開発:振動板+電磁石のトランスミッタ/レシーバ。音声と「相似形」の電気的うねりで伝える[本文]/知財:US 174,465(1876)。第5クレームが音声電送を包括。公報の名義は「電信の改良」。同日にグレイが caveat を提出し優先権の論争が残った[本文]
Teece専有可能性 強・価値を取った側 革新者 補完資産:電話網——自ら垂直統合で構築(後の AT&T)[本文:Teece 頁](持ち手:ベル陣営(後の AT&T)[本文])
分業と結合垂直統合 発明・権利・電話網の構築と運営を自陣で担った[本文]
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:頁に記載なし/閉じた:音声電送を包括する基本特許(第5クレーム)と自社の電話網[本文]
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:不明(電話会社を構築したとあるが、資本の出し手は頁にない)/実行の権限:ベル陣営の電話会社(のちの AT&T)[本文]
担保の置き場所特許

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 1876年2月14日に出願し、同日午後のグレイの caveat との数時間差と第5クレームの広さで音声電送を押さえた[本文](束ねの判定は[推論])
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 特許を核に電話会社を構築し、約600件の訴訟を防衛しながら満了までに市場と規格を掌握した[本文](束ねの判定は[推論])

結果 ベル陣営が刈り取った最良例[本文:Teece 頁]。グレイとの優先権論争は残った[本文]

戦略への示唆 出願日と請求項設計が価値を決め、権利防衛と共特化資産の自社構築を同時に行えば発明者が刈り取れる(丸島の三位一体と Teece のレンズ)[本文]

実行のときに確かめる問い

  • 競合より先に出願できる状態か(同日の僅差で何を失うか)
  • 請求項は事業の核(ここでは音声電送そのもの)を包括しているか。題名や名義に引きずられていないか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/ティースの専有可能性レジーム — 発明で勝った者が、事業で負けるのはなぜか/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む

マブチモーター(小型モーターの規格統一)1946年〜(2026年8月 馬渕隆一名誉会長の訃報)T1 創業者一体型
丸島:三位一体整合 事業:客先ごとの特注をやめ、自社が決めた標準機種のカタログから選ばせる。少品種・大量生産で価格を数分の一に下げ、顧客の側がマブチのモーターに合わせて製品を設計し始めた[本文]。/研究開発:兄・馬渕健一の高性能モーター発明(1946年頃)から出発した[本文]。/知財:多数の特許を持つが、事業の堀になったのは権利ではなく標準機種のカタログという制度外の資産[本文]。
Teece専有可能性 不明・価値を取った側 革新者 補完資産:標準機種カタログ×大量生産×グローバル供給[本文]。(持ち手:マブチ(量産・供給)。顧客の設計資産は顧客の側にあるが、マブチの規格の上に積み上がる[本文+推論]。)
分業と結合水平分業 マブチ=標準機種の設計・大量生産・グローバル供給。顧客(玩具・家電・自動車電装)=モーターに合わせて製品を設計[本文]。
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:標準機種カタログ(誰でも買える規格品)と、数分の一に下げた価格[本文]。/閉じた:量産・供給力・価格体系=製品マージン。ロイヤルティは経由しない[本文]。
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:兄弟の会社(馬渕健一・隆一)[本文]。資本の記述は頁に無い。/実行の権限:弟・馬渕隆一(経営判断)[本文]
担保の置き場所標準・ルール

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=不明・束ね=束ねた 兄・馬渕健一の高性能モーター発明(1946年頃)から兄弟の会社が出発し、注文の数だけ図面が増える特注の世界にいた[本文]。
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 弟・隆一の経営判断で特注をやめ標準機種カタログへ転換し、少品種・大量生産で顧客の設計の主導権を逆転させた[本文。局面の割り当ては推論]。
  • 成熟期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 玩具から家電・自動車電装へ用途を広げ、小型 DC モーターで世界シェアの過半を握った時期もある[本文。局面の割り当ては推論]。

結果 マブチが製品マージンで刈り取り、小型 DC モーターで世界シェアの過半を握った時期もある[本文]。

戦略への示唆 分業と結合(スミス)+小川 O&C:顧客の設計を自社の規格に預からせれば、標準そのものが排他力を持つ。制度外資産(規格・供給力・価格体系)は特許と同じ目的-手段ツリーの上の正当な手段である[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 顧客は自社の部品に合わせて設計し始めているか(乗り換えコストは何で生まれているか)
  • 標準を書いた後、対価を何(製品マージン/ロイヤルティ)で取るか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/チップは内製できても、特許は内製できない — クアルコム×アップル特許ライセンス更新(2026)から図鑑へ/ドヤと、切迫。— AIを使う側に現れる力学を、自分ごととして解剖する/差を運ぶ経済、差を作る経済 ― 裁定と分業から見る取引の基礎理論

ユニ・チャーム(建材業から生理用品へ、流通チャネルを参入資産に)1961〜1963年〜T1 創業者一体型
丸島:三位一体部分的 事業:建材業から1963年に生理用品で参入し、先行者アンネ社に後発として挑んだ[本文]。/研究開発:技術的連続性はほぼなく、素材加工と流通の抽象度で繋いだ。製品仕様は使用者から学ぶ以外に決めようがなかった[本文]。/知財:契約形式が最も薄い事例[本文]。特許の記述はない。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 補完資産の保有者 補完資産:流通チャネル[本文](持ち手:ユニ・チャーム(大成化工)[推論])
分業と結合不明 素材加工と流通を自社で担った[本文]。
オープン&クローズどちらでもない 開いた:不明/閉じた:不明
所有と実行不明 投資の引き受け手:不明/実行の権限:高原慶一朗[本文]
担保の置き場所なし

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=部分的・束ね=不明 建材業から1963年に生理用品で参入し、技術の連続性がないまま素材加工と流通で繋ぎ、仕様を使用者から学び続けた[本文]。会社にとっては事業の転換でもあった[推論]。

結果 流通チャネルが実質的な参入資産になった[本文]。結果の数値は頁にない。

戦略への示唆 Teece のレンズから:技術の連続性がない参入では、価値は流通という補完資産と使用者からの学習に宿り、特許は主役にならない[本文から推論]。

実行のときに確かめる問い

  • 自分が使用者でない製品の仕様を、誰からどう学ぶ仕組みがあるか
  • この参入の資産は技術か、流通か

出典:新産業が生まれる条件 ― 明治〜昭和の事例ライブラリ

ライト兄弟(飛行機)1903〜1917(出願1903、登録1906、勝訴1913〜14、特許プール1917)T1 創業者一体型
丸島:三位一体ずれ 事業:基本特許で航空という新産業を独占し、ライセンス料を課す特許独占モデル[本文]/研究開発:三軸制御(特にロール制御)による有人動力飛行。翼のたわみ(wing-warping)[本文]/知財:US 821,393(1906)。出願は1903年3月=初飛行の9か月前。広い基本特許で横方向制御全般を押さえ、エルロン方式のカーティスにも権利行使し、1913〜14年に侵害認定で勝訴[本文]
Teece専有可能性 強・価値を取った側 混在 補完資産:頁に記載なし(持ち手:不明)
分業と結合ライセンス分業 発明と権利は兄弟、他社にはライセンス料を課した[本文]
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:なし。最終的に1917年の政府主導の特許プール(MAA)で決着[本文]/閉じた:広い基本特許で横方向制御という機能全般[本文]
所有と実行不明 投資の引き受け手:不明(資本の出し手は頁にない)/実行の権限:ライト兄弟(権利行使)[本文/推論]
担保の置き場所特許→国家(政府主導の特許プール)

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=不明 初飛行の9か月前の1903年3月に出願し、横方向制御を広く押さえる基本特許(1906)を得た[本文](噛み合いの判定は[推論])
  • 成長期 噛み合い=ずれ・束ね=不明 エルロン方式のカーティスにも権利を行使して1913〜14年に勝訴したが、係争の長期化で米国の航空開発は停滞し欧州に後れた[本文](局面の当てはめは[推論])
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=部分的 1917年、政府主導の特許プール(MAA)で決着した=国家が外から権利を束ねた[本文/推論](資本と経営の束ねは頁にない)

結果 1913〜14年に侵害認定で勝訴したが、係争が米国の航空開発を停滞させ、第一次大戦期に欧州へ後れたとされ、1917年の政府主導の特許プールで決着した[本文]

戦略への示唆 権利の強さと使い方は別。エコシステムを止める行使は自社の発展も止める(孫子・小川 O&C のレンズ)[本文]

実行のときに確かめる問い

  • この行使で、相手だけでなく市場(産業)全体の成長を止めていないか
  • 係争をライセンスやプールで終わらせる出口を、行使の前に描いているか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む

三菱(岩崎)の官業払下げと人材投資(長崎造船所から常陸丸へ)1870年代〜1898年T1 創業者一体型
丸島:三位一体部分的 事業:官業払下げで長崎造船所ほかの事業そのものを取得した(Acquiring)[本文]。頁が引く米倉は「払下げ自体は単なる事業譲渡にすぎず、むしろ払下げ後に近代工場を経営し、経常的な利益をあげることが真の課題であった」と書く[本文]。/研究開発:払下げ後も経営は苦戦続きで諸外国の造船技術に容易に追いつけず、打開は帝大卒技術者の積極採用で、1896年に国内最大級6000トン級の常陸丸建造に着手した[本文]。人材面では慶應義塾・東京大からの学士採用、弥之助の米国留学、1876年時点の外国人雇用388名、デンマーク人クレプスの管事への抜擢[本文]。/知財:頁に記述なし(不明)。
Teece専有可能性 不明・価値を取った側 補完資産の保有者 補完資産:人材(帝大卒技術者・外国人雇用)[本文]と、学習コストを負う最初の顧客(日本郵船の国産船発注)[本文:事例ライブラリ](持ち手:三菱(人材)、日本郵船(需要))
分業と結合水平分業 三菱が造船所を所有して経営し、海運会社(日本郵船)が国産船を発注して造船業の学習曲線のコストを引き受けた[本文]。
オープン&クローズどちらでもない 開いた:不明/閉じた:不明
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:三菱(岩崎)——払下げで事業を取得し、人材に投資した[本文]/実行の権限:岩崎(同族)。人事権を持つ者が探索も担った[本文:E4・G5]
担保の置き場所資本

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=ずれ・束ね=束ねた 官業払下げで長崎造船所を取得したが、経営は苦戦続きで諸外国の造船技術に容易に追いつけなかった[本文]。
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 帝大卒技術者の積極採用で打開し、1896年に6000トン級の常陸丸建造に着手、日本郵船が国産船を発注して学習コストを負った[本文]。

結果 三菱は払下げ資産を人材投資で事業にし、その系譜は三菱重工へ直結した[本文]。

戦略への示唆 所有と実行・Teece のレンズから:アウトサイド・インの分岐点は入口(アクセス)ではなく出口(吸収能力)にある。取得した後に人を動かせる権限が同じ主体にあるかが効く[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 買収・取得のあとで技術を消化できる人材を、誰が採り、誰が配置するかが決まっているか
  • 最初の顧客(自家需要・関係先)が学習コストを負担する約束はあるか

出典:財閥史をオープンイノベーションで読み解く — 問いの構造化ツリー/新産業が生まれる条件 ― 明治〜昭和の事例ライブラリ

高峰譲吉(タカジアスターゼ・アドレナリン)1890〜1922(事業は2005年の第一三共へ接続)T1 創業者一体型
丸島:三位一体整合 事業:麹の酵素を消化薬に、副腎の成分をホルモン医薬にして事業化。米国は Parke-Davis が販売、日本は三共商店(1899)が総代理店。発明→独占製造→販路(ライセンス・代理店)→製薬企業へ[本文]。醸造(タカ・プロセス)での挫折から、麹の機能を消化という医学の課題へ向け直した[本文:note]/研究開発:麹菌 Aspergillus oryzae 由来の消化酵素(タカジアスターゼ)と、副腎からのアドレナリンの世界初の結晶化[本文]/知財:製法特許 US 525,823(1894)、物のクレームの US 730,176(1903)、アドレナリンのプロセス特許5件と商標『Adrenalin』、日本の特許第4785号(1901)。日米同時の権利化[本文]
Teece専有可能性 強・価値を取った側 混在 補完資産:販売網(米国 Parke-Davis、日本 三共商店)[本文](持ち手:Parke-Davis と三共商店(のち高峰が三共の初代社長)[本文])
分業と結合ライセンス分業 発明と権利化は高峰、販売は Parke-Davis(米)と三共商店(日)が担った[本文]
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:販路をライセンス・代理店として提携先に任せた[本文]/閉じた:製法特許・物の特許・商標(期限のある層と、期限のない層の二層)[本文]
所有と実行部分的 投資の引き受け手:醸造(タカ・プロセス)では数十万ドルの試験費を投じた模範工場が焼失し、ウイスキー・トラストの解散で挫折した[本文:note]。アドレナリンはタカジアスターゼの成功で得た富を原資に、自らニューヨークに研究室を構えた[本文:note]。三共商店は塩原又策らが設立[本文:年表]/実行の権限:販売は Parke-Davis と三共商店。1913年から高峰が三共の初代社長[本文]
担保の置き場所特許+契約

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=部分的 醸造のタカ・プロセスが挫折した後、麹の機能を消化薬へ向け直してタカジアスターゼの製法特許(1894)を取り、販路は Parke-Davis と三共商店(1899)に任せた[本文](判定は[推論])
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=束ねた アドレナリンを結晶化して物の特許・プロセス特許・商標を取り、1913年に三共株式会社の初代社長となって発明者が経営も担った[本文](局面の当てはめと判定は[推論])
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=不明 2005年、三共は第一製薬と経営統合し第一三共となり、現在の事業に接続した[本文]。統合の中身は頁にない

結果 発明者と提携先で価値を分け[本文:Teece 頁]、発明→特許→起業→事業が130年後の第一三共まで一本の線でつながった[本文]

戦略への示唆 技術×製法特許+商標×代理店を同時に設計し、特許が切れた後に残るもの(商標)まで含める(丸島の三位一体と Teece の契約型)[本文]

実行のときに確かめる問い

  • この権利は「誰が売るのか」まで決めてから取っているか
  • 特許が切れた後に何が残るか(商標・名前・販路)を設計したか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/ティースの専有可能性レジーム — 発明で勝った者が、事業で負けるのはなぜか/日米両方の特許庁に「置かれている」発明者 — 高峰譲吉と、顕彰される権利の話/逆境を「発明」に変えた男:アドレナリンの父・高峰譲吉に学ぶ、常識を覆す5つの思考法

iPhone(引き算による電話の再発明)2007年〜(意匠特許2010・陪審評決2012・CAFC 2015・最高裁2016・和解2018。モデム内製2025)T2 事業会社内製型
丸島:三位一体整合 事業:物理キーボードとスタイラスを取り去り、前面をほぼガラスの画面だけにして電話を作り直す。端末の粗利+ストア手数料30%[本文]。自らの稼ぎ頭(iPod)を食い破る覚悟で舵を切った[本文:155回]。/研究開発:通信技術の蓄積も通信特許もほぼゼロの状態から参入[本文:155回]。足りないマルチタッチは FingerWorks ごと買い、強みの OS・UI をさらに強めた[本文]。/知財:実用特許と意匠特許(D618,677)の多層、App Store、ブランドとトレードドレス[本文]。SEP の地雷原は FRAND ディフェンスを盾に歩き、自社の UI・デザインで反撃した[本文:155回]。「引き算」そのものを押さえた権利は無い[本文]。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 革新者 補完資産:サプライチェーン+App Store という二重の共特化資産[本文:ケースマッパー]。(持ち手:Apple[本文])
分業と結合水平分業 Apple=製品の設計・OS・UI・ストア。チップもキャリアも業界最強とは組まず、チャレンジャー(インフィニオン、AT&T、ソフトバンク)と組んだ[本文:155回]。製造は委託先(Foxconn ほか)[本文:クアルコム頁]。マルチタッチは買収で内部化[本文]。2019年に Intel のモデム事業を買い、2025年から自社設計モデムを載せ始めた[本文:クアルコム頁]。
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:App Store を通じて外部にアプリの場を開く(図鑑は「囲い込み型の生態系」と書く)[本文]。/閉じた:実用特許・意匠特許の多層、ブランドとトレードドレス、ストア手数料30%[本文]。
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:Apple。自社の稼ぎ頭(iPod)を食い破るカニバリゼーションの覚悟を引き受けた[本文:155回]。/実行の権限:ジョブズ時代の Apple[本文:155回]
担保の置き場所特許+契約

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=束ねた ROKR で検証して見切り、チャレンジャーと組み、FingerWorks を買い、2007年に引き算の電話を出した[本文]。
  • 成長期 噛み合い=部分的・束ね=束ねた App Store の手数料30%で生態系を回す一方、2012年の陪審評決のあと2015年にトレードドレスの希釈認定は破棄され、意匠特許だけが残った[本文。噛み合いの判定は推論]。
  • 成熟期 噛み合い=部分的・束ね=束ねた 2019年に Intel のモデム事業を買い2025年から自社設計モデムを載せたが、2026年もクアルコムとの特許ライセンスは更新した=チップは内製できても特許は内製できない[本文:クアルコム頁。局面の割り当ては推論]。

結果 Apple がハード利益とストア手数料の二段で刈り取った[本文]。引き算そのものは権利にならず、トレードドレスは機能性で外れ、意匠特許だけが残った[本文]。

戦略への示唆 Teece+丸島:引き算型の発明は請求項に載りにくい。最初から意匠・商標・体験・生態系(共特化資産)の側に重心を置いて設計する。所有と実行:自社の稼ぎ頭を食い破る覚悟を、実行の権限を持つ経営者が引き受けた[本文+推論]。

実行のときに確かめる問い

  • 発明の核が「無いこと」や体験の全体にあるとき、どの制度(意匠・商標・著作権・契約)なら写せるか
  • その外観は「機能的」と判断されないか(制度ごとに機能の扱いが違う)

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/ティースの専有可能性レジーム — 発明で勝った者が、事業で負けるのはなぜか/発明の選び方 — イシュー度×解の質に、特許にしかない軸を足す/ゴールドラッシュ時代に何が儲かるか — 知財実務オンライン第155回を、3年後に読み直す/チップは内製できても、特許は内製できない — クアルコム×アップル特許ライセンス更新(2026)から図鑑へ

iモード課金代行(NTTドコモ)1998年〜(出願1998-08・開始1999-02・登録2000-12)T2 事業会社内製型
丸島:三位一体整合 事業:ドコモが通信料と一緒に情報料を代行徴収し、手数料9〜10%を CP に課す。公式サイト(iメニュー)に集約し、CP が安心して参入できる市場を立ち上げる[本文]。/研究開発:中継装置(ゲートウェイ)が配信元サーバのアドレスと課金管理情報を照合し、課金先をユーザーと CP に振り分ける仕組み[本文]。/知財:課金方法を基本特許化(特開2000-078129→特許第3142821号)。出願はサービス開始の半年前、分割(特許第3274455号)で射程を拡張[本文]。2003年時点で基本特許は出願済みで、当時の上司がグローバル権利化を丹念に練り上げていた[本文:note]。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 混在 補完資産:国内の端末・課金・キャリア網と、公式サイト(iメニュー)[本文]。(持ち手:NTTドコモ(国内のみ。海外にはゼロ)[本文])
分業と結合垂直統合 ドコモ=網・端末・課金代行・公式サイトの集約。CP=コンテンツの制作と提供[本文]。
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:CP に公式サイトの場と回収(課金代行)を安い手数料(9〜10%)で開く。ユーザーの閲覧は無課金[本文]。/閉じた:課金方法の基本特許と、公式サイト(iメニュー)への集約による囲い込み[本文]。
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:NTTドコモ(事業会社)[本文]。投資額・資本構成は頁に記載なし。/実行の権限:NTTドコモ(事業)と、その知財部門(出願・グローバル権利化)[本文]
担保の置き場所特許

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=束ねた サービス開始(1999-02)の半年前に課金方法を出願し、手数料9〜10%の代行徴収で公式サイト経済圏を立ち上げた[本文]。
  • 成長期 噛み合い=部分的・束ね=束ねた 2003年、基本特許は出願済みで、おサイフケータイ・iアプリ・カメラ付きの機能群が生まれる前夜に、特許担当は中間処理に追われ全体像を事業と共有しきれなかったと振り返る[本文:note。噛み合いの判定は推論]。
  • 成熟期 噛み合い=部分的・束ね=束ねた 国内では刈り取ったが補完資産が国境で止まり、のちに Apple/Google が同じ構造で総取りした[本文:ケースマッパー。局面の割り当ては推論]。

結果 国内ではドコモが情報料の代行徴収で公式サイト経済圏を立ち上げ稼いだ。世界では、同じ構造を後に Apple/Google が総取りし、手数料の相場は25〜30%に動いた[本文]。

戦略への示唆 Teece:補完資産の地理的範囲がそのまま刈り取りの範囲になる。丸島:開始直前の出願と囲い込みの合わせ技は三位一体の好例だが、国境の外の資産は別に設計しないと残らない[本文+推論]。

実行のときに確かめる問い

  • この基本特許が効く範囲(国・事業)と、補完資産を持つ範囲は一致しているか
  • 手数料率(課金ポイント)を、参入者が増える水準に置いたか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/ティースの専有可能性レジーム — 発明で勝った者が、事業で負けるのはなぜか/発明の選び方 — イシュー度×解の質に、特許にしかない軸を足す/時価総額クロスオーバー — FeliCa Networksが完成した年、資本市場は水平分業を選んだ/2003年、iモード特許担当だった自分へ ── 23年遅れの返信としての suiP BEST AWARD

キラルスイッチ(片方の型の薬の物質特許:クロピドグレル・エスシタロプラム・レボフロキサシン・エソメプラゾール・ベポタスチン)1989年(US 4,847,265 登録)〜2013年(ベポタスチン知財高裁判決)T2 事業会社内製型
丸島:三位一体整合 事業:すでに売られている左右混合物(ラセミ体)の薬から、効く方の型だけを取り出して新しい薬にする。時期を選べば、特許の切れる大型薬の「ライン延長」になりうる(2002年の総説)[本文]。/研究開発:型ごとの性質(効き目・毒性)の違いを実験で示すことと、取り出す(分割する)こと。クロピドグレルでは分割に5か月の試行錯誤がかかったと判決に書かれている[本文]。/知財:片方の型の化合物・塩・医薬品の物質特許と、その期間延長(レボフロキサシンの延長810日は米国で有効と判断)[本文]。FDA は承認済みラセミ体の片方の型を「新しい化学物質」と扱わず、データ独占が弱かった分、物質特許と延長が価値を守る中心になった[本文]。
Teece専有可能性 強・価値を取った側 革新者 補完資産:承認された医薬品として患者と保険から払われる売上の仕組み[本文]。製法の部分は工場の中でノウハウとして隠す部分が大きい[本文](持ち手:物質特許を持つ製薬会社自身[本文])
分業と結合垂直統合 製薬会社が物質特許と薬の売上を持つ。レボフロキサシンでは、大きな売上を第一製薬の物質特許が守り、原料の製法は高砂香料の特許とノウハウが支えた[本文]
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:ラセミ体の薬とその知見はすでに公開されていた。分離カラムが広まり、片方の型を取り出すこと自体は「容易」とされるようになった(ベポタスチン判決 2013年)[本文]/閉じた:予想を超える性質を示せた片方の型の物質(化合物・塩・医薬品)と期間延長。製法はノウハウとして隠す部分が大きい[本文]
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:片方の型の薬を開発し物質特許を持った製薬会社(BMS・Forest・J&J・AstraZeneca・第一製薬など)[本文/推論]。分割の試行錯誤(クロピドグレルで5か月)や型ごとの性質の試験、後発品との訴訟の下振れを負ったのも、権利を持つ製薬会社だった[本文/推論]。/実行の権限:製薬会社(開発・承認・販売・訴訟の当事者)[本文/推論]
担保の置き場所特許

局面ごと

  • 成熟期 噛み合い=整合・束ね=束ねた すでに売られた左右混合物の大型薬から効く方の型だけを取り出し、特許の切れる大型薬の『ライン延長』として物質特許と延長で売上を守った(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。成熟期でも三位一体と束ねが保たれた例で、仮説(成熟で分かれる)とは合わない[推論]。

結果 片方の型の物質特許を持つ製薬会社が、患者と保険が払う薬の売上を守った[本文]。予想どおりの性質だった例や、書き方の細部で崩れた例もある[本文]。

戦略への示唆 丸島(研究と知財の一体)と Teece(専有可能性)から:取り出すことが容易になるほど、予想を超える性質を明細書と実験で数字で示せるかが権利の残り方を決める[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • もう片方の型(または先行の混合物)との差を、数字で明細書に書けているか
  • 塩の種類・数値限定・従属項など、書き方の細部が権利の範囲を狭めていないか

出典:片方の型は、どの特許で稼がれたか — 不斉合成の技術・事業・特許の50年/鏡に映すと、別の特許になる — キラルスイッチの話/不斉合成のノーベル賞技術で、いちばん稼いだのは「薬の特許」だった

コカ・コーラ(処方の秘匿)1886年〜(瓶の意匠特許1915)T2 事業会社内製型
丸島:三位一体整合 事業:ブランド(商標)+濃縮原液の供給網で勝つ。秘密が競争優位の源泉であり続ける[本文]。/研究開発:処方(配合)を自分で持つ。逆行解析が難しく寿命が長い技術である[本文]。/知財:処方は意図的に特許を取らず営業秘密(「開示して20年」より「隠して無期限」)。外から見える瓶の形は意匠特許 D48,160(1915)で守り、のち立体商標へ[本文]。何を隠し何を登録するかを資産ごとに分けた[本文]。
Teece専有可能性 強・価値を取った側 革新者 補完資産:ボトラー網・ブランド(ケースマッパーは「世界最大級の共特化資産」と書く)と、濃縮原液の供給網[本文]。(持ち手:自社[本文:ケースマッパー「自社(レジームと資産の両方を掌握)」])
分業と結合不明 処方(秘匿)と濃縮原液・ブランドを自社が握り、ボトラー網・供給網を通じて届ける[本文]。ボトラーとの資本・契約関係は頁に記載なし。
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:瓶の外形を、開示を伴う権利(意匠特許)として公報に出し、のち立体商標へ[本文]。他者に使わせる意味で開いたものは頁に記載なし。/閉じた:処方(営業秘密として vault に)[本文]。
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:不明(資本の出し手・投資の記述は頁に無い)/実行の権限:不明(事業会社コカ・コーラと読めるが、誰が判断したかは頁に無い)
担保の置き場所秘匿

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=不明 1886年の創業時から、処方を特許にせず営業秘密として守ると決めた[本文]。
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=不明 1915年、外から見える瓶の形を意匠特許 D48,160 で登録し、のち立体商標へ移した[本文]。局面の割り当ては推論[推論]。
  • 成熟期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 処方は100年以上営業秘密のまま、ブランドとボトラー網を自社が掌握し続けている[本文]。

結果 処方の秘匿とブランド・供給網を自社で握り、100年以上稼いだのはコカ・コーラ[本文]。稼げなかった側は同じ頁の RC Cola(革新を追随者に持ち去られた)[本文]。

戦略への示唆 Teece:法的保護の型の選択(特許でなく秘匿)と共特化資産(ボトラー網・ブランド)の構築を両輪で回すと、期限のない専有ができる。丸島:知財ミックスを資産ごと(中身は秘匿、外形は意匠・商標)に設計する[本文+推論]。

実行のときに確かめる問い

  • この技術は逆行解析で再現できるか。できないなら、出願で開示する理由はあるか
  • 外から見える部分(形・名前)と見えない部分(中身)を分け、それぞれ別の制度に載せたか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/ティースの専有可能性レジーム — 発明で勝った者が、事業で負けるのはなぜか

ダイセルのキラルカラム(片方の型を分けて測る道具の事業)1982年(光学異性体の分離事業を開始)〜2019年(岡本佳男氏の日本国際賞)T2 事業会社内製型
丸島:三位一体整合 事業:片方の型を分けて測るカラムを、研究者と製造現場が繰り返し買う製品として売る[本文]。米国(1990年)・欧州(1994年)・中国(2007年)・インド(2008年)に拠点を広げた[本文]。/研究開発:大阪大学の助手だった岡本佳男氏らが分離の充填剤を見つけ、ダイセルが「その発明を譲り受け」た。1984年から多糖誘導体に移り、今いちばん広く使われる充填剤になった[本文]。/知財:特許(EP 0147804 など、優先日1983年)は米国で2度再発行されている[本文]。製品名(CHIRALCEL OD、CHIRALPAK AD)は審決で当業者がまず検討する道具として名指しされた[本文]。
Teece専有可能性 不明・価値を取った側 革新者 補完資産:充填剤を製品にする製造と、世界の研究・製造現場への販売拠点[本文](持ち手:ダイセル[本文])
分業と結合ライセンス分業 大学が発見、ダイセルが譲り受けて製造・販売[本文]
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:製品として広く売り、研究と製造の現場の当たり前の道具になった[本文]/閉じた:充填剤の特許(米国で2度再発行)[本文]
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:ダイセル:大阪大学の岡本佳男氏らの発明を譲り受け、1982年4月に光学異性体の分離事業を始めた[本文]。/実行の権限:ダイセル[本文]
担保の置き場所特許

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 発明を譲り受けて1982年に分離事業を始め、1983年優先の特許を出し、1984年から多糖誘導体に移った(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 米国・欧州・中国・インドへ拠点を広げ、多糖誘導体は今いちばん広く使われる充填剤になった[本文]。成長期でも束ねが保たれた例で、仮説(成長で分かれる)とは合わない[推論]。
  • 成熟期 噛み合い=不明・束ね=不明 道具が当たり前になり、2013年のベポタスチン判決では当業者がまずダイセルのカラムを検討するとされ、片方の型を得ること自体は容易と判断された(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。

結果 ダイセルが分離事業として育て世界に拠点を広げた[本文]。道具の普及は、片方の型の特許を「効き目で勝負する」方向へ動かした[本文]。

戦略への示唆 Teece と丸島から:道具は繰り返し買われる製品にすれば、それ自体が事業になる。普及した道具は当業者の常識となり、特許の判断の前提そのものを変える[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 自社の道具が普及したとき、自社や顧客の他の特許の進歩性の前提をどう変えるか
  • 道具を、研究と製造の現場が繰り返し買う製品の形にできているか

出典:片方の型は、どの特許で稼がれたか — 不斉合成の技術・事業・特許の50年/不斉合成のノーベル賞技術で、いちばん稼いだのは「薬の特許」だった

ハーバー・ボッシュ法(空気からアンモニア/BASF)1908〜1913〜(のち IG Farben、ベルサイユ条約後の技術移転)T2 事業会社内製型
丸島:三位一体整合 事業:BASF が原料〜合成〜肥料まで垂直統合し、オッパウ(1913)・ロイナの大規模高圧プラントで自製・自販[本文]/研究開発:ハーバーが高圧と触媒(オスミウム)でアンモニア合成の道を示し、ボッシュとミッタシュが鉄+助触媒への置換と、水素に耐える二重構造の反応器で工業化した[本文]/知財:基本特許 DE 235,421 と US 971,501(BASF へ譲渡)は製法クレームで、6本すべてがオスミウムを要件に持つ。触媒の配合・装置・運転条件は別の特許とノウハウの側へ[本文]
Teece専有可能性 強・価値を取った側 革新者 補完資産:鉄+アルミナ+カリの触媒配合、水素に耐える二重壁の反応器と高圧機械、未反応ガスの循環・熱回収・ガス精製の運転条件、安価な水素の大量製造[本文](持ち手:BASF[本文])
分業と結合垂直統合 基本特許はハーバー(&ル・ロシニョール)から BASF へ譲渡、工業化はボッシュとミッタシュ(BASF)、原料〜肥料は BASF の垂直統合[本文]
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:基本特許の明細書による開示(オスミウムの製法と条件)[本文]/閉じた:鉄系触媒の配合、高圧反応器、運転ノウハウ[本文]
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:BASF(譲受人。オッパウ・ロイナの大規模高圧プラント、当時の世界のオスミウム在庫をほぼ買い占めたと伝えられる)[本文]/実行の権限:BASF(ボッシュとミッタシュ)[本文]
担保の置き場所特許+秘匿

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=束ねた ハーバーが1908年に独で出願し、1909年7月に卓上装置を BASF に実演、同年8月に米国へ出願し、米国特許は BASF に譲渡された[本文](判定は[推論])
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=束ねた ミッタシュの触媒探索で鉄系へ、ボッシュの二重壁反応器で高圧の壁を越え、1913年にオッパウが操業した[本文](局面の当てはめは[推論])
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=束ねた ベルサイユ条約後にフランスが賠償の一環で技術移転を迫ったが、触媒配合と運転条件という暗黙知までは容易に移らなかった[本文](外から束ねを解こうとして解けなかったと読んだ[推論])

結果 BASF が自製・自販で事業化した[本文]。第一次大戦では火薬原料にも転用され、ベルサイユ条約後の技術移転でも暗黙知は容易に移らなかった[本文]

戦略への示唆 基本特許はノウハウと組んで初めて事業になる。ただし実施例の材料で書いたクレームは材料を替えた工業プロセスに届かない(Teece・小川 O&C と、原理から読むレンズ)[本文]

実行のときに確かめる問い

  • 請求項は実施例の材料に縛られていないか(材料を替えた工業プロセスは入るか)
  • 製法の側は、開示する特許と秘匿するノウハウのどちらに置くと効くか(製品から工程が見えるか)

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/空気からパンを作る特許 ── ハーバーのアンモニア合成 US 971,501 を原理から読む

ポラロイド v. コダック(インスタント写真)1976〜1991(提訴1976、差止め1986、賠償1991)T2 事業会社内製型
丸島:三位一体整合 事業:インスタント写真の独占市場を守る。特許を競争の武器として行使し、ライセンスでなく排除を選んだ[本文]/研究開発:エドウィン・ランドが確立した一体型インスタントフィルム(撮ってすぐ像が出る)[本文]/知財:一体型インスタントフィルムの基本特許群(US 3,415,644 ほか、カメラ構造 US 3,753,392 等)。ランド個人で生涯535件の厚いポートフォリオ。7件の侵害認定と差止め(1986)[本文]
Teece専有可能性 強・価値を取った側 革新者 補完資産:自社の製造・販売(インスタント写真専用)[本文:Teece 頁](持ち手:ポラロイド[本文:Teece 頁])
分業と結合垂直統合 自社で製造・販売[本文:Teece 頁]
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:なし(ライセンスでなく排除を選んだ)[本文]/閉じた:厚い特許網と差止め[本文]
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:不明(資本の出し手は頁にない)/実行の権限:ポラロイド[推論]
担保の置き場所特許

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=不明 エドウィン・ランドがインスタント写真を確立し、一体型フィルムの基本特許群を重ねた(US 3,415,644, 1968)[本文](噛み合いの判定は[推論])
  • 成熟期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 1976年に参入したコダックを提訴し、1985年の7特許の侵害認定、1986年の差止めで撤退させ、1991年に約9.09億ドルの賠償を得た[本文](局面の当てはめと判定は[推論])
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=不明 市場そのものがデジタルで消えたとき、専用資産は一緒に沈んだ[本文:Teece 頁](この局面の体制は頁にない)

結果 コダックはインスタント写真から撤退し、ポラロイドは約9.09億ドルの賠償を得た[本文]。市場がデジタルで消えると専用資産は一緒に沈んだ[本文:Teece 頁]

戦略への示唆 厚いポートフォリオ+差止めは巨人の参入すら押し戻すが、15年の消耗を伴い、専有の勝利は市場の存続を保証しない(Teece のレンズ)[本文]

実行のときに確かめる問い

  • ライセンスと排除のどちらが事業に効くかを、係争の期間とコストを含めて比べたか
  • 守っている市場そのものが別の方式に置き換わる兆しはないか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/ティースの専有可能性レジーム — 発明で勝った者が、事業で負けるのはなぜか/ティースの専有可能性レジーム — 発明で勝った者が、事業で負けるのはなぜか

不斉触媒の製法・触媒の特許(モンサントの L-DOPA、高砂香料のメントール、S-メトラクロール、シタグリプチン)1968年(モンサントの水素化の優先日)〜2010年代(シタグリプチンの酵素製法)T2 事業会社内製型
丸島:三位一体整合 事業:コストで勝つ:片方の型を安く純度よく作り、ライセンス料よりも自社の製造コストと供給力で回収した[本文]。モンサントは1974年から L-DOPA の工場で、高砂香料は1983年にメントールの不斉合成を世界で初めて工業化(2001年時点で年約1,000トン、世界の需要の約3分の1)[本文]。S-メトラクロールは混合物の特許が切れた後、1996年に年1万トン超の工場を動かした[本文]。/研究開発:不斉水素化(ノールズ氏)、BINAP(野依氏ら)、Josiphos 系の配位子、酵素の製法(Codexis)[本文]。稼いだ例の多くは、研究が工場と顧客を持つ企業の近くにあった[本文]。/知財:製法と触媒の部品の特許を重ねた(US 3,849,480 と US 4,008,281=モンサント、US 4,695,631 と EP 0295890=高砂香料、EP 0564406 と WO 95/21151=S-メトラクロール、US 7,495,123=Merck とソルビアスの共有、US 8,293,507=Codexis)[本文]。工場の中は侵害が見えにくいため、特許・ノウハウ・商標を重ねて守った[本文]。
Teece専有可能性 混合・価値を取った側 補完資産の保有者 補完資産:工場(製造設備)と顧客[本文](持ち手:発明を工場で使う事業会社:モンサント(ノールズ氏が在籍)、高砂香料(野依氏らの BINAP を工業化)[本文])
分業と結合垂直統合 大学の研究者(野依氏、シャープレス氏=スタンフォード大学・MIT が特許化)と、工場を持つ企業(高砂香料、ARCO)。のちに触媒の部品を外販する事業(高砂香料、ソルビアス)が育った[本文]
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:触媒の部品(SEGPHOS などの配位子)を試薬会社を通じて外販。ソルビアスは配位子の試験キットと最大100kg規模の供給を手がける[本文]/閉じた:工場の中の製法とノウハウ、製法・触媒の特許、商標(高砂香料の触媒、S-メトラクロールの製品名)[本文]
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:工場と顧客を持つ事業会社が、発明を工業化する長期の投資を引き受けた:モンサント(ノールズ氏が在籍、L-DOPA の工場)、高砂香料(野依氏らの BINAP でメントールを工業化)、Merck・Codexis(シタグリプチンの製法)[本文]。S-メトラクロールで年1万トン超の工場に投資した会社名は頁に無い[本文]。大学(スタンフォード大学・MIT)は不斉エポキシ化の特許を持った[本文]。/実行の権限:工場を持つ事業会社[本文]
担保の置き場所秘匿・特許

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=部分的 不斉水素化(優先日1968年)はモンサント社内で、BINAP は野依氏らの研究として生まれ、モンサントでは発明者と工場が同じ会社、BINAP では大学と企業に分かれていた(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=束ねた モンサントの L-DOPA(1974年〜)、高砂香料のメントール(1983年〜、2001年に世界需要の約3分の1)、レボフロキサシンの原料(1992年)と、工場を持つ企業が製法特許とノウハウを重ねて工業化した[本文]。
  • 成熟期 噛み合い=整合・束ね=部分的 高砂香料は長く社内だけで使った触媒・配位子を試薬会社経由で外販し、ソルビアス(1999年にノバルティスの研究部門から独立)が配位子の試験キットと供給を担うなど、部品の事業が分かれて育った(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。
  • 転換期 噛み合い=整合・束ね=不明 S-メトラクロールは混合物の特許が1993〜94年に切れたあと、新しい配位子(EP 0564406)と製法(WO 95/21151)の特許で片方の型に切り替え、1996年に年1万トン超の工場が動いた[本文]。再創造は同じ製品の作り方を変える形で起き、誰が投資し実行したか(外からの束ね直しか)は頁に無い[本文/推論]。

結果 ノーベル賞を受けた技術そのものは製法・触媒の特許に乗り、工場を持つ企業が製造コストと供給力の形で稼いだ。最大の売上は、その技術で作った薬の物質特許が守った[本文]。

戦略への示唆 Teece から:製法の発明は、補完資産(工場と顧客)を持つ企業の中で使われて回収される。物の特許を持つ相手と組むか、物の特許が切れたあとの足場にする道がある[本文]。所有と実行から:十年単位の工業化の投資と、触媒を社内で使い続ける時間を引き受けた事業会社が、発明・製法特許・ノウハウ・工場を束ねて回収した[本文/推論]。

実行のときに確かめる問い

  • この製法を、自社または組む相手のどの工場で、だれの物の特許の上で使うか
  • 工場の中で見えない部分を、特許にするかノウハウにするか、どこで線を引くか

出典:片方の型は、どの特許で稼がれたか — 不斉合成の技術・事業・特許の50年/不斉合成のノーベル賞技術で、いちばん稼いだのは「薬の特許」だった/ノーベル賞級の発見は、なぜ特許として残らなかったのか — 硤合反応の4件の出願から、発見を事業につなぐ条件を考える

理研コンツェルン(特許を外部に公開して収入を得る研究所から、自ら事業化する企業群へ)1927〜1939年(戦時の経営悪化まで)T2 事業会社内製型
丸島:三位一体整合 事業:純粋な研究機関が、取得した特許を外部に公開して利益を得る仕組みを取り、やがて特許を自ら事業化した。大河内正敏は1927年に理化学興業を興し、直系・傍系30社超、最盛期は会社数63・工場数121[本文]。/研究開発:1939年の研究費は231万1000円[本文]。大河内の分権的研究室制度[本文]。/知財:取得した特許を外部に公開して対価を得る(Dahlander & Gann の Selling に分類)→ 自ら事業化[本文]。
Teece専有可能性 強・価値を取った側 革新者 補完資産:自ら興した製造会社群(理化学興業ほか)[本文](持ち手:理研産業団(理研自身)[本文])
分業と結合再統合 研究は理研、製造と販売は直系・傍系の事業会社[本文から推論]。
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:取得した特許を外部に公開して対価を得た[本文]。/閉じた:自ら事業化した領域では、特許を自社の事業会社で使った[本文から推論]。
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:不明(設立資金の出し手は頁にない)。1939年の収入の 81.9% は理研産業団各社の納付[本文]/実行の権限:大河内正敏[本文]
担保の置き場所特許

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=部分的・束ね=不明 純粋な研究機関として、取得した特許を外部に公開して利益を得る仕組みを取った[本文]。
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 1927年に理化学興業を興して特許を自ら事業化し、直系・傍系30社超へ広げ、1939年には産業団各社の納付が総収入の 81.9% を占めた[本文]。
  • 転換期 噛み合い=ずれ・束ね=分かれた 戦時に軍部の干渉で戦争関連製品を優先させられて事業バランスが乱れ、資源統制で実験が規制されて経営が悪化した[本文]。

結果 研究所は特許と事業会社の納付で研究費を上回る収入を得た(1939年)が、戦時の干渉と統制で経営が悪化した[本文]。

戦略への示唆 Teece・所有と実行のレンズから:特許の外部供与から始めても、価値獲得を確かにしたのは自ら事業化した器だった。その器の配分を決める権限が外(軍部)に移ると、事業のバランスが崩れる[本文から推論]。

実行のときに確かめる問い

  • ライセンス収入から自社事業化へ移る条件を、研究費と事業からの納付の比率で見ているか
  • 事業配分の決定権を外部(規制者・大口顧客)に握られたとき、研究をどう守るか

出典:財閥史をオープンイノベーションで読み解く — 問いの構造化ツリー

花王 バブ(炭酸ガス発泡入浴剤)1982〜(発売1983、弱酸性13件1984、発売40周年2023)T2 事業会社内製型
丸島:三位一体整合 事業:首位ブランドの代替品ではなくカテゴリを再定義。事業部の発想は自社の差別化でなく市場の拡大(冬場の使用率を上げる、夏場の需要を作る)。独自処方×自社販路×ブランド[本文]/研究開発:主剤を無機塩から炭酸ガス(重曹+有機酸)へ、剤形を粉末から錠剤へ、訴求を香りから目に見える血行促進へ。研究開発は市場拡大のための科学的データ取りへ向かった[本文]/知財:基本特許は「棚に置いても膨らまない」安定化剤の一点に絞り、発売4か月後に弱酸性入浴剤13件を10日間で集中出願(うち登録6件)。商標「バブ」[本文]
Teece専有可能性 混合・価値を取った側 革新者 補完資産:自社販路とブランド[本文](持ち手:花王[本文])
分業と結合垂直統合 研究・処方・販路・ブランドを自社で担った[本文]
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:意図した開放の記述はない。1985年10月29日に弱酸性入浴剤12件が同日公開され、競合はこの日に花王の狙いを読めたはず[本文]/閉じた:安定化剤の基本特許、弱酸性入浴剤13件、商標「バブ」[本文]
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:花王(事業会社)[推論:頁は投資の出し手を明示しない]/実行の権限:事業部と若手研究者チーム[本文]
担保の置き場所特許+ブランド

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 医薬品プロジェクトの解散を経た若手チームが入浴剤を選び、1982年に安定化剤の基本特許を出願し1983年11月に発売した[本文](束ねの判定は[推論])
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 発売4か月後に風呂釜を傷めない弱酸性を13件で囲い、20錠入りの追加や増産投資・事業部の設立という判断を権利が支えた[本文](局面の当てはめと束ねの判定は[推論])
  • 成熟期 噛み合い=不明・束ね=不明 2023年に発売40周年[本文]。この局面の三位一体や体制は頁にない

結果 花王がカテゴリを再定義し、発売時の購入者の25%は入浴剤の新規使用者だった[本文]。2023年に40周年[本文]

戦略への示唆 権利は原理ではなく商品が成立する最後の一点に宿り、発売後に現れる顧客側の制約を発明の問いに翻訳して囲うのが二手目。成果は件数でなく、どの事業判断をどの権利が支えたかで数える(丸島の三位一体と成果の測り方)[本文]

実行のときに確かめる問い

  • この商品が棚で生き残る最後の一点は何で、それを請求項にしているか
  • 発売後に顧客側の制約が出たとき短期間で囲う段取りがあるか。同日公開で狙いが読まれることを織り込んだか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む

LD転炉の導入(日本鋼管のジェネラルライセンスと国内への均等な再許諾)1956〜1977年(現在の脱炭素の文脈まで)T3 契約結合型
丸島:三位一体整合 事業:8〜10時間かかる平炉を約30分の LD転炉に置き換える。建設費は平炉の半分以下[本文]。/研究開発:導入後、八幡製鉄と川崎重工業が転炉排ガスを回収する OG法を共同開発し(1962〜1969年)、同時期のフランス系の方式を性能で上回った[本文]。業界内では鉄鋼協会や連盟の場で操業データを共有し、技術者が相互に訪問した[本文]。/知財:特許はオーストリア側、国外供与の窓口は特許管理会社 BOT。1956年4月に日本鋼管がアルピーネ社を窓口に BOT と契約してジェネラルライセンスを取り、八幡製鉄は日本鋼管と特許再実施権契約を結んだ。日本鋼管は権利を独占せず、希望する国内会社に均等な機会で実施を許諾した[本文]。
Teece専有可能性 混合・価値を取った側 混在 補完資産:安価な工業用酸素(深冷空気分離の工業化)、操業の身体知、業界内の技術交流、後発ゆえの最新設備[本文](持ち手:日本の高炉各社と業界団体(鉄鋼協会・連盟)[本文])
分業と結合ライセンス分業 権利者(墺)→ BOT(窓口)→ 日本鋼管(ジェネラルライセンスの管理者)→ 八幡・川崎製鉄・住友金属・神戸製鋼(再実施)、改良は八幡×川崎重工業の共同開発[本文]。
オープン&クローズ開くだけ 開いた:国内への均等な再許諾と、業界内での操業データの共有[本文]。/閉じた:不明(日本鋼管が再許諾の条件で何を留保したかは頁にない)
所有と実行部分的 投資の引き受け手:各社がそれぞれ自社の転炉に投資した[推論]。日本鋼管の水江工場は1958年9月に世界銀行から転炉建設の融資を受けた[本文。最初の稼働炉との関係は未確認と注記]/実行の権限:日本鋼管(ジェネラルライセンスの管理者)と通商産業省(斡旋・認可)[本文]
担保の置き場所国家

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=部分的 1956年4月に日本鋼管がジェネラルライセンスを取り、通産省の斡旋で八幡が再実施権を受け、1957年9月に八幡の50トン炉が日本最初の LD転炉として動いた[本文]。
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=部分的 粗鋼に占める転炉の比率は1958年の約5%から1965年に55%、1970年に79%へ上がり、1962〜1969年に OG法が開発された[本文]。
  • 成熟期 噛み合い=不明・束ね=不明 1970年に大手各社の平炉がすべて休止・廃止され、1977年に最後の一基が止まり、現在も高炉一貫製鉄所の製鋼はほぼすべて LD転炉である[本文]。
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=不明 還元を水素に移して直接還元鉄に切り替えると接続先は電炉になり、平炉を置き換えた技術がいまは置き換えられる側にいる[本文]。頁は誰が束ね直すかを書いていない。

結果 日本は世界最速で平炉を置き換え、十年余りで改良技術(OG法)を持つ側に移った。米国では平炉が残った[本文]。

戦略への示唆 Teece・分業と結合のレンズから:一社対多数の買い手の非対称は、交渉の外側に契約の成立を左右する条件を置けば埋められる。束ね方には事前連合と先行者の再許諾の二通りがあり、後者は先行者が独占しない保証が条件[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 買い手側を束ねる仕組み(共同購買・パテントプール・先行者の再許諾)のどれを使い、先行者が独占しない保証をどう作るか
  • 契約で買えるもの(実施権)と買えないもの(操業)を分け、後者を運ぶ人の移動を並行して手配したか

出典:LD転炉と戦後日本の技術導入 — 買い手の交渉力は、どこから来たか/見せることと、守ること — Open & Close は明治から続いている/反射炉 — 設計図は渡った。渡らなかったものは何か

PageRank(Google/スタンフォード発)1997〜2005年(優先日1997・出願1998・登録2001・大学の株売却2005)T3 契約結合型
丸島:三位一体整合 事業:Google=膨大なウェブを重要な順に並べ、検索の質で勝つ[本文]。大学=特許を売るのでなく事業の株を持って報われる[本文]。/研究開発:被リンクの構造をスコアに変える再帰的な格付け(発明者はラリー・ペイジ単独、学生の発明)[本文]。/知財:基本特許 US 6,285,999 はスタンフォード大学に帰属し、Google が独占ライセンスで囲い込む。継続・分割出願(US 6,799,176 等)で射程を拡張[本文]。
Teece専有可能性 混合・価値を取った側 混在 補完資産:検索事業そのもの(実施する事業会社)。大学は実施能力を持たない[本文+推論]。(持ち手:Google(実施者)[本文])
分業と結合ライセンス分業 大学=権利の保有。Google=実施・事業化。継続・分割出願による射程の拡張は両者で分担[本文]。
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:特許公報としての開示以外に、他者へ開いたものの記述は頁に無い/閉じた:基本特許を独占ライセンスで囲い込み、継続・分割出願で射程を広げる[本文]。
所有と実行部分的 投資の引き受け手:大学は特許を売らずに Google 株を持ち、株価の下振れも含めて事業のリスクを引き受けた[本文+推論]。Google 側の資本の出し手は頁に記載なし。/実行の権限:Google(実施者)[本文]
担保の置き場所契約

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=部分的 学生ペイジの発明が大学に帰属し(優先日1997・出願1998)、Google が独占ライセンスで実施した[本文]。
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=部分的 継続・分割出願で射程を広げ(2001年登録)、大学は取得した株を2005年に約3.36億ドルで売却した[本文]。局面の割り当ては推論[推論]。

結果 Google は実施の独占を得、スタンフォードは Google 株の売却で約3.36億ドルを得た[本文]。

戦略への示唆 分業と結合+所有と実行:基本特許は自社所有でなくてもよい。帰属と実施を分け、独占ライセンス+株式で繋げば、実施の独占と発明側の報酬の両方を築ける[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 権利者と実施者が別のとき、独占の範囲・継続出願の主導・対価(料率か株式か)を誰が決めるかを契約に書いたか
  • 自社が引用した先行技術の出願人は、将来の競合にならないか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む

テスラ/ウェスチングハウス(多相交流・誘導モーター)1887〜1897(効いた期間は1888〜96年ごろ、電化の価値は1929年ごろまで遅延)T3 契約結合型
丸島:三位一体部分的 事業:ウェスティングハウス社が交流の送電と動力で標準を取りにいった。テスラ特許を取得し、ナイアガラの発電機契約(1893)を取った[本文]/研究開発:テスラの回転磁界(多相交流)。実用機への作り替えは WH 社内の技術者(ランメ、スコット、シャーレンバーガー)。世界標準になったかご形回転子・三相はドリボ=ドブロボルスキー(AEG)[本文]/知財:多相交流の特許群(US 382,280、US 381,968 ほか)を WH が取得。方法クレームで回転磁界を押さえた[本文]
Teece専有可能性 強・価値を取った側 補完資産の保有者 補完資産:資本・製造能力・大型案件の入札能力と、社内技術者による再設計[本文](持ち手:ウェスティングハウス社[本文])
分業と結合ライセンス分業 原理の発見=フェラーリス、方式特許=テスラ→WH、実装=ドリボ=ドブロボルスキー(AEG)と WH の技術者、価値捕捉=WH[本文]
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:1891年のロイヤルティ条項の解除(WH の資金難)、1896年の GE–WH の相互実施許諾(Board of Patent Control)[本文]/閉じた:多相交流の基本特許群(WH が保有)[本文]
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:ウェスティングハウス社(1888年、現金と株で6万ドル+交流馬力あたり2.5ドル+月2,000ドルの顧問契約、1897年に一括買い取り)[本文:時間軸編、確度 B]。係争の側では資本家モルガンが統合とプールを見ていた[本文]/実行の権限:ウェスティングハウス社(再設計・資本・製造・入札)[本文]
担保の置き場所特許(1888〜96年ごろ)→資本・契約(プール)

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=部分的・束ね=分かれた テスラが多相方式を出願・登録し(1887〜88)、1888年7月に WH が特許を取得した=発明者と事業会社が契約で結ばれた[本文](判定は[推論])
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=束ねた WH の技術者が実用機に作り直して60Hz を自社標準に据え、ナイアガラ契約(1893)を取った。その間の1891年、WH の資金難を受けてテスラがロイヤルティ条項の解除に同意した[本文](判定は[推論])
  • 成熟期 噛み合い=不明・束ね=分かれた 1896年に300件超の係争をプールで内部化して産業の骨格が決まり、1900年代以降の価値は需要側の工場レイアウト再設計という特許にならない組織知で生じ、装置を売った側には渡らなかった[本文](局面の当てはめは[推論])

結果 事業価値の大半は WH 社が捕捉し、テスラは1891年に条項解除、1897年に特許を一括で買い取られた[本文]。電化が生んだ価値の大半は、その後30年、特許で捕捉できない需要側の層で生じた[本文]

戦略への示唆 特許の交渉力は、ボトルネックが特許になる層にある期間だけ効く。問うべきは効くかではなく、いつまで効き、その間に何を取りにいくか(Teece と時間軸のレンズ)[本文]

実行のときに確かめる問い

  • 自社の技術は要素・方式・変換・再設計のどの層にあり、その層は特許になるか
  • 発明・実装・保護・価値捕捉の四つの重心はいま誰にあり、どれをいつまでに自分の側へ寄せるか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/ボトルネックは、動く — 三相誘導モーターとリバース・サライエント/テスラは、取締役会にいない — Tesla in the Deeptech Startup(書籍骨子)/ティースの専有可能性レジーム — 発明で勝った者が、事業で負けるのはなぜか/同じ発明を、誰がどこまで「分かって」いたか——電流戦争で読む「理解の深さ」の五段

リーバイス/ジェイコブ・デイビス(リベット)1872〜1936(特許1873〜1890、赤タブ1936)T3 契約結合型
丸島:三位一体整合 事業:ゴールドラッシュの労働者向けに、酷使に耐える破れない作業ズボンを供給する[本文]/研究開発:ポケット口を金属リベットで補強する(仕立屋ジェイコブ・デイビス)[本文]/知財:リベット特許 US 139,121(1873)で独占(〜1890満了)。満了後はアーキュエイト・ステッチ、赤タブ(1936)、レザーパッチの商標・意匠へ移行[本文]
Teece専有可能性 混合・価値を取った側 混在 補完資産:資本(出願費用)と生地の供給[本文](持ち手:リーバイ・ストラウス[本文])
分業と結合協業・合弁 発明=仕立屋デイビス、出願費用と生地=リーバイ・ストラウス[本文]
オープン&クローズ開かれてしまった 開いた:1890年の特許満了でリベットは誰でも使えるようになり、競合が参入した[本文]/閉じた:満了までのリベット特許、満了後のアーキュエイト・ステッチ・赤タブ・レザーパッチ(商標・意匠)[本文]
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:生地供給元リーバイ・ストラウス(出願費用を出し共同名義に)[本文]/実行の権限:リーバイス(守りの資産を特許から商標へ載せ替えた)[本文]
担保の置き場所契約(共同出願)+特許→ブランド(商標)

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 出願費用を工面する役を生地供給元が引き受け、発明者と共同名義でリベット特許(1872出願・1873登録)を取った[本文]
  • 成熟期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 1890年の満了で模倣が氾濫し、リーバイスはステッチ・赤タブ(1936)・レザーパッチの商標・意匠へ守りを載せ替えた[本文](局面の当てはめと判定は[推論])

結果 満了後に模倣が氾濫したが、リーバイスはブランドとして守り直し、150年続くブランドになった[本文]

戦略への示唆 発明を事業化するには資本の座組が要り、特許の寿命を見越してブランドへ橋を架けておく(所有と実行、Teece のレンズ)[本文]

実行のときに確かめる問い

  • 出願費用を誰が出し、名義をどう置くか(共同名義の座組)を決めたか
  • 満了の日に何で守るか(商標・意匠)を、満了の前から使い始めているか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む

三菱電機 × Westinghouse(技術提携から技術交換契約へ)1923〜1970年代T3 契約結合型
丸島:三位一体部分的 事業:1921年に神戸造船所の電機製作所が独立して設立。技術水準が不十分で品質不良が頻発した末に WH と技術提携し、「ようやく事業基盤を確立」した[本文]。/研究開発:1926年に工作研究係、1933年頃に WH のコピー製品から一歩抜け出し電車用モーター等で独自仕様へ、1935年に本店研究課(社内では研究所の発足とする)。1930年代半ばまでは、ほとんどの製品を WH 仕様に変えていく時代だった[本文]。/知財:1966年の提携更新で、導入一辺倒から技術交換契約へ移った[本文]。交換が成り立つだけの自社技術が交渉の材料になったと読める[推論]。
Teece専有可能性 不明・価値を取った側 混在 補完資産:神戸造船所から引き継いだ製造の場と、電車用モーターなどの用途[本文から推論](持ち手:三菱電機)
分業と結合ライセンス分業 WH が技術、三菱電機が製造と仕様の改良を担った[本文から推論]。
オープン&クローズどちらでもない 開いた:1966年の技術交換契約で、自社技術を WH へ渡す側にも立った[本文から推論]。/閉じた:不明
所有と実行不明 投資の引き受け手:不明(WH との資本関係は確認できていない[本文])/実行の権限:三菱電機
担保の置き場所契約

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=不明 1921年に独立して設立された会社が品質不良に苦しみ、1923年に WH と技術提携して事業基盤を確立した[本文]。
  • 成長期 噛み合い=部分的・束ね=不明 1930年代半ばまではほとんどの製品を WH 仕様に変えていき、1933年頃に電車用モーター等で独自仕様へ、1935年に研究課を置いた[本文]。
  • 転換期 噛み合い=整合・束ね=不明 1966年の提携更新で導入一辺倒から技術交換契約へ、1970年代に本格的な自主技術開発に取り組んだ[本文]。

結果 三菱電機は事業基盤を確立し、43年かけて導入一辺倒から技術交換へ移った[本文]。誰がいくら稼いだかは頁にない。

戦略への示唆 Teece・丸島のレンズから:契約の形(導入→交換)そのものが交渉力の到達点を示す。交換できる自社技術を持つことが、依存からの脱却の節目になる[本文から推論]。

実行のときに確かめる問い

  • 次の提携更新で、こちらから出せる技術は何か(導入契約を交換契約に変えられるか)

出典:電機四社の外資提携 1899-1975 — B2 / H2 の検証ノート/送電インフラと工業所有権 — 担保はどこにあったか

味の素(池田菊苗 × 鈴木三郎助、特許の実施契約で学と商を結ぶ)1908年〜T3 契約結合型
丸島:三位一体整合 事業:葉山の海産物商が工業化・販売を担い、調味料という産業カテゴリーを作った[本文]。/研究開発:帝大の物理化学者が「うま味」を単離した[本文]。/知財:特許(第14805号)が両者を結ぶ契約媒体になった——池田の特許の実施契約[本文]。
Teece専有可能性 強・価値を取った側 混在 補完資産:工業化と販売[本文](持ち手:鈴木三郎助(海産物商)[本文])
分業と結合ライセンス分業 発明は大学(池田)、工業化・販売は商家(鈴木)[本文]。
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:特定の事業者への実施の許諾[本文]。/閉じた:特許による模倣の排除[本文:A 型の説明]。
所有と実行分かれた 投資の引き受け手:不明(工業化・販売を担ったのは鈴木三郎助[本文]。資本の出し手は頁にない)/実行の権限:鈴木三郎助(工業化・販売)[本文]
担保の置き場所特許

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=分かれた 帝大の物理化学者が単離した「うま味」を、海産物商が特許の実施契約で工業化・販売し、調味料という産業カテゴリーが生まれた[本文]。

結果 調味料という産業カテゴリーが生まれた[本文]。誰がいくら稼いだかは頁にない。

戦略への示唆 Teece・丸島のレンズから:越境の媒体を特許・契約という形式まで落とし切れるかが、関係依存で一過性に終わるか「権利で二世代先まで効く」型になるかの分岐点[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 大学の発明と事業者を結ぶ媒体を、特許の実施契約という形に落とせるか
  • 工業化と販売を担う相手は誰で、実施の範囲をどう切るか

出典:新産業が生まれる条件 ― 明治〜昭和の事例ライブラリ

日本郵船 ボンベイ航路(荷主連合で英国系海運同盟に挑む)1893年T3 契約結合型
丸島:三位一体整合 事業:インド綿の輸送を握る英国系海運同盟(P&O 中心)に対抗し、同盟加入を勝ち取る[本文]。/研究開発:不明(頁に記述なし)/知財:形式知が特許に載らない産業。越境の媒体は「荷主との長期輸送契約」=特許に相当する契約形式[本文]。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 混在 補完資産:需要側(紡績業界)と荷主側(タタ商会)の結束[本文](持ち手:紡績業界・タタ商会[本文])
分業と結合協業・合弁 需要(紡績業界)・荷主(タタ商会)・輸送(日本郵船)の三者がバリューチェーンの段階を分けて結んだ[本文]。
オープン&クローズどちらでもない 開いた:不明/閉じた:荷主との長期輸送契約で貨物を囲い込んだ[本文から推論]。
所有と実行分かれた 投資の引き受け手:不明/実行の権限:日本郵船(輸送)[本文]
担保の置き場所契約

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=分かれた 紡績業界・タタ商会・日本郵船が結び、P&O の運賃暴落攻勢にも荷主が離反せず耐え切って、同盟加入を勝ち取った[本文]。

結果 日本郵船はボンベイ航路で海運同盟への加入を勝ち取った[本文]。運賃・取り分は頁にない。

戦略への示唆 Teece・担保の置き場所のレンズから:特許に載らない越境は関係とオペレーションで守るしかなく、契約形式にどこまで落とし切れるかが一過性で終わるか否かの分岐点[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 相手の値下げ攻勢に、連合のどの参加者が最初に離反しうるか
  • 関係で守っている部分を、長期契約などの形式にどこまで落とせるか

出典:新産業が生まれる条件 ― 明治〜昭和の事例ライブラリ

東京通信工業(ソニー)のトランジスタ特許ライセンス(WE・1953年)1953年〜T3 契約結合型
丸島:三位一体整合 事業:特許の実施権だけを買い、開発は自力で行う[本文]。/研究開発:岩間和夫が渡米して製造現場を見聞し、手紙形式で技術詳細を送り続け、WE も量産できていなかった高周波トランジスタに到達した[本文]。/知財:WE はトランジスタ特許を2万5千ドルで公開ライセンスしており、東京通信工業は1953年に契約へ進んだ。技術援助契約は含まれていない[本文]。
Teece専有可能性 混合・価値を取った側 追随者・模倣者 補完資産:製造の暗黙知(岩間レポート)と外貨割当[本文](持ち手:東京通信工業(自ら獲得)、外貨は通産省の割当[本文])
分業と結合ライセンス分業 WE が特許、東京通信工業が開発と製造、通産省が外貨の割当[本文]。
オープン&クローズ開くだけ 開いた:権利者の WE がトランジスタ特許を公開ライセンスで開いていた[本文]。/閉じた:不明(東京通信工業の側で何を閉じたかは頁にない)
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:東京通信工業(資本を渡さず実施権だけを購入)。外貨は国家の割当[本文]/実行の権限:井深大(経営)・岩間和夫(技術)[本文]
担保の置き場所契約

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 井深大が外貨割当を求めて通産省を半年以上かけて説得し、1953年に WE の特許の実施権だけを買い、岩間レポートで現場の暗黙知を運んで高周波トランジスタに到達した[本文]。

結果 WE も量産できていなかった高周波トランジスタに到達した[本文]。収益は頁にない。

戦略への示唆 担保の置き場所・所有と実行のレンズから:制度が信用でき相手技術への依存が高いときは、ライセンス+自力開発で足り、資本を動かさずに済む[本文]。実施権と並行して、現場の暗黙知を運ぶ人を置く[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 買うのは実施権だけか、技術援助も要るか。暗黙知は誰がどう運ぶか
  • 許認可・外貨・規制の決定権者を、敵に回さず説得する計画はあるか

出典:新産業が生まれる条件 ― 明治〜昭和の事例ライブラリ/送電インフラと工業所有権 — 担保はどこにあったか

豊田佐吉・喜一郎(自動織機とプラット契約)1891〜1937(G型1924〜25、プラット契約1929〜1934)T3 契約結合型
丸島:三位一体部分的 事業:人が機械のそばで補給と監視を続けるという織機の最大の律速を外す[本文]。1926年に豊田自動織機製作所、1933年に自動車製作部門、1937年にトヨタ自動車工業[本文]/研究開発:無停止杼換式の G型自動織機と、フィーラー・経糸切れ検出金具という機械の「目」。「異常があれば機械が自ら止まる」という考え方[本文]/知財:発明者個人の名義で国内外に特許を重ね、特許を売れる財産として扱った(1913年に8万円で豊田式織機へ売却、1929年に喜一郎個人がプラット社へ譲渡)。自働化の考え方と量産に落とす現場の能力は特許にも契約にも乗らなかった[本文]
Teece専有可能性 混合・価値を取った側 革新者 補完資産:図面を直し続ける組織の能力(保守・品質管理・図面の管理)[本文](持ち手:豊田側の現場[本文])
分業と結合ライセンス分業 機械の発明と権利は豊田(個人名義)、日本・中国・米国を除く全世界の製造販売はプラット社へ譲渡、交渉は三井物産経由[本文]
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:機械の特許をプラット社へ譲渡(日中米を除く全世界の独占的製造販売権)[本文]/閉じた:自働化の考え方と、それを量産に落とし図面を直し続ける現場の能力[本文]
所有と実行部分的 投資の引き受け手:発明者個人(特許は個人名義で、売却により資金化)[本文]。会社の資本の出し手は頁にない/実行の権限:日本では豊田側(豊田自動織機製作所 1926)、英国ではプラット社[本文]
担保の置き場所契約(特許権譲渡)+秘匿(組織の能力)

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=部分的 佐吉が1891年から特許を重ね、1913年に所有特許を豊田式織機へ売却したため、喜一郎名義の新しい特許で G型(1924〜25)を固めた[本文](判定は[推論])
  • 成長期 噛み合い=部分的・束ね=分かれた 1929年に喜一郎個人がプラット社へ特許を譲渡したが、英国の性能試験で Platt-Toyoda 織機は振るわず、1934年に対価を減額して決済した[本文](局面の当てはめは[推論])
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=束ねた 社内に残った自働化の考え方と現場の能力が、1933年の自動車製作部門・1937年のトヨタ自動車工業を経て自動車の生産方式へ移され最大の価値を生んだ[本文](束ね直しは外からでなく社内からと読んだ[推論]。自動車事業の知財戦略は頁にない)

結果 対価は総額8万3,500ポンドで決済され、受領分は従業員への慰労金に充てられた[本文]。プラット社の織機は振るわず、最大の価値は自働化として社内に残り自動車の生産方式へ移された[本文]

戦略への示唆 特許は動く。能力は動かない[本文]。権利だけを売っても、それを回す補完資産(組織の能力)が移らなければ買い手の事業にならない(Teece と所有と実行のレンズ)[本文/推論]

実行のときに確かめる問い

  • ライセンス・譲渡の相手は、権利を使いこなす能力(保守・品質・図面管理)まで持てるか
  • 設計変更が原図に書き戻される仕組みがあるか(渡す図面は最新か)

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/「おもり」の技術史 ― 飛び杼から自働織機、オートスイッチ、そしてAIへ/「自働化」はAI時代の処方箋——豊田佐吉が100年前に書いていた設計書

FeliCa と FeliCa Networks(端末・課金・決済の垂直統合と、水平分業の側の立ち上がり)1988年(ソニーが開発に着手)〜2004年(FeliCa Networks 設立・おサイフケータイ開始)〜2016年(iPhone 7 日本モデルに FeliCa)T4 資本結合型
丸島:三位一体部分的 事業:ソニーとドコモが FeliCa Networks(2004年1月設立の合弁、2005年に JR東日本も出資)とおサイフケータイ(2004年7月開始)で、「端末・課金・決済」の垂直統合を完成させた[本文]。/研究開発:ソニーが1988年に非接触ICカード技術(後の FeliCa)の開発に着手。1997年に香港オクトパス、2001年に Suica で採用[本文]。/知財:年表では1988年の開発に「隠=営業秘密」、規格の動きに「型=規格」の軸が付く[本文]。ISO/IEC 14443 への追加提案(Type C)が2000年代初頭に否決(時期は要一次確認)され、2003年の NFC 規格 ISO/IEC 18092 に NFC-F として収容された[本文]。個別の特許はこの事例では扱わない(おサイフケータイ遠隔ロックは別担当)。
Teece専有可能性 不明・価値を取った側 不明 補完資産:端末(おサイフケータイ)、課金、決済インフラ、交通(Suica・オクトパス)[本文](持ち手:ソニー・ドコモ(2005年から JR東日本も出資)[本文])
分業と結合垂直統合 ソニー(技術)・ドコモ(通信と課金)・JR東日本(交通)が合弁で端末・課金・決済を握った。対照として、同じ年に水平分業の側(Google)の資本価値が立ち上がった[本文]
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:国際規格への提案(ISO/IEC 14443 Type C、否決)と、NFC 規格 ISO/IEC 18092 への NFC-F としての収容[本文]/閉じた:端末・課金・決済を合弁で握るサービスの層。1988年の開発段階は営業秘密の軸[本文]
所有と実行部分的 投資の引き受け手:ソニー(1988年から開発に着手)と、合弁の FeliCa Networks(2004年1月にソニーとドコモで設立、2005年に JR東日本も出資)[本文]。出資比率は頁でも未確認[本文]。/実行の権限:合弁の FeliCa Networks と、その親会社(ソニー・ドコモ)[本文/推論]
担保の置き場所資本・契約(合弁)

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=不明・束ね=束ねた ソニーが1988年に非接触ICカード技術の開発に着手し、1997年に香港オクトパス、2001年に Suica で採用された(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。
  • 成長期 噛み合い=部分的・束ね=部分的 2004年1月に FeliCa Networks をソニーとドコモの合弁で設立し、7月におサイフケータイを始めて端末・課金・決済の垂直統合を完成させた一方、国際標準化は否決され NFC-F として規格に収容された[本文]。束ねは創造期の一社から、成長期に合弁へと『外へ広げて』行われた[推論]。
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=不明 2007年の iPhone・Android、2011年の FeliCa 非対応の Google Wallet を経て、2016年9月に iPhone 7(日本発売モデル)が FeliCa を搭載し、デファクトの端末の側が型を取り込んだ[本文]。外から取り込まれたのは規格の型で、所有と実行が束ね直されたかは頁に無い[推論]。

結果 国内では端末・課金・決済の垂直統合が完成したが、同じ時期に資本市場は水平分業の側を高く評価した(符合)[本文]。FeliCa の型は2016年に世界標準の端末に取り込まれた[本文]。

戦略への示唆 分業と小川(O&C)から:国際標準化の提案が否決されても、規格の中に収容されていれば、デファクトの端末の側が後から取り込む道が残る(図鑑の「型」軸の変則事例)[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 自社の方式を、国際規格のどこに収容させておくか(提案が否決されたときの次の入口)
  • 垂直統合で握る層と、他社の端末・OS に開く層をどこで分けるか

出典:時価総額クロスオーバー — FeliCa Networksが完成した年、資本市場は水平分業を選んだ

FingerWorks(Appleのマルチタッチ買収)1998〜2005年(博士論文1999・出願1999・登録2001・買収2005)T4 資本結合型
丸島:三位一体整合 事業:Apple 側=タッチ UI を iPhone(2007)/iPad(2010)/Apple Watch/Magic Trackpad まで横展開する[本文]。FingerWorks 側=RSI 患者向けのジェスチャ入力(ニッチ)[本文]。/研究開発:デラウェア大の Westerman の博士論文(1999)が母体。Apple は自社開発せず、足りないマルチタッチを買って強みの OS・UI をさらに強めた[本文]。/知財:マルチタッチ表面と手入力を統合する US 6,323,846(請求項1は自己容量の変化を検知するセンシング装置)を含む特許・IP・創業者2名ごと取得(acqui-hire)。買収は NDA と事業停止のもと秘匿裏に進んだ[本文]。
Teece専有可能性 混合・価値を取った側 補完資産の保有者 補完資産:Apple の製品群(iPhone/iPad/Apple Watch/Magic Trackpad)と OS・UI[本文]。(持ち手:Apple[本文])
分業と結合垂直統合 FingerWorks=研究・発明・ニッチ製品。Apple=製品化と横展開[本文]。
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:頁に記載なし(FingerWorks の製品は静かに終息した)[本文]/閉じた:特許・IP・創業者ごとの取得、買収の事実自体の秘匿[本文]。
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:Apple(買収で取得した)[本文]。FingerWorks 側の出資者は頁に記載なし。/実行の権限:Apple[本文]
担保の置き場所資本

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=束ねた Westerman の博士論文(1999)を母体に製品化された技術を、2005年初頭、iPhone の前に Apple が特許・IP・創業者2名ごと取得し、FingerWorks の製品は終息した[本文。判定は買収した Apple の側についての推論]。
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=束ねた タッチ UI は iPhone(2007)/iPad(2010)/Apple Watch/Magic Trackpad へ横展開された[本文]。主体は Apple に移っている[推論]。

結果 Apple が特許・IP・発明者を取得し、iPhone 以降の製品群にタッチ UI を展開した。FingerWorks は製品を終息させた。買収額は頁に無い[本文]。

戦略への示唆 分業と結合+所有と実行:基本特許は作るだけでなく買える。人材ごと押さえれば、権利+実装ノウハウ+発明者を一度に確保できる[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • その権利は、発明者とノウハウ抜きで実施できるか(できないなら、権利だけ買っても足りない)
  • 取得の事実をいつまで伏せる必要があり、その間の事業停止を相手は受け入れられるか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/ゴールドラッシュ時代に何が儲かるか — 知財実務オンライン第155回を、3年後に読み直す

NAND型フラッシュメモリ(東芝・舛岡富士雄)1980〜2026年(基本特許の優先日1980・NAND 発表1987・サムスンへの供与1992・ベイン連合への売却2018・キオクシア上場2024)T4 資本結合型
丸島:三位一体ずれ 事業:チップを作って売る。NAND は長く東芝最大の収益源で、四日市は世界有数のメガファブに育った[本文]。1992年にサムスンへ技術を供与(市場の早期立ち上げとデファクト化を狙うセカンドソース戦略)、2000年・2004年にサンディスクと製造 JV[本文]。/研究開発:1980年、DRAM 部門にいた舛岡富士雄が、狙うべきは磁気テープ・フロッピーの置き換えだと見て、社内の評価が低いまま本務の外で開発した。1984年に NOR 型、1987年に NAND 型を発表[本文]。/知財:基本特許 US 4,531,203(優先日1980-12-20、消去ゲートを備えた積層ゲート構造)と NAND セル構造 US 4,959,812(優先日1987-12-28)を東芝名義で押さえた。1993年からサムスンとクロスライセンス[本文]。
Teece専有可能性 混合・価値を取った側 補完資産の保有者 補完資産:微細化を回し続けるメガファブ(専用資産)と、セルの上のシステム層 IP(多値記憶・カード・コントローラ=共特化資産)、そこへ投資を続ける資本[本文]。(持ち手:量産の資本=サムスン、システム層=サンディスク(2016年にウエスタンデジタルが買収)。東芝はファブを持っていたが、投資を続けられる資本構造を持たなかった[本文]。)
分業と結合協業・合弁 東芝=発明・基本特許・量産(四日市)。サンディスク=MLC 等のシステム IP を JV に持ち込む。サムスン=技術供与を受けたセカンドソースから量産の首位へ[本文]。
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:1992年、NAND 技術をサムスン電子へ供与(デファクト化狙いのセカンドソース)、翌1993年からクロスライセンス[本文]。/閉じた:セル構造の基本特許と、四日市の量産[本文]。
所有と実行部分的 投資の引き受け手:東芝(〜2018。四日市への投資とサンディスクとの製造 JV)[本文]。2018年以降はベインキャピタル主導のコンソーシアム(約2兆円で買収)[本文]。/実行の権限:東芝(〜2017)→東芝メモリ(2017分社)→ベイン連合のもとのキオクシア(2019改称)[本文]
担保の置き場所特許+資本

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=ずれ・束ね=分かれた DRAM 優先の社内で、舛岡が評価の低いまま本務の外で NOR(1984)・NAND(1987)を発明し、基本特許は東芝名義で取られた[本文。判定は推論]。
  • 成長期 噛み合い=部分的・束ね=部分的 1992年にサムスンへ供与し、2000年・2004年にサンディスクと製造 JV を組んで NAND を東芝最大の収益源に育てたが、1994年に発明者は退社し、価値はシステム層へ移り始めた[本文。判定は推論]。
  • 成熟期 噛み合い=ずれ・束ね=分かれた 2002年にサムスンが首位に立ち、微細化・3D 化の各世代で勝敗を決めたのは設備投資を続けられる資本で、東芝は2015年の不適切会計と2016年のウェスチングハウスの損失で、投資を続けられない資本構造が露呈した[本文+推論]。
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=束ねた 2017年に分社、2018年にベイン連合へ約2兆円で売却、2019年にキオクシアへ改称し、谷でも研究開発と設備投資を止めず、技術系人員を2割増やし約700人に SO を付けて2024年に上場した[本文]。知財戦略の記述は無い。
  • 成長期 噛み合い=不明・束ね=束ねた 2025〜26年、生成 AI のデータセンター向け SSD 需要と、米中対立下で非中国系の独立した NAND 専業という希少性が重なり、株価が急騰した[本文:OI-WG 醜いアヒルの子 第四の季節。局面の割り当ては推論]。

結果 NAND は長く東芝最大の稼ぎ頭だったが、シェア首位はサムスン(2002〜)、システム層のロイヤリティはサンディスク(2008年5.08億ドル)へ流れた。発明者は8700万円で和解し、事業体は2018年に約2兆円でベイン連合へ渡り(原因は原子力の損失)、キオクシアとして2024年に上場した[本文]。

戦略への示唆 Teece:基本特許の保有と価値の刈り取りは別々に動く——換金する装置(量産の資本・セルの上のシステム層)を誰が握るかを問い、ポートフォリオは価値が移る先へ打ち直す。所有と実行(ベイン型):親会社の中で分かれた資本・時間・報酬は、カーブアウトで一つの当事者に束ね直されると、赤字でも投資を続けられる[本文+推論]。

実行のときに確かめる問い

  • この発明を換金する装置(量産の資本/上の層のシステム/最終製品)を誰が握るか
  • 出願時に読んだ価値の重心は10年後も同じ層にあるか——そして長期の投資を引き受ける資本と権限は、その層の判断と同じ主体にあるか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/ティースの専有可能性レジーム — 発明で勝った者が、事業で負けるのはなぜか/チップは内製できても、特許は内製できない — クアルコム×アップル特許ライセンス更新(2026)から図鑑へ/発明の選び方 — イシュー度×解の質に、特許にしかない軸を足す/醜いアヒルの子の旅路 ― なぜインサイドアウト型は醜いとみられるのか/知財業界にも「ベイン型」の変革モデルが要る

ポケモンGO(Niantic × 任天堂 × ポケモン)2014〜2025年(プロトタイプ2014・スピンアウト2015・配信2016・ゲーム事業売却2025)T4 資本結合型
丸島:三位一体整合 事業:人を外に連れ出す体験。基本無料+アイテム課金に、スポンサード・ロケーション(店舗への送客課金)と地域イベントを重ねた[本文]。/研究開発:2014年の Google マップのエイプリルフール企画を仮説検証にし、Ingress(2012)のユーザー投稿ポータルをポケストップ/ジムに転用、“ふわっと投げる感覚”を作り込んだ[本文]。/知財:核は著作権・商標としての『ポケモン』。特許は周辺(Google 名義で出願し2015年に Niantic へ移管した US 8,968,099 等)。出現アルゴリズムやチューニング値はノウハウ[本文]。操作手順は8年後に別タイトルの系譜で任天堂・株式会社ポケモンの分割特許(特許第7545191号)として明文化された——同特許は係争中で、本分析は当否を扱わない[本文]。
Teece専有可能性 混合・価値を取った側 混在 補完資産:ユーザー生成の地理データ(Ingress のポータル)、キャラクター IP、三社の出資と座組[本文]。(持ち手:場所データ=Niantic、キャラクター IP=任天堂・株式会社ポケモン[本文]。)
分業と結合協業・合弁 Niantic=開発・運営・場所データ。任天堂・株式会社ポケモン=キャラクター IP。Google=出資・スピンアウト元[本文]。
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:基本無料(アイテム課金)。ユーザーが投稿したポータルを場の資産に転用[本文]。/閉じた:キャラクター IP(著作権・商標)、出現アルゴリズム・チューニング値(ノウハウ)、場所データ[本文]。
所有と実行部分的 投資の引き受け手:任天堂・株式会社ポケモン・Google が Niantic に出資し、2015年に Google からスピンアウトした[本文]。/実行の権限:Niantic(開発・運営)[本文]
担保の置き場所データ+契約

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=部分的 2014年のエイプリルフール企画を仮説検証にし、2015年に任天堂・ポケモン・Google の出資で Niantic が Google からスピンアウトした[本文。噛み合いの判定は推論]。
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=部分的 2016年に配信し、東北イベントやスポンサード・ロケーションで場所を商品化する一方、持分構造の開示で任天堂株が18%下げた[本文。局面の割り当ては推論]。
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=分かれた 2025年3月、Niantic はゲーム事業を Scopely へ約35億ドルで売却し、地理空間 AI(Niantic Spatial)を分社して残した=事業を切り分け、データの側を本体として残した[本文]。

結果 収益は三社にまたがりライセンスで割れた。2025年、Niantic はゲーム事業を約35億ドルで売却し、地理空間 AI を残した[本文]。

戦略への示唆 Teece+丸島(知財ミックス):制度の語彙に写らない発明は、データ・ブランド・速度・座組という別の資産クラスで守る。小川 O&C:遊びは無料で開き、キャラクターと場所データで閉じる。所有と実行:座組で束ねても、持分構造がリターンを決める[本文+推論]。

実行のときに確かめる問い

  • 発明の核(体験・手触り)を、請求項以外のどの資産(データ・ブランド・ノウハウ・座組)に置いたか
  • 共同事業の持分構造で、自社に戻るリターンはどれだけか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/発明の選び方 — イシュー度×解の質に、特許にしかない軸を足す

富士電機製造 × Siemens(古河電気工業との合弁と、富士通の分社)1923〜1937年T4 資本結合型
丸島:三位一体部分的 事業:古河電気工業とシーメンスの資本・技術提携で設立し、モータ(1924)・変圧器(1925)・発電機と扇風機(1927)・整流器(1930)と内製化を進め、1933年に通信機へ進出、1935年に通信機部門を分離して富士通信機製造(現・富士通)を設立した[本文]。/研究開発:提携の翌年に自社工場から製品を出したが、これは技術的自立を意味しない——「機械が来た」提携だった[本文]。/知財:シーメンスの出資 300 万円は機械の現物と技術報償金で振り替えられ、現金は入っていない[本文]。技術の対価が持分に換えられたと読める[推論]。権利化・秘匿の扱いは頁にない。
Teece専有可能性 不明・価値を取った側 混在 補完資産:国内資本と製造の場(古河電気工業)[本文から推論](持ち手:古河電気工業・富士電機製造)
分業と結合協業・合弁 シーメンスが機械と技術(現物出資)、古河と富士電機が内製化と事業化を担い、通信機は別会社に切り出した[本文]。
オープン&クローズどちらでもない 開いた:不明/閉じた:不明
所有と実行部分的 投資の引き受け手:シーメンス(30%。機械現物と技術報償金で振替)と古河電気工業[本文]/実行の権限:不明(富士通信機製造の分社が誰の判断だったかは未確認と頁に明記)
担保の置き場所資本

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=部分的・束ね=束ねた 1923年に古河電気工業とシーメンスの合弁で設立し、翌年から五年余りでモータ・変圧器・発電機・整流器と内製化を進めた[本文]。資本と技術が一つの器に入った[推論]。
  • 成長期 噛み合い=不明・束ね=不明 1933年に通信機事業へ進出し、1935年に通信機部門を分離して富士通信機製造を設立、1937年に計測器へ進出した[本文]。分社の判断主体は未確認[本文]。

結果 分社先の富士通信機製造が後年の主力企業になった[本文]。各社の取り分は頁にない。

戦略への示唆 分業と結合・所有と実行のレンズから:境界を資本構造に埋め込んだ器が、二世代先の産業(通信機→情報)を枝分かれさせた[本文]。技術を持分に換える設計は、現金なしで束ねる手段になる[推論]。

実行のときに確かめる問い

  • 技術の対価を、現金・ロイヤルティ・持分のどれで払う(受け取る)のが、次の分社まで見て有利か
  • 合弁から新事業を切り出すとき、その判断を誰が持つかを契約で決めているか

出典:電機四社の外資提携 1899-1975 — B2 / H2 の検証ノート/新産業が生まれる条件 ― 明治〜昭和の事例ライブラリ/送電インフラと工業所有権 — 担保はどこにあったか/財閥史をオープンイノベーションで読み解く — 問いの構造化ツリー

日本電気 × Western Electric(外資マジョリティの合弁)1899〜1941年(1943年の住友通信工業への改称まで)T4 資本結合型
丸島:三位一体不明 事業:WE が 54% を出資する合弁として設立し、1902年に電話機の生産を始めた[本文]。/研究開発:1928年の NE式写真電送装置が「純国産品が輸入品を圧倒した最初の製品」[本文]。交換機・搬送機の自社設計がいつ始まったかは頁では未確認と明記されている(不明)。/知財:頁に特許・秘匿の扱いの記述はない(不明)。技術供与の担保は株式の所有に置かれたと読める——頁は1899〜1941年の電機各社について「エクイティがパテントの不完全さを補う担保として使われた」と書く[本文:電機各社の一般論]。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 混在 補完資産:電話機の製造と日本国内の経営(日本側出資者、1932年以降は住友の人事権)[本文](持ち手:日本側出資者(岩垂邦彦 33%、日本側計 46%)、のち住友合資・住友本社[本文])
分業と結合協業・合弁 WE が資本の過半と技術、日本側が製造と国内の経営を担った[推論:設立時の出資構成と生産開始の記述から]。
オープン&クローズどちらでもない 開いた:WE の技術を合弁の内側で日本側に渡した[推論]。/閉じた:株式の過半(54%)で、技術を渡す相手の経営そのものを持った[本文の出資比率と、送電インフラ §6 の「会社そのものを持とうとする」からの推論]。
所有と実行部分的 投資の引き受け手:WE(54%)と岩垂邦彦(33%)ほか日本側。1932年に住友合資が ISE 株を取得(出資 14.1%)、1941年には住友本社 46.1%・ISE 19.7%[本文]/実行の権限:設立時は外資マジョリティ[本文]。1932年に人事権と最終責任が住友へ、1941年に経営権が初めて日本側へ[本文]。
担保の置き場所資本

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=不明・束ね=束ねた WE が 54% を出資する外資マジョリティの合弁として設立され、1902年に電話機の生産を始めた[本文]。束ねたのは外資の側[推論]。
  • 成長期 噛み合い=部分的・束ね=分かれた 1928年に純国産品が輸入品を圧倒し、1932年に住友合資が ISE 株を取得して人事権と最終責任が住友へ移った[本文]——資本の一部と経営の権限が別の当事者に分かれた[推論]。
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=束ねた 1941年、敵国資産としての処分で外資の持分が消え、経営権が初めて日本側(住友本社 46.1%)へ移り、1943年に住友の連繫会社として住友通信工業へ改称した[本文]。束ね直しは技術の成熟ではなく戦争という外生ショックで来た[本文]。

結果 利益の配分は頁にない。日本側は1928年に純国産品で輸入品を上回り、1941年に経営権を得た[本文]。

戦略への示唆 所有と実行のレンズから:提携からの「自立」を年数で測ると、外生ショックによる所有の移転を技術の成熟と読み違える。技術の節目と資本の節目は別の系列で記録する[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 自社の「自立」の指標は、技術の節目(自社設計品・研究所)と資本の節目(持株比率・人事権)を別々に記録しているか
  • 相手が資本参加を求めるのは、契約の履行を確かめる手段が他にないからか、それとも別の理由か

出典:電機四社の外資提携 1899-1975 — B2 / H2 の検証ノート/送電インフラと工業所有権 — 担保はどこにあったか

東京電気・芝浦製作所 × GE(資本+ライセンス+役員派遣、のち東芝)1905〜1969年T4 資本結合型
丸島:三位一体部分的 事業:東京電気は輸入品との競争で収益が悪化した末に GE の出資(51%)を受け入れて「ようやく企業基盤を確立」した。芝浦製作所の大田黒専務は、電機工場を作る課題は「資本よりむしろ技術」で、研究所をつくる余裕がないため GE と組み「その知識と経験を吸収するのが得策」と説いた[本文]。/研究開発:提携は研究所の代替物だった[本文]。東京電気は1918年に研究部門、1928年に本格的な研究所(真空管・管球材料)、芝浦は1931年に鶴見研究所を独立。水力は1940年の鴨緑江でキャッチアップをほぼ達成したが、大容量火力は1962年まで段階的大容量化のたび提携を更新した。東芝の中央研究所は「生産・販売に直結する重要製品の開発と技術導入抑制のための研究」に重点を置いた[本文]。/知財:GE からライセンスを受け、ロイヤリティを払う側だった——ロイヤリティ支払いがコスト圧力になった[本文]。自社特許の扱いは頁にない(不明)。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 混在 補完資産:日本での製造拠点と販売、のちの研究所[推論](持ち手:東京電気・芝浦製作所(GE が出資))
分業と結合協業・合弁 GE が技術・資本・役員、日本側が製造・販売と導入技術の吸収・改良を担った[本文から推論]。
オープン&クローズどちらでもない 開いた:頁に、自社から外へ開いた設計の記述はない(不明)。/閉じた:東芝の中央研究所が「技術導入抑制のための研究」に重点を置いた——導入を減らす方向への閉じ方[本文]。
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:GE(東京電気 51%、芝浦製作所 24.8%)[本文]/実行の権限:日本側の経営者(大田黒専務の判断)と、GE からの役員派遣[本文]
担保の置き場所資本

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 東京電気(1905)は生存のために GE の出資 51% を受け入れ、芝浦(1909)は研究所の代替として GE と組み、資本・ライセンス・役員派遣がセットで来た[本文]。
  • 成長期 噛み合い=部分的・束ね=部分的 研究所を順に立ち上げ(1918・1928・1931)、1935年に提携範囲を広げ、1939年に合併、1940年に水力ではキャッチアップをほぼ達成した[本文]。
  • 成熟期 噛み合い=ずれ・束ね=部分的 大容量火力では段階的大容量化のたび提携を更新し、導入技術の消化とロイヤリティに研究資源が固定された[本文]。1941年に外資との資本関係が一斉に断ち切られた[本文:送電インフラの一般記述]ため、以後の技術の供給は契約だけになったと読める[推論]。
  • 転換期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 1962年に大容量火力の自主開発へ、1969年に「自主技術の確立」が全社方針になった[本文]。束ね直しは外からではなく社内の方針として起きた[推論]。

結果 日本側は企業基盤を得て、水力では1940年にキャッチアップをほぼ達成した。ロイヤリティはコスト圧力として長く残った[本文]。

戦略への示唆 所有と実行・丸島のレンズから:資本を伴う導入は事業化を速めるが、「遅らせる」のではなく「導入技術の消化に研究資源を固定する」——自立は資源配分の構造の問題として設計する[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 導入技術の消化・改良に、研究開発の資源のどれだけが固定されているか
  • 提携を更新するたびに、自主開発へ切り替える条件を書いているか

出典:電機四社の外資提携 1899-1975 — B2 / H2 の検証ノート/送電インフラと工業所有権 — 担保はどこにあったか/財閥史をオープンイノベーションで読み解く — 問いの構造化ツリー

送電インフラの技術導入と工業所有権制度(担保の置き場所の移動)1885〜1980年(2020年の日立による ABB 送配電事業の取得まで)T4 資本結合型
丸島:三位一体部分的 事業:国家として欧米の送電・電機技術をどう手に入れるか:模倣が合法の時代(1885–1899)、資本の所有が担保になった時代(1899–1941)、国家が門番になって資本なしで技術だけを買った時代(1950–)と移った[本文]。/研究開発:変圧器・碍子・送電線など送電網を成立させた発明は、ほぼ全部が欧米のもの[本文]。日本勢が強いのは真空遮断器・架橋ポリエチレンケーブル・超高圧碍子など、素材と製造の蓄積がものを言う分野[本文]。/知財:1885年の専売特許条例は外国人の出願を受け付けず、1899年に条約改正と引き換えにパリ条約へ加盟、1921年改正は化学物質を製法特許にとどめ(物質特許は1976年)、1950年の外資法は技術援助契約を認可事項にした[本文]。
Teece専有可能性 混合・価値を取った側 混在 補完資産:素材と製造の蓄積[本文]、生糸で稼いだ外貨(機械の輸入と条約改正の交渉力の原資)[本文](持ち手:日本の電機メーカー・製糸業)
分業と結合ライセンス分業 発明は欧米、導入と製造は日本。担保の仕組みは資本→国家の認可へ移った[本文]。
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:1885年条例は国内に開いた。1899年に外国人へ開いた[本文]。/閉じた:1885年条例は外国人の出願を閉じ、1921年改正は物質特許を閉じ、1950年の外資法は資本参加を伴う取引を閉じる方向へ誘導した[本文]。
所有と実行部分的 投資の引き受け手:戦前は外資(WE・GE・Siemens)が資本で[本文]、戦後は国家が外貨割当と認可で[本文]。2020年は日立製作所が ABB 送配電事業の 80.1% を取得[本文]/実行の権限:国家(外資委員会による認可)[本文]
担保の置き場所資本→国家

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 1885年の専売特許条例は外国人の出願を受け付けず、外国技術の国内での模倣は国内法上とがめられなかった——制度は自国の産業を育てるために設計されていた[本文]。束ねたのは国家[推論]。
  • 成長期 噛み合い=部分的・束ね=部分的 1899年に条約改正と引き換えにパリ条約へ加盟し、外国技術は「買うか、組むか」になり、外資は資本と役員派遣で履行を担保した[本文]。所有の一部は外資、実行は日本の事業会社にあった[推論]。
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=束ねた 1941年の敵産管理法で外資との資本関係が一斉に断ち切られ、1950年の外資法で国家が技術援助契約の認可権を握る門番になった[本文]。束ね直したのは国家で、終わらせたのは制度ではなく暴力だった[本文]。
  • 成熟期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 資本を渡さずに技術だけを買う取引が定着し(1953年の東京通信工業)、1980年に外資法が廃止され、1980年代には日本企業が被告の側にも立つようになった[本文]。
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=束ねた 2020年、外資と組まなかった日立製作所が ABB の送配電事業の 80.1% を取得し、2022年に完全子会社とした[本文]。デバイスとデジタルを機器とグローバル顧客基盤に接合する取引だった[本文]。

結果 戦前は外資が株と役員で履行を担保し日本側は事業基盤を得た。戦後は資本を渡さずに技術を買い、2020年には対照群だった日立が欧州の送電資産を買う側に回った[本文]。

戦略への示唆 担保の置き場所・所有と実行のレンズから:知財制度が信用できるなら契約で足り、できなければ資本で代替する。制度が強い相手国でなお合弁を選ぶなら、担保以外の理由(市場アクセス・人材・規制対応)を明示できなければ過剰な担保になる[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • この連携で資本を求める(求められる)のは、契約の履行を確かめる手段が他にないからか
  • 「制度への信頼×相手技術への依存」の四象限で、この取引はどこにあるか

出典:送電インフラと工業所有権 — 担保はどこにあったか/見せることと、守ること — Open & Close は明治から続いている

Linux/GPL(コピーレフト)1991年〜(商標の取消審判1996・和解1997・GPLv3 2007・IBM の Red Hat 買収2019)T5 結節点オープン&クローズ型
丸島:三位一体整合 事業:ソフトは無償、価値はサポート・保証・認証に置く(Red Hat 型サブスクリプション)[本文]。リーナス自身の事業の記述は頁に無い。/研究開発:1991年、学生の自作カーネルを公開し、世界中の他人が安心して手を入れられる場を作る[本文]。/知財:土台は著作権。GPL は著作権を放棄せず、「配布するなら派生物も同じ条件でソースを開け」を著作権侵害への対抗として強制する(コピーレフト)。名前『Linux』の商標は握った[本文]。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 補完資産の保有者 補完資産:サポート・保証・認証、運用・クラウドという上位レイヤ[本文]。(持ち手:Red Hat 型のサービス事業者・クラウド事業者[本文:ケースマッパー])
分業と結合ライセンス分業 リーナスと開発者=カーネルの開発・公開・商標の保持(現在は Linux Mark Institute が管理)。世界中の他人=改変・派生。Red Hat 等=サポート・保証・認証[本文]。
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:コードの全部。GPL で派生物も同条件でソースを開くことを強制[本文]。/閉じた:『Linux』という名前(商標)[本文]。
所有と実行分かれた 投資の引き受け手:不明(カーネル開発の資本の出し手は頁に無い)。収益化の層では、2019年に IBM が Red Hat を約340億ドルで買収した[本文]。/実行の権限:リーナス・トーバルズ(公開と商標)。商標は現在 Linux Mark Institute が管理[本文]
担保の置き場所契約

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=分かれた 1991年、学生の自作カーネルを公開し、GPL で開放を強制する場を作った[本文。束ねの判定は推論]。
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=分かれた 1996〜97年、第三者に登録された『Linux』商標を取消審判と和解で取り戻し、Red Hat 型サブスクリプションが価値を周辺に置いた[本文。局面の割り当ては推論]。
  • 成熟期 噛み合い=整合・束ね=部分的 GPLv3(2007)の特許条項や Open Invention Network(2005)で特許制度と折り合い、2019年に IBM が Red Hat を約340億ドルで買収した=収益化の層は大企業に束ねられた[本文+推論]。

結果 ソフトは無償のまま、収益はサポート・保証・認証の側へ移った(Red Hat、2019年に IBM が約340億ドルで買収)[本文]。

戦略への示唆 小川 O&C+Teece:権利を取ったうえで向きを反転させ開放を強制し、名前だけを握る。専有をゼロにすると利益は補完資産のレイヤへ移る——どのレイヤで刈り取るかは選べる[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 開くと決めたとき、何を一点だけ握るか(名前・品質基準・互換性の認定)
  • 開いた結果、利益が移る補完資産のレイヤは誰が持つか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/ティースの専有可能性レジーム — 発明で勝った者が、事業で負けるのはなぜか

TSMC と台湾のファウンドリ専業モデル(シリコンの盾)1985年8月(モリス・チャンの帰国)〜1987年(TSMC 設立)〜2026年T5 結節点オープン&クローズ型
丸島:三位一体不明 事業:半導体の設計と製造を完全に分離する「ファウンドリ専業モデル」。外交的に孤立した台湾が、軍事ではなく経済と技術で生き残る戦略を選んだ[本文]。/研究開発:不明(記事は、世界最先端ロジック半導体の約9割を TSMC が製造する「とも言われる」とする)[本文]/知財:特許・営業秘密の記述は記事に無い[本文]。不明。
Teece専有可能性 不明・価値を取った側 補完資産の保有者 補完資産:製造(ファウンドリ)。Apple・NVIDIA・Qualcomm・AMD など世界の半導体企業の製造基盤[本文](持ち手:TSMC[本文])
分業と結合水平分業 設計は他社(Apple・NVIDIA・Qualcomm・AMD など)、製造は TSMC[本文]
オープン&クローズ不明 開いた:製造を他社の設計に開いた(専業で受託)[推論]/閉じた:不明
所有と実行部分的 投資の引き受け手:台湾政府とオランダのフィリップス社の共同出資(1987年)[本文]/実行の権限:モリス・チャン(政府から『ファウンドリ専業の半導体企業を設立してほしい』と要請された)[本文/推論]
担保の置き場所国家・資本(台湾政府とフィリップスの共同出資、技術を外交力へ転換した「シリコンの盾」)

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=不明・束ね=部分的 外交的に孤立した台湾で、1985年8月に帰国したモリス・チャンに着任2週間で設立の要請があり、1987年に政府とフィリップスの共同出資で TSMC が設立された[本文]。
  • 成熟期 噛み合い=不明・束ね=不明 TSMC は Apple・NVIDIA・Qualcomm・AMD などの製造基盤となり、世界最先端ロジックの約9割を製造するとも言われ、『シリコンの盾』と呼ばれる構造になった(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。

結果 TSMC は世界の半導体企業の製造基盤になり、台湾が危機に陥れば世界の IT 産業が止まるという構造(シリコンの盾)が生まれた[本文]。

戦略への示唆 分業(小川「伸びゆく手」)と担保の置き場所から:製造という結節点を専業で押さえて設計の分業を世界に広げ、その代えにくさが国家の安全保障の担保にまでなった[推論]。

実行のときに確かめる問い

  • 自社が押さえるのは設計か製造か。どの工程の結節点か
  • 自社の技術の位置は、取引先や国にとってどれだけ代えにくいか(担保になっているか)

出典:「アジアの孤児」から「世界の守り神」へ半導体40兆円目標の先に、日本が見るべき台湾の背中

TeX(ドナルド・クヌース)1978年〜(TeX82 1982)T5 結節点オープン&クローズ型
丸島:三位一体整合 事業:ビジネスモデルを持たない。対価は普及そのもの[本文]。/研究開発:『The Art of Computer Programming』改訂版の組版品質に納得できず、数式組版システムを自作した(1978着手、1982 TeX82 として再設計)[本文]。/知財:特許なし・著作権も主張しない(パブリックドメイン)。名称『TeX』・ロゴ・TeX ライオンは米国数学会(AMS)の商標。『TeX』を名乗れるのは同梱の TRIP テストに合格した実装だけ[本文]。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 誰も(公共財化) 補完資産:頁に記載なし(持ち手:不明)
分業と結合ライセンス分業 クヌース=本体・アルゴリズム・TRIP テスト。誰でも=移植・改造。AMS=商標。バグ報告者=品質(懸賞 0x$1.00)[本文]。
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:ソースもアルゴリズムも全部公開(パブリックドメイン)[本文]。/閉じた:名前(TeX・ロゴ・ライオン=AMS の商標)と、TRIP テストという品質の門[本文]。
所有と実行部分的 投資の引き受け手:クヌース本人(自分の本を美しく刷りたいという一点から自作した)[本文]。資本の記述は頁に無い。/実行の権限:クヌース(本体・TRIP テスト)、AMS(商標)[本文]
担保の置き場所標準・ルール

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=部分的 1978年に自作を始め、1982年に TeX82 として再設計し、本体をパブリックドメインに置いて名前だけを TRIP テストの条件で守った[本文。判定は推論]。
  • 成熟期 噛み合い=整合・束ね=部分的 40年以上数式組版の事実上の標準であり続け、版番号は π に収束し、発明者の死をもって凍結すると決められている[本文。局面の割り当ては推論]。

結果 ロイヤルティで稼いだ者はいない。40年以上、数式組版の事実上の標準であり続けている[本文]。

戦略への示唆 小川 O&C:最小の一点(名前と品質基準)だけを守れば、すべてを開放しても秩序は保てる。何を守るかを決めるとは、何を手放すかを決めることである[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 開放するとき、互換性・品質を名前の使用条件として機械的に判定できるか(TRIP テストに当たるもの)
  • 守る一点は、模倣されても品質の信頼を保てる一点か

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む

クアルコム(CDMA・標準必須特許)1990年代〜2026年(基本特許1990・和解2019・控訴審2020・ライセンス更新2026)T5 結節点オープン&クローズ型
丸島:三位一体整合 事業:自社方式(CDMA)を3G標準に組み込み、端末が売れるたびに端末価格に対する率でロイヤルティを取る。チップ販売+ライセンス料の二階建て[本文]。/研究開発:携帯通信の多元接続に CDMA を実用化し、拡散スペクトラム多元接続の基本特許 US 4,901,307(1990)を持った[本文]。/知財:以後、膨大な SEP ポートフォリオを構築。標準に必須な特許を握り、端末(完成品)の段階でライセンスする[本文]。2017〜19年には標準必須でない特許で差止めを取りにいき、SEP で「広く薄く取る」ことと非 SEP で「止める」ことを一つのポートフォリオで使い分けた[本文]。料率・対象・期間は開示しない[本文]。
Teece専有可能性 強・価値を取った側 革新者 補完資産:標準(3G)と、チップの製造・供給、端末メーカー各社の設備投資[本文]。ケースマッパーは「標準化により業界全体の設備投資を自分の補完資産に変えた」と書く[本文]。(持ち手:端末メーカー(Apple と製造委託先4社ほか)。チップは当初クアルコムが供給し、Apple は2025年から自社設計モデムに移った[本文]。)
分業と結合ライセンス分業 クアルコム=技術開発・標準化・SEP のライセンス・チップ供給。端末の設計・製造・販売は端末メーカーと製造委託先(Foxconn・Pegatron・Wistron・Compal)[本文]。
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:自社技術を標準(CDMA→3G)に載せて普及させる。FRAND(公正・合理的・非差別)条件でのライセンス[本文]。/閉じた:標準に必須な特許(SEP)の束、端末レベルの課金、「ライセンスなしならチップも売らない」方式、標準でない特許での差止め。契約の料率・対象・期間は伏せる[本文]。
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:クアルコム(CDMA の実用化と標準化を引き受けた事業会社)[推論]。投資額や資本構成は頁に記載なし。/実行の権限:クアルコム(特許ライセンス部門 QTL)[本文]
担保の置き場所標準・ルール

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 携帯通信の多元接続に CDMA を実用化し、基本特許 US 4,901,307(1990)を取得した[本文]。局面の割り当てと束ねの判定は推論[推論]。
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 自社方式を3G標準に組み込み、SEP の束と「チップ+ライセンス」の二階建て課金を築いた[本文]。
  • 成熟期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 2017〜19年の世界規模の係争と和解、2020年の控訴審を経て、Apple がモデムを内製した後の2026年もライセンスは更新された=一階(チップ)が抜けても二階(ライセンス)は残った[本文]。

結果 クアルコムがロイヤルティで稼ぎ、チップの顧客が内製に移ってもライセンス収入は残った[本文]。Apple は二重取り・算定の基礎を争ったが、判決前の和解で論点は判断されずに消えた[本文]。

戦略への示唆 Teece:標準必須特許は、補完資産を手放しても価値を刈り取れる数少ない装置になる。小川 O&C:標準で開き SEP で閉じる境界の設計が、普及をそのまま課金基盤に変える。ただし FRAND の縛りとの均衡が要る[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 自社の特許は、顧客がそれを自分で作れるようになった翌日にも、まだ効いているか(標準の内か外か)
  • 部品で取るか完成品で取るか——課金ポイントの選択で、収入と紛争の相手はどう変わるか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/チップは内製できても、特許は内製できない — クアルコム×アップル特許ライセンス更新(2026)から図鑑へ/ティースの専有可能性レジーム — 発明で勝った者が、事業で負けるのはなぜか

ジレット(安全剃刀・替刃)1903〜1921頃(特許1904、満了〜1921)T5 結節点オープン&クローズ型
丸島:三位一体整合 事業:毎朝の髭剃りという反復消費の市場に着目し、本体は安く替刃で稼ぐ razor-and-blades[本文]/研究開発:薄く撓む着脱式の両刃(均一厚の薄鋼板、刃厚約0.006インチ)[本文]/知財:本体でなく消耗品(替刃)側を物のクレームで独占(US 775,134)[本文]
Teece専有可能性 強・価値を取った側 革新者 補完資産:頁に記載なし(持ち手:不明)
分業と結合不明 頁に記載なし
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:本体を安くして普及させる(loss leader)[本文]/閉じた:替刃(消耗品)の特許[本文]
所有と実行不明 投資の引き受け手:不明/実行の権限:不明
担保の置き場所特許

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=不明 替刃側を物のクレームで押さえ、1903年の51本から1904年の本体9万・替刃200万へ伸びた[本文]
  • 成熟期 噛み合い=不明・束ね=不明 1921年頃の基本特許満了で、本体廉価×替刃反復の型が全面展開した[本文](局面の当てはめは[推論]、担い手は頁にない)

結果 特許有効中は替刃価格を維持し、満了後に本体廉価×替刃反復が全面展開した。プリンタのインク、コーヒーのカプセルへ連なる原型[本文]

戦略への示唆 どの部品を特許で押さえるかでビジネスモデルが決まる。反復消費の点に権利を置き、普及させる側は安く開く(小川 O&C と三つの重心のレンズ)[本文/推論]

実行のときに確かめる問い

  • 反復して買われる点はどこで、請求項はそこに置かれているか
  • 満了の後、反復消費の型を何で続けるか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む

モールス(電信・モールス符号)1840年代〜(特許1840、最高裁判決1854)T5 結節点オープン&クローズ型
丸島:三位一体部分的 事業:遠距離へ瞬時に情報を送る電信で、通信インフラという新市場を開く[本文]。モデルは特許ライセンス+電信会社[本文]/研究開発:レバー式キー・電磁石・記録テープ(点と線を紙に刻む)の実装[本文:図面]/知財:電信の特許(1840, US 1,647)。実装クレームに加え、第8クレームで「電磁力を使って離れた場所に文字を印すこと」全般を狙った。符号は独占せず標準化で普及[本文]
Teece専有可能性 混合・価値を取った側 補完資産の保有者 補完資産:電信網の建設・運営資本(政府補助と民間資本)[本文:Teece 頁](持ち手:電信網を集約した事業者側(後の Western Union 系)[本文:Teece 頁])
分業と結合ライセンス分業 発明者は特許をライセンスし、電信網の建設・運営は電信会社が担った[本文/推論]
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:モールス符号(独占でなく標準化で普及)[本文]/閉じた:電信装置の実装クレーム(有効)[本文]
所有と実行分かれた 投資の引き受け手:電信網の建設・運営資本(政府補助と民間資本)[本文:Teece 頁]/実行の権限:電信網を集約した事業者側(後の Western Union 系)[本文:Teece 頁]
担保の置き場所特許+標準・ルール

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=不明 1840年の特許と電信の実用化で通信インフラという新市場を開き、特許ライセンス+電信会社の形で事業化した[本文](噛み合いの判定は[推論])
  • 成長期 噛み合い=部分的・束ね=分かれた 第8クレームは最高裁(1854)で無効となり、符号は事実上の標準として普及し、価値は電信網を集約した事業者側へ移った[本文](局面の当てはめは[推論])

結果 符号は世界標準になり、価値は電信網を集約した事業者側へ流れた[本文]。原理の独占は退けられ、米国の特許適格性の原点(O'Reilly v. Morse, 1854)になった[本文]

戦略への示唆 相互接続の要は開いて広め、装置は実装に接地したクレームで閉じる。原理そのものを閉じようとすると司法でレジームが崩れる(小川 O&C と Teece のレンズ)[本文]

実行のときに確かめる問い

  • この請求項は実装に接地しているか(原理そのものの独占になっていないか)
  • 相互接続の要になる部分を、囲うか広めるか決めたか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/ティースの専有可能性レジーム — 発明で勝った者が、事業で負けるのはなぜか

AT&T と UNIX(独占禁止の制約から生まれたソースコードの無償提供)不明(記事に年号なし)T6 公共財・コミュニティ型
丸島:三位一体ずれ 事業:AT&T は独占禁止法によって「コンピュータ事業への進出」を禁じられていた[本文]。/研究開発:記事は、UNIX のソースコードを手に入れ改良を重ねた人としてケン・トンプソン、デニス・リッチー、後に続くリーナス・トーバルズを挙げる[本文]。/知財:UNIX のソースコードを大学などの研究機関に無料で提供した[本文]。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 誰も(公共財化) 補完資産:大学・研究機関と、改良を重ねたハッカーたち[本文](持ち手:大学・研究機関[本文])
分業と結合不明 AT&T が開発し、改良は大学・研究機関のハッカーたちへ[本文]
オープン&クローズ開かれてしまった 開いた:UNIX のソースコードを大学などの研究機関に無料で提供[本文]/閉じた:コンピュータ事業(独占禁止で禁じられていた)[本文]
所有と実行分かれた 投資の引き受け手:AT&T(記事は『彼らが開発したOS』と書く)[本文/推論]/実行の権限:AT&T。ただし独占禁止法によってコンピュータ事業への進出を禁じられていた[本文]
担保の置き場所国家(規制)

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=ずれ・束ね=分かれた AT&T は UNIX を開発したが、独占禁止法でコンピュータ事業への進出を禁じられていたため、ソースコードを大学などの研究機関に無料で提供した(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。創造期に束ねが分かれた例で、仮説とは合わない[推論]。
  • 成長期 噛み合い=不明・束ね=不明 ソースコードを手に入れたトンプソン、リッチー、後に続くトーバルズといったハッカーたちがボランティア精神で改良を重ねた、と記事は書く(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。

結果 UNIX は閉じた商品にならず、大学のハッカーたちが改良を重ね、記事はそれが今のインターネットの前提になったと読む[本文]。

戦略への示唆 小川(O&C)から:開く・閉じるの境界は、企業の外(規制・契約)でも引かれる。自ら選んでいない開放が、大きな公共財を生むことがある[推論]。

実行のときに確かめる問い

  • 規制や契約が、自社の成果の開く・閉じるを決めていないか
  • 開いた成果の改良は、だれの手に、どの条件で残るか

出典:幕末の電信機からインターネットまで:通信の歴史を変えた「意外な5つの真実」

PNG(特許を避けて設計された画像形式)1995年1月(設計開始)〜1996年(W3C 勧告)〜2004年(ISO/IEC 15948)〜2025年6月(第3版)T6 公共財・コミュニティ型
丸島:三位一体整合 事業:使用料を求めた GIF に対する、特許フリーの代替[本文]。/研究開発:予測フィルタ(Paeth フィルタは1991年に書籍で公表済み)と DEFLATE(LZ77+ハフマン符号)の二段[本文]。/知財:自前の権利を取るのではなく、他者の特許を侵害しないことを規格に入れる前に確かめた(FTO を前提にした標準化)。LZW を使わず DEFLATE を選び、DEFLATE の仕様書 RFC 1951 は特許で保護された方式を使わずに実装できることを設計目標に明記。公開済みの手法(Paeth)を採用し、後から権利を主張される余地を消した(公開による防衛)[本文]。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 顧客・社会 補完資産:標準化(W3C 勧告、ISO/IEC 15948)と、エンコーダ・デコーダの実装[本文/推論](持ち手:不明(実装する各社・各開発者))
分業と結合水平分業 仕様は復号の仕方だけを決め、フィルタの選び方はエンコーダの裁量にした[本文]
オープン&クローズ開くだけ 開いた:規格そのもの(特許フリー、公開済みの手法)[本文]/閉じた:規格の側では閉じていない。基本方式の特許リスクは実質的に解消し、DEFLATE のハードウェア高速化やエンコーダの最適化の周辺で出願が続く(一般的な動向、個別の公報番号は未確認)[本文]
所有と実行不明 投資の引き受け手:不明(設計した人々と資金の出し手は頁に無い)/実行の権限:規格の設計者(頁に名前は無い)と標準化団体(W3C・ISO/IEC)[本文/推論]
担保の置き場所標準・ルール

局面ごと

  • 転換期 噛み合い=整合・束ね=不明 1994年末に GIF の使用料が求められたのを受け、1995年1月に特許フリーの代替として設計が始まり、1996年に W3C 勧告となって GIF を置き換えた[本文]。再創造は既存の権利者の外のコミュニティが担った(局面の割り当ては推論)[推論]。
  • 成熟期 噛み合い=不明・束ね=不明 基本方式の特許リスクは実質的に解消し、2025年の第3版で APNG と HDR に対応する一方、特許は規格ではなく実装(高速化・エンコーダの最適化)の層に残った(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。

結果 使用料のかからない形式が GIF を置き換え、利益は使う側に広く渡った[本文/推論]。特許は実装の層に残る[本文]。

戦略への示唆 小川(O&C)と Teece から:FTO を設計段階で済ませてから標準化し、公開済みの手法で空白を埋めると、普及後の権利主張を受けない規格になる。規格が決めない層に差別化の余地が残る[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 規格に入れる前に、使う系統の中でも踏まない実装が可能かを確かめたか(FTO を設計段階で)
  • 規格が決めない層(実装・最適化)に、自社の差別化と権利化の余地をどう置くか

出典:PNGは、特許を避けて設計された — 可逆圧縮の仕組みとGIF/LZW騒動

PROFIBUS(フィールドバス戦争と PNO のオープンな標準)1980年代後半〜2000年末(IEC 61158)〜2009年(20周年・3,000万ノード超)T6 公共財・コミュニティ型
丸島:三位一体整合 事業:「No Standard, no market success(標準なきところに市場の成功なし)」。特定企業による独占を退け、1,400社以上が参加する中立的なプラットフォーム PNO(PROFIBUS ユーザー組織)を構築した[本文]。/研究開発:PROFIsafe のブラックチャネル(CRC・タイムモニタリング・メッセージの連続番号で、通信経路を信頼せず末端同士で安全を確かめる)、Ethernet ベースの PROFINET、PROFIenergy[本文]。/知財:特許の記述は記事に無い。国際標準化は、2000年末に8つのタイプを共存させる IEC 61158 という妥協で決着[本文]。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 混在 補完資産:国際標準化の投票(PROFIBUS のシェアが大きい国々の拒否権)、ユーザー組織、ドイツの自動車メーカー団体 AIDA の採用決定[本文](持ち手:PNO の参加企業とユーザー[推論])
分業と結合水平分業 競合する1,400社以上が同じテーブルで「共通の言語」を議論した(競合から協調へ)[本文]
オープン&クローズ開くだけ 開いた:通信規格(PNO の中立的プラットフォーム、IEC 61158)[本文]/閉じた:不明(閉じた部分の記述は記事に無い)
所有と実行分かれた 投資の引き受け手:不明(1,400社以上が参加する PNO の資本の出し手は記事に無い)/実行の権限:中立的なユーザー組織 PNO と、各国の標準化の委員会[本文]
担保の置き場所標準・ルール

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=不明・束ね=不明 1980年代後半、各メーカーの閉じた技術のもとで異なるメーカーの機器をつなげず、『標準なきところに市場の成功なし』が掲げられた(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。
  • 成長期 噛み合い=整合・束ね=分かれた 1990年代のフィールドバス戦争を経て、2000年末に8タイプを共存させる IEC 61158 で決着し、中立の PNO のもとで普及した(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。束ねずに成長した例で、仮説の前提(束ねが成果を生む)そのものに合わない[推論]。
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=分かれた PROFIsafe が AIDA などの全面移行を呼び、PROFIBUS の志は Ethernet ベースの PROFINET、PROFIenergy、無線へ広がった(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。再創造も同じ中立の場の中で起きた[推論]。

結果 2009年時点で3,000万ノードを超え、世界で最も成功したフィールドバスになった、と記事は書く[本文]。国際標準は8タイプの共存という妥協だった[本文]。

戦略への示唆 分業と小川(O&C)から:エコシステムの標準化は個別の技術的卓越に勝る(記事の教訓)[本文]。どこで閉じて利益を取ったかを確かめないと、O&C としての判定はできない[推論]。

実行のときに確かめる問い

  • 標準化で開く層の外側に、自社が閉じて利益を取る層をどこに置くか
  • 国際標準の投票で、どの国・団体が拒否権を持つか

出典:自動化の革命:PROFIBUS 20年の歴史に隠された驚きの真実

SSH(Secure Shell・タトゥ・ユロネン)1995〜2018年(公開1995・OpenSSH 1999・RSA 特許満了2000・RFC 2006・鍵管理特許の登録2018)T6 公共財・コミュニティ型
丸島:三位一体部分的 事業:SSH Communications Security(1995年12月設立)。のちエンタープライズ向けの鍵管理・アクセス管理へ軸足を移す[本文]。/研究開発:大学ネットワークのパスワード盗聴事件をきっかけに、平文の telnet/rlogin を暗号化で置き換える変換層を自作した。解こうとしたのは事業課題ではなく自分たちのネットワークの穴[本文]。/知財:プロトコル本体にはほぼ特許が無く、仕様とコードを無償で公開。下の層は他人の暗号特許(RSA・IDEA)に依存。2001年に商標『ssh』を根拠に OpenSSH へ名称変更を求めたが、標準は『SSH』のまま出版された。普及後の鍵管理で特許(US 10,003,458/US 9,998,497、2018登録、後者の発明者はユロネン本人)[本文]。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 混在 補完資産:エンタープライズ運用(鍵管理・アクセス管理・監査)と、OS への同梱[本文]。(持ち手:標準と配布=OpenSSH(OS に同梱)、運用の層=SSH 社[本文])
分業と結合水平分業 ユロネン=発明と初期の公開。OpenSSH=最後の寛容な版 ssh 1.2.12 からのフォーク、OS 同梱で事実上の標準。IETF=SSH-2 の標準化(RFC 4251〜4254、2006)。SSH 社=エンタープライズ向け鍵管理[本文]。
オープン&クローズ開かれてしまった 開いた:仕様とコードの無償公開(1995)と、IETF での標準化[本文]。/閉じた:版を追うごとに厳しくしたライセンス(→フォーク)、商標『ssh』(取り戻せず)、普及後の鍵管理の特許[本文]。
所有と実行部分的 投資の引き受け手:ユロネンと SSH Communications Security[本文]。資本の出し手は頁に記載なし。/実行の権限:SSH 社(ユロネン)。標準は IETF、事実上の標準は OpenSSH の側[本文]
担保の置き場所特許

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=部分的・束ね=束ねた 1995年7月に SSH-1 を無償公開し、12月に SSH Communications Security を設立した——事業より先に穴を塞ぐ公開があった[本文。判定は推論]。
  • 成長期 噛み合い=ずれ・束ね=部分的 版ごとにライセンスを厳しくした結果、1999年に OpenSSH がフォークされ、2001年の名称変更の要求も通らず、2006年に標準は『SSH』の名で出版された[本文。判定は推論]。
  • 転換期 噛み合い=整合・束ね=束ねた プロトコルが OS 同梱の OpenSSH で公共財になった後、SSH 社は普及が生んだ『鍵の氾濫』の層へ軸足を移し、鍵管理の特許(優先日2011年12月・2018登録)を取った[本文。局面の割り当てと判定は推論]。

結果 プロトコルは公共財(事実上の標準=OpenSSH)となり、SSH 社は普及の副作用(鍵の氾濫)の層で特許を取り、鍵管理製品で収益化した[本文]。

戦略への示唆 Teece+小川 O&C:変換層は普及すれば公共財になり、独占の余地は普及が生んだ後工程に移る。普及の後にどんな問題が生まれ、それを誰が先に書いたかを問う[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 自社の技術が普及したら、どんな新しい問題(管理・監査・来歴)が生まれ、それを誰が先に書くか
  • ライセンスを厳しくしたとき、フォークされる起点の版はどれか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む

コンテナ革命(マルコム・マクリーンと輸送のシステム化)1937年(埠頭の伝説)〜1956年(最初の出航)〜現代T6 公共財・コミュニティ型
丸島:三位一体不明 事業:輸送事業の本当の仕事は船や列車を運航することではなく貨物を運ぶことだ、とマクリーンは理解した(レビンソン『コンテナ物語』の引用)。既存のアイデアを根気よく実用化し、利益を生むビジネスモデルへ[本文]。/研究開発:箱そのものではなく、ガントリ・クレーン、船、トラック、鉄道、それらを制御するコンピューターが一つの自動化システムとして機能すること[本文]。/知財:特許・規格の記述は記事に無い[本文]。不明。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 顧客・社会 補完資産:ガントリ・クレーン、船、トラック、鉄道、配置を計画するコンピューター制御[本文](持ち手:不明(港湾・海運・陸送の各社。記事は個別に書かない))
分業と結合水平分業 不明(マクリーン自身はトラック運送のコストを削るために始めた)[本文]
オープン&クローズ不明 開いた:不明(標準化の記述は記事に無い)/閉じた:不明
所有と実行不明 投資の引き受け手:不明(マクリーンの資金の出し手は記事に無い)/実行の権限:マルコム・マクリーン[本文]
担保の置き場所不明

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=不明・束ね=不明 1956年の最初の出航のころ、専門家の多くはコンテナを『一時しのぎ』『アジア向けでは採算が取れない』と過小評価し、鉄道会社は抵抗した(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。
  • 成熟期 噛み合い=不明・束ね=不明 港は無人の工場のように効率化され、輸送費は取るに足らない要素になり、抵抗した鉄道会社は年間1,400万個のコンテナを運んで生き残った(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。

結果 輸送費が取るに足らない要素になり、世界の生産と貿易の地図が変わった。港湾労働者と港周辺の産業は職と集積を失い、抵抗した鉄道会社はのちに年間1,400万個のコンテナを運んで生き残った[本文]。

戦略への示唆 スミス(市場の広さ)と Teece(システム)から:価値は箱という単体ではなく、つなぎ方を変えるシステムとして再定義したところに生まれ、繋ぐコストの低下が分業の範囲を広げた[本文/推論]。

実行のときに確かめる問い

  • 自社の発明は単体の物か、つなぎ方を変えるシステムか
  • そのシステムが動くために、だれの設備(港・クレーン・陸送に当たるもの)が同時に変わる必要があるか

出典:「ただの鉄の箱」が世界を征服した理由:コンテナ革命に学ぶ5つの衝撃的な真実

内国勧業博覧会と専売特許条例(見せる装置と守る装置、国内に開き国外に閉じる)1877〜1899年T7 国家束ね型
丸島:三位一体整合 事業:殖産興業で得た技術と品を多くの人に見せる。第1回内国勧業博覧会(1877年8月21日〜11月30日、上野公園、大久保利通の建議、1873年ウィーン万博がモデル、六部門、来場45万人超)[本文]。/研究開発:在来技術を新しい素材の弱点に当てる——特許第1号(1885年8月14日、同日7件のうちの第1号)は彫刻家・漆工芸家の堀田瑞松「堀田錆止塗料及ビ其塗法」で、漆の防錆効果を鉄製の船底や機械へ応用した[本文]。/知財:1885年の専売特許条例(4月18日公布)は外国人の出願を受け付けず、国内に開き国外に閉じた。1899年に条約改正を動機として外国人に開いた[本文]。
Teece専有可能性 混合・価値を取った側 追随者・模倣者 補完資産:博覧会という展示・普及の場[推論](持ち手:国家)
分業と結合不明 国家が見せる場(博覧会)と守る制度(条例)を作り、民間が出品し出願した[推論]。
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:博覧会で技術と品を見せた。条例は国内の出願者に開いた[本文]。/閉じた:条例は外国人の出願を受け付けなかった[本文]。
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:国家[本文:大久保利通の建議]/実行の権限:国家(条例は高橋是清らが起草、高橋が初代の局長)[本文]
担保の置き場所国家

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 1877年の内国勧業博覧会で見せ、1885年の専売特許条例で守り、外国人の出願は受け付けなかった[本文]。
  • 転換期 噛み合い=ずれ・束ね=束ねた 1899年、領事裁判権等をめぐる不平等条約の改正合意を前提に三条例を改正しパリ条約に加盟し、Open と Close の使い分けが崩れた[本文]。

結果 模倣が合法だった時代に、生糸で稼いだ外貨が機械の輸入と条約改正の交渉力を支えた[本文:送電インフラ §4]。

戦略への示唆 O&C のレンズから:「見せなければ広まらないが、見せれば真似される」同時性は140年変わらず、変わったのは担保をどこに置くかと、閉じる相手の分解能(外国人一般→相手ごと・国ごと・工程ごと)である[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 見せる場(展示・標準・公開)と守る装置(出願・秘匿)を、同じ時期に一組で設計しているか
  • 閉じる相手は誰か——相手ごと・国ごと・工程ごとに分けたか

出典:見せることと、守ること — Open & Close は明治から続いている/送電インフラと工業所有権 — 担保はどこにあったか/分業と結合の系譜 — オープンアーキテクチャは、どの理論の上に立っているか

大英帝国の海底ケーブル網(ガタパーチャと情報の覇権)19世紀後半〜1900年ごろT7 国家束ね型
丸島:三位一体不明 事業:海底ケーブル網で情報の拠点を押さえる=情報の覇権[本文]/研究開発:不明/知財:特許の記述は記事に無い。絶縁材ガタパーチャ(天然樹脂)を用いた海底ケーブル網を独占した[本文]。
Teece専有可能性 強・価値を取った側 補完資産の保有者 補完資産:絶縁材(ガタパーチャ)と、世界の中継拠点(アデンなど)[本文](持ち手:英国[本文])
分業と結合垂直統合 他国は自国の通信を他国経由に頼った(スペインは米西戦争時に米国経由に頼り連絡を絶たれた)[本文]
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:不明/閉じた:ケーブル網と中継拠点(インフラの独占)[本文]
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:英国(記事は国として書き、資本の出し手の内訳は無い)[本文]/実行の権限:英国[本文]
担保の置き場所国家

局面ごと

  • 成熟期 噛み合い=不明・束ね=束ねた 19世紀後半、英国はガタパーチャで絶縁した海底ケーブル網を独占し、アデンなどの拠点で他国の外交電報を検閲・解読した(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=不明 この独占を破るために、ドイツ・米国・日本は無線通信という新技術に賭けた(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。再創造は独占の外の国々が担った[推論]。

結果 英国が情報の覇権を握り、独占を破るためにドイツ・米国・日本は無線通信に賭けた[本文]。

戦略への示唆 Teece(補完資産)と担保の置き場所から:繋ぐ層(インフラ)を握る者が情報を握り、その独占は別方式(無線)への投資を招く[本文/推論]。

実行のときに確かめる問い

  • 自社の通信・物流・データは、他者が握る中継点を通っていないか
  • 相手のインフラの独占を、別方式で迂回できるか

出典:幕末の電信機からインターネットまで:通信の歴史を変えた「意外な5つの真実」

官営八幡製鉄所(設計どおりのドイツ式高炉の吹き止まりと、野呂景義による作り直し)1901年T7 国家束ね型
丸島:三位一体ずれ 事業:製鉄国になる——八幡製鉄所を建てれば日本は製鉄国になれた[本文:鉄鋼型の構造]。/研究開発:ドイツ人技師の設計どおりの高炉が吹き止まり操業停止。帝大の野呂景義が呼び戻され、大冶の鉱石と筑豊の石炭という日本の原料の実態に合わせてコークス配合と炉体を作り直し再稼働させた[本文]。/知財:不明(頁に記述なし)
Teece専有可能性 不明・価値を取った側 顧客・社会 補完資産:日本の原料に合わせた設計と操業の知(大学という別クラスタから来た人)[本文](持ち手:帝国大学(野呂景義)[本文])
分業と結合垂直統合 設計はドイツ人技師、原料は大冶と筑豊、現場適応は帝大の野呂景義[本文]。
オープン&クローズどちらでもない 開いた:不明/閉じた:不明
所有と実行部分的 投資の引き受け手:国家(官営)[本文]/実行の権限:官営八幡製鉄所。再稼働は呼び戻された帝大の野呂景義が担った[本文]
担保の置き場所国家

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=ずれ・束ね=部分的 1901年、ドイツ人技師の設計どおりの高炉が吹き止まり、帝大の野呂景義が日本の原料に合わせてコークス配合と炉体を作り直して再稼働させた[本文]。

結果 再稼働し、形式知の移送だけでは足りず現場適応が要ることを最初に学んだ産業事件として記録される[本文]。

戦略への示唆 所有と実行・Teece のレンズから:資本と権限を国家が束ねても、輸入した設計を自分の原料に合わせて書き換えられる人を呼べなければ解にならない。設計すべきは「何本繋ぐか」ではなく「誰を翻訳者に置くか」[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 輸入した設計が前提にする原料・条件を、自社の実態と突き合わせたか
  • 社内で解けないとき、別のクラスタ(大学など)の誰を呼び戻せるか

出典:新産業が生まれる条件 ― 明治〜昭和の事例ライブラリ/反射炉 — 設計図は渡った。渡らなかったものは何か/見せることと、守ること — Open & Close は明治から続いている/LD転炉と戦後日本の技術導入 — 買い手の交渉力は、どこから来たか/鉄鋼型の構造 — 何が国策物資を作るのか

幕末諸藩の反射炉(蘭書一冊からの築炉と、鉄製大砲の苦戦)1850〜1860年代(欧州側の前史は17〜18世紀)T7 国家束ね型
丸島:三位一体ずれ 事業:鉄製大砲の鋳造。1853年の黒船来航のあと、幕府は自前で作らず実績のある佐賀藩に江戸湾の砲台用の鉄製大砲を発注した[本文]。/研究開発:ヒュゲーニンの書(1826年)の邦訳だけを頼りに、現物も技師も見ないまま耐火煉瓦を焼き炉を積んだ[本文]。大島高任は炉を改良するのではなく原料へ遡り、釜石で西洋式高炉の建設に取り組んだ[本文]。/知財:特許制度(1885年)以前の事例で、権利化は該当しない[推論]。公刊された書物という形式知を使った[本文]。
Teece専有可能性 混合・価値を取った側 補完資産の保有者 補完資産:ヨーロッパの高炉が作る銑鉄(原料)と操業の身体知、耐火煉瓦[本文](持ち手:ヨーロッパの製鉄業(原料の前提)。日本のたたら銑は燐と硫黄が少ない長所を持つが、砲身に要る均一さという性質とは噛み合わなかった[本文])
分業と結合垂直統合 藩が築炉・操業を自前で担い、原料は在来のたたら銑に頼った。幕府は佐賀藩に発注し、佐賀藩は韮山・萩を支援した[本文]。
オープン&クローズ開くだけ 開いた:欧州側は製法を書物で公刊しており、日本側では佐賀藩が他藩へ知識を渡した[本文]。/閉じた:意図して閉じたものは頁にない。結果として渡らなかったのは原料と操業の身体知[本文]。
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:藩(佐賀藩ほか)と幕府[本文]/実行の権限:藩主と技術者[本文]
担保の置き場所なし

局面ごと

  • 成長期 噛み合い=不明・束ね=不明 欧州では18世紀に鋳物用の再溶解炉として普及し、1766年のクラネッジ兄弟の特許は商業採用の形跡がなく、1784年にコートのパドル法が錬鉄の量産を可能にした[本文]。
  • 創造期 噛み合い=ずれ・束ね=束ねた 1850〜1857年、佐賀・韮山・薩摩・萩が蘭書の邦訳から反射炉を築き、炉は建ったが鉄製大砲は割れ続け、技術は青銅砲の段階で停滞した[本文]。
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=不明 1860年代以降、反射炉はベッセマー転炉に主役を譲るが、構造は1864年のシーメンス・マルタン平炉に受け継がれ、1960年代まで製鋼の中心に残った[本文]。

結果 炉は建ったが鉄製大砲は割れ続け、日本は青銅砲の段階で停滞した[本文]。

戦略への示唆 Teece・補完資産のレンズから:技術移転がつまずくのは、移した技術そのものではなく、その技術が暗黙に前提していたもの(原料・身体知)が一緒に渡らなかったときである。移す側は前提を意識せず、受け取る側は書かれていないものに気づけない[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 導入する技術が暗黙に前提している原料・設備・操業を、出し手に書き出してもらったか
  • 律速はどこか——装置か、そこに入れる材料か

出典:反射炉 — 設計図は渡った。渡らなかったものは何か/見せることと、守ること — Open & Close は明治から続いている

日本の機関車国産化(輸入の時代から9600形・8620形の量産まで)1872年(新橋〜横浜の開業)〜1893年(国産第1号)〜1913〜14年(国産化の確立)T7 国家束ね型
丸島:三位一体整合 事業:国家として鉄道を建設(1869年に決定)し、資金・技術・資材のほとんどを英国に頼って1872年に開業。約40年は機関車を輸入に頼り、1913〜14年に国内設計・国内量産の標準機で国産化を確立した[本文]。/研究開発:組み立て(1893年、神戸工場の860形。主要部品は輸入)→民間メーカーの量産(1902年ごろ汽車製造の230形)→国内設計(1911年の6700形)→英独米の最新大型機を見本輸入して国内メーカーに模倣製作させる(1911〜12年)→9600形(1913年)・8620形(1914年)を数百両規模で量産[本文]。/知財:熱効率を高める過熱器は、ドイツの特許技術として輸入機とともに入ってきた。見本輸入は最新技術を実物から習得する狙いだった[本文]。特許をどう扱ったか(ライセンスの有無など)は頁に無い。
Teece専有可能性 不明・価値を取った側 混在 補完資産:鉄鋼材料(ボイラー用鋼板・車軸・タイヤ・煙管)、大型の鋳造・鍛造と工作機械、ボイラー製作の品質、設備投資を回収できる需要の規模[本文](持ち手:国家(八幡製鉄所、国有鉄道)と民間メーカー[本文])
分業と結合垂直統合 当初は英国(官設鉄道)・米国(北海道・私鉄)・ドイツ(九州鉄道)から輸入。のちに国内で設計し国内メーカーが量産[本文]
オープン&クローズどちらでもない 開いた:不明/閉じた:関税自主権の回復(1911年)で、輸入機関車に関税をかけられるようになった(産業保護)[本文]
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:国家:明治政府が1869年に建設を決め、開業時は資金・技術・資材のほとんどを英国に頼った[本文]。のちに鉄道国有法で主要私鉄17社を買収し(1906〜07年)、官営八幡製鉄所が1901年に操業[本文]。民間では汽車製造(1896年、創業者は井上勝)[本文]。/実行の権限:国家(官設鉄道・国有鉄道)と民間の機関車メーカー[本文]
担保の置き場所国家

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=不明・束ね=分かれた 1869年に建設を決め、英国人技師モレルの指導で1872年に開業したが、資金・技術・資材のほとんどは英国に頼った(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。決めた主体(政府)と資本・技術の出し手(英国)が分かれており、仮説(創造期に束ねが実現しやすい)とは合わない[推論]。
  • 成長期 噛み合い=ずれ・束ね=分かれた 1880〜90年代の私鉄ブームで路線が広がる一方、私鉄ごとに英米独から多形式を少数ずつ輸入し、1893年に組み立ては実現しても国内メーカーが投資を回収できる需要がなかった[本文]。
  • 転換期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 1906〜07年の国有化で発注者を一本化し、八幡製鉄所・関税自主権の回復(1911年)・見本輸入(1911〜12年)を経て、1913〜14年に9600形・8620形の国内設計・国内量産で国産化を確立した(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。束ね直したのは国家で、仮説の『転換期に外から束ね直される』に近いが、『外』は事業者ではなく国家だった[推論]。

結果 約40年は英米独のメーカーが輸出で供給し、1913〜14年に国内設計・国内量産の標準機で国産化が確立。以後、幹線用の蒸気機関車は原則として輸入されなくなった[本文]。

戦略への示唆 スミス(分業は市場の広さに制限される)から:国産化の最大の壁は技術より市場構造で、需要の一本化が国内の製造を成り立たせた[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 自前で作るのに要る需要の規模(設備投資を回収できる量)は、どこで一本化できるか
  • 見本を入れて学ぶとき、他者の特許技術(過熱器のような)をどう扱うか

出典:鉄道の発明と歴史 — 日本での機関車国産化まで

鉄鋼型の構造(国策物資としての一貫製鉄所と、半導体型との分岐)20世紀(比較対象として21世紀の先端半導体・AI計算基盤)T7 国家束ね型
丸島:三位一体不明 事業:原料が遍在し生産が集約する財では、工程を持つこと自体が優位になり、しかも工程は国家が意図的に作れる——だから国策化する[本文]。/研究開発:鉄鋼の技術は枯れており、高炉は改修を挟んで数十年使う[本文]。/知財:頁は鉄鋼の知財を扱っていない(不明)。頁が引く Sutton(1991)は鉄鋼を外生的サンクコスト(設備)の典型、製薬・半導体・ソフトウェアを内生的サンクコスト(研究開発・広告)に置く[本文]。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 誰も(公共財化) 補完資産:極大の最小効率規模(一貫製鉄所は国家的資本)[本文](持ち手:国家)
分業と結合垂直統合 各国が工程そのもの(一貫製鉄所)を自国に持った[本文から推論]。
オープン&クローズ開かれてしまった 開いた:意図して開いたものは頁にない。技術が枯れ、後発国が追いつけた[本文]。/閉じた:資本の壁[本文]。
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:国家(一貫製鉄所は国家的資本)[本文]/実行の権限:国家
担保の置き場所国家

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=不明・束ね=束ねた 製鉄所を持つことが主権の証明だと20世紀の各国は信じ、八幡製鉄所を建てれば日本は製鉄国になれた[本文]。
  • 成長期 噛み合い=不明・束ね=束ねた 陳腐化が遅いため後発国が追いつけた[本文]。
  • 成熟期 噛み合い=不明・束ね=不明 追いついた結果として過剰能力と通商摩擦が生じ、「みんなが持てるようになった結果、誰も儲からなくなった」[本文]。

結果 後発国が追いつき、過剰能力と通商摩擦の中で誰も儲からなくなった[本文]。

戦略への示唆 Teece・所有と実行のレンズから:参入障壁が資本の壁か時間の壁かで、追いつけるか独占が固定するかが反対側に着地する。相手が握っているのが産地か工程かを見誤ると、対策の置き場所を丸ごと間違える[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 自社が参入障壁だと思っているものは、資本の壁か時間の壁か
  • 相手(国・企業)が握っているのは産地か工程か

出典:鉄鋼型の構造 — 何が国策物資を作るのか

GIF と LZW 特許(Unisys と CompuServe のライセンス方針・GIF 騒動)1983年出願・1985年登録(US 4,558,302)〜1994年12月末(ライセンス方針の発表)〜2003年6月(米国で満了)・2004年(他国で満了)T8 分離・漂流型
丸島:三位一体不明 事業:Unisys の事業構想は頁に無い。CompuServe は1987年に GIF を公開し、圧縮方式に LZW を採用した[本文]。/研究開発:Welch の LZW[本文]/知財:LZW 特許 US 4,558,302(のちに Unisys が保有)。1994年12月末、Unisys と CompuServe が GIF のライセンス方針を発表し、GIF を扱うソフトに LZW の使用料がかかることになった[本文]。
Teece専有可能性 強・価値を取った側 混在 補完資産:GIF という普及した形式(CompuServe が公開)[本文](持ち手:形式は CompuServe、特許は Unisys[本文])
分業と結合ライセンス分業 形式の公開は CompuServe、圧縮方式の特許は Unisys[本文]
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:GIF の形式の公開(1987年)[本文]/閉じた:圧縮方式 LZW の特許[本文]
所有と実行分かれた 投資の引き受け手:不明/実行の権限:形式は CompuServe、特許の保有と行使は Unisys、ライセンス方針は両社が発表[本文]
担保の置き場所特許

局面ごと

  • 成長期 噛み合い=不明・束ね=分かれた CompuServe が1987年に圧縮方式に LZW を採用した GIF を公開し、GIF は普及した。LZW の特許は別の会社(のちに Unisys)が持っていた(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。
  • 成熟期 噛み合い=不明・束ね=分かれた 1994年12月末に Unisys と CompuServe が GIF のライセンス方針を発表し、GIF を扱うソフトに使用料がかかる『GIF 騒動』が起きた[本文]。
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=不明 使う側は特許フリーの PNG へ移り、LZW 特許は2003年(米国)・2004年(他国)に満了した[本文]。再創造は権利者の外で起きた[推論]。

結果 1994年末に使用料が求められ「GIF 騒動」が起き、特許フリーの PNG が設計されて置き換えが進んだ。LZW 特許は2003年(米国)・2004年(他国)に満了した[本文]。

戦略への示唆 Teece と小川(O&C)から:普及後の権利行使は使う側に最も対応しにくいが、代替の標準を設計させる動機にもなる[本文/推論]。

実行のときに確かめる問い

  • 自社が使う標準の中核に、まだ主張されていない特許が眠っていないか
  • 普及した後に権利を主張したとき、代替の規格が作られる余地はどれだけあるか

出典:PNGは、特許を避けて設計された — 可逆圧縮の仕組みとGIF/LZW騒動

おサイフケータイ 遠隔ロック(NTTドコモ→Google)1999〜2017年(優先日1999・拒絶査定2005・US 登録2007・Google 譲渡2016)。FeliCa は1988年〜T8 分離・漂流型
丸島:三位一体部分的 事業:携帯を決済端末に変えるプラットフォーム。2004年、FeliCa Networks(ソニー+ドコモの合弁)とおサイフケータイで「端末・課金・決済」の垂直統合を完成させた[本文]。/研究開発:紛失・盗難時に、金融機関を介さずネットワーク側から端末の金融機能を遠隔で無効化する安全網(発明者 夏野剛)[本文]。非接触 IC(後の FeliCa)はソニーが1988年に開発に着手[本文]。/知財:日本出願(特開2001-168980)は2005年に拒絶査定、米国で US 7,231,202 として成立(2007)。2016年に Google へ譲渡(2017 Google LLC へ)[本文]。
Teece専有可能性 混合・価値を取った側 補完資産の保有者 補完資産:端末・課金・決済インフラ(FeliCa Networks・ドコモの網)と、国際標準(NFC)。のちにスマートフォン OS[本文:時価総額の頁・note]。(持ち手:国内はソニー・ドコモ(FeliCa Networks、2005年に JR東日本も出資)。2016年以降、世界標準の端末側では Apple(iPhone 7 日本発売モデルが FeliCa 搭載)。権利は Google[本文]。)
分業と結合協業・合弁 ドコモ=網・課金。ソニー=非接触 IC(FeliCa)。FeliCa Networks(合弁)=決済基盤。金融機関=金融サービス[本文]。
オープン&クローズ閉じるだけ 開いた:国際標準化を試みたが否決され、のち NFC 規格(ISO/IEC 18092)に NFC-F として収容された[本文]。/閉じた:端末・課金・決済インフラを合弁で握る。遠隔ロックの基本特許(米国)[本文]。
所有と実行部分的 投資の引き受け手:ソニーとドコモ(FeliCa Networks の合弁。2005年に JR東日本も出資)[本文]。出資比率は頁で未確認とされている[本文]。/実行の権限:FeliCa Networks(合弁)とドコモ[本文]
担保の置き場所特許+資本

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=不明・束ね=不明 ソニーが1988年に非接触 IC の開発に着手し、1999年に夏野剛を発明者とする遠隔ロックの優先日を取った[本文]。
  • 成長期 噛み合い=部分的・束ね=束ねた 2004年に FeliCa Networks を合弁で設立しおサイフケータイを始めた一方、国際標準化に失敗し、2005年に遠隔ロックの日本出願は拒絶査定になった[本文。噛み合いの判定は推論]。
  • 成熟期 噛み合い=ずれ・束ね=分かれた 2016年、遠隔ロックの米国特許は Google へ譲渡され、同じ年に iPhone 7 日本発売モデルが FeliCa を載せた=権利と規格は外の端末・プラットフォーマーの側に取り込まれた[本文。局面の割り当てと判定は推論]。

結果 国内ではソニー・ドコモが FeliCa Networks で端末・課金・決済を統合した。遠隔ロックの権利は日本で拒絶、米国で成立し、2016年に Google へ渡った[本文]。誰がいくら稼いだかは頁に無い。

戦略への示唆 丸島+Teece:同じ発明でも国で権利化の成否が変わり、権利は事業から独立して移転しうる。所有と実行:合弁で束ねた決済基盤と、事業の外へ出た権利が入れ子になり、権利の所在と価値の所在がずれた[本文+推論]。

実行のときに確かめる問い

  • この発明の権利化を、事業を展開する国と、価値が集まる側の国の両方で確かめたか
  • 閉じて完成させる設計にしたとき、国際標準と端末側に取り込まれる道を残したか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/時価総額クロスオーバー — FeliCa Networksが完成した年、資本市場は水平分業を選んだ/2003年、iモード特許担当だった自分へ ── 23年遅れの返信としての suiP BEST AWARD/鍵が「消える」24年間の軌跡:2002年の予測から2026年のスマート社会へ

ブラウザ戦争(ネットスケープ対マイクロソフト、Mozilla の公開)1994年4月(ネットスケープ創業)〜1995年12月7日(マイクロソフトの宣言)〜1998年(Mozilla)〜2006年(シェア1%未満)T8 分離・漂流型
丸島:三位一体不明 事業:ネットスケープ:新市場への迅速な参入、一般インターネットからイントラネット・エクストラネットへの焦点移動、ウェブを摩擦のない配信チャネルにする(ジュードー戦略)。マイクロソフト:全製品にインターネット機能を統合し、IE を無料で提供、OS の独占的な地位を活用(相撲戦略)、のちに高速反復開発も取り入れたハイブリッド[本文]。/研究開発:高速反復開発とベータテスト[本文]/知財:特許・契約の記述は記事に無い。1998年にネットスケープが Communicator 5.0 のソースコードを公開し Mozilla プロジェクトを立ち上げた(コードは最終的にリリースされず、Gecko をもとに書き直された)[本文]。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 補完資産の保有者 補完資産:OS(Windows)とその独占的な地位、ブラウザと OS の抱き合わせ[本文](持ち手:マイクロソフト[本文])
分業と結合垂直統合 ネットスケープはブラウザとサーバーの専業、マイクロソフトは OS とブラウザを統合[本文]
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:マイクロソフト:IE の無料提供(無償化)。ネットスケープ:1998年のソースコード公開とオープンスタンダードへの回帰[本文]/閉じた:マイクロソフト:OS の独占的な地位[本文]
所有と実行部分的 投資の引き受け手:マイクロソフト:既存事業の上で IE を無料にし、全製品にインターネット機能を統合した(投資の額は記事に無い)[本文/推論]。ネットスケープの資本の出し手は記事に無い。/実行の権限:マイクロソフトはビル・ゲイツ、ネットスケープは CEO のジム・バークスデール[本文]
担保の置き場所なし(担保は OS という補完資産)

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=不明・束ね=不明 1994年4月にネットスケープが創業し、Navigator がインターネットの代名詞になった(ジュードー戦略)(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。
  • 成長期 噛み合い=ずれ・束ね=分かれた 企業向け売上が伸びる一方、組織は高速開発の文化のままで、営業とマーケティングの確執が意思決定を止め、マイクロソフトが IE の無料化と OS との抱き合わせで追いついた[本文]。食い違ったのは事業と開発・組織で、知財の材料は記事に無い[推論]。
  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=不明 1998年、シェアが流出する中で Communicator 5.0 のソースコードを公開し Mozilla を立ち上げ、のちに Gecko をもとに全面的に書き直した(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。外から束ね直されたかは記事に無い。

結果 ネットスケープは史上最速成長の記録を作ったがブラウザのシェアを失い、OS を持つマイクロソフトがブラウザ市場を取った[本文/推論]。

戦略への示唆 Teece(補完資産)と小川(O&C)から:専有可能性が弱い製品は、補完資産を持つ相手が無償化で取り込みにくる。開くなら、優位のあるうちに何を閉じたまま開くかを決めておく[推論]。

実行のときに確かめる問い

  • 自社の製品が、相手の補完資産(OS・販路)に無償で組み込まれたとき、何が残るか
  • 開く(ソース公開・標準)なら、いつ、何を閉じたまま開くかを、シェアのあるうちに決めたか

出典:巨人が目覚めた日:ネットスケープvsマイクロソフト「ブラウザ戦争」から学ぶ5つの戦略レッスン

活版印刷(グーテンベルク)1450年代〜(制度は1469〜1710)T8 分離・漂流型
丸島:三位一体ずれ 事業:写本に代えて複製のコストを桁違いに下げ、42行聖書を完成させた[本文]。事業として何で勝とうとしたかの記述は頁にない(不明)/研究開発:可動活字と印刷機[本文]/知財:当時のヨーロッパに特許制度がまだなく、権利化の選択肢そのものが存在しなかった[本文]
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 補完資産の保有者 補完資産:資本・工房・販売網[本文:Teece 頁](持ち手:出資者ヨハン・フスト[本文])
分業と結合協業・合弁 発明と印刷は発明者、資本は出資者が担った[本文]
オープン&クローズ開かれてしまった 開いた:意図した開放はない。技術は職人の移動とともに拡散した[本文]/閉じた:閉じる手段(制度)はまだなかった[本文]
所有と実行分かれた 投資の引き受け手:出資者ヨハン・フスト[本文]/実行の権限:印刷と42行聖書の完成は発明者[本文]。訴訟後は設備が出資者の手に[本文]
担保の置き場所資本

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=ずれ・束ね=分かれた 42行聖書は完成したが、出資者との訴訟(1455)に敗れ印刷設備を失い、事業も権利も発明者の手元に残らなかった[本文]
  • 成長期 噛み合い=不明・束ね=不明 技術は職人の移動とともに拡散し1500年までに欧州の主要都市へ広がった[本文]。誰の事業として育ったかは頁にない

結果 出資者が回収し、発明者は設備を失った[本文]。技術は欧州に広がり、制度は約260年かけて印刷特権から著者の権利(アン法)へ整った[本文]

戦略への示唆 制度の受け皿がないとき、価値は補完資産(資本・工房)を持つ側に回収され、分かれ目は契約の設計になる(Teece/所有と実行のレンズ)[本文/推論]

実行のときに確かめる問い

  • 出資契約で、設備と成果の帰属をどちらに置いているか(争いになったとき発明者に何が残るか)
  • いま制度の受け皿がない成果を、何で担保しているか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/ティースの専有可能性レジーム — 発明で勝った者が、事業で負けるのはなぜか/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む

Overture/GoTo.com(検索連動広告)1999〜2004年(出願1999・改称2001・提訴2002・Yahoo 買収2003・和解2004)T9 発見先行・当事者不在型
丸島:三位一体ずれ 事業:検索結果に入札順で広告を並べ、クリック課金(PPC)とリアルタイム入札で稼ぐ=現代のネット広告の原型[本文]。/研究開発:PPC とリアルタイム入札の仕組み[本文]。/知財:本命の PPC・リアルタイム入札は、IPO 準備時(2000)に既に on-sale bar(販売から1年ルール)に抵触し出願できなかった。取れたのは周辺の bid for placement 特許 US 6,269,361 のみで、それを係争の梃子に転用し2002年に Google(AdWords)を提訴した[本文]。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 混在 補完資産:検索の利用者を持つ検索エンジン[推論。頁に明記なし](持ち手:不明(頁には係争相手の Google と買収者の Yahoo が出るだけ))
分業と結合不明 GoTo.com が広告の掲載・入札・課金の仕組みを担った。2003年に Yahoo が買収した[本文]。他の工程の分担は頁に無い。
オープン&クローズ開かれてしまった 開いた:意図せず——本命は出願前の販売・実施で世に出てしまい、1年ルールで権利化の道が閉じた[本文]。/閉じた:周辺の bid for placement 特許(US 6,269,361)のみ[本文]。
所有と実行不明 投資の引き受け手:GoTo.com/Idealab(Bill Gross)[本文の表記から推論]。資本構成は頁に記載なし。/実行の権限:GoTo.com→Overture(2001改称)→Yahoo(2003買収後)[本文]
担保の置き場所特許

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=ずれ・束ね=不明 PPC とリアルタイム入札という原型を作ったが、本命は販売から1年を過ぎて出願できなかった[本文]。
  • 成長期 噛み合い=ずれ・束ね=不明 IPO 準備(2000)と改称(2001)を経て周辺特許で2002年に Google を提訴し、2003年に Yahoo が約16.3億ドルで買収、2004年に IPO 直前の Google が270万株を発行して永久ライセンスを得る和解で終わった[本文。局面の割り当ては推論]。

結果 GoTo/Overture は Yahoo に約16.3億ドルで買収され、周辺特許の和解で Google から270万株を得た。本命の権利は取れなかった[本文]。

戦略への示唆 丸島:事業と研究開発が本命を向いていても、知財の時計(1年ルール)を外すと三位一体が崩れる。所有と実行:資本市場の時計(IPO 準備)と権利の時計は別に進む[本文+推論]。

実行のときに確かめる問い

  • 本命の機能を公開・販売・IPO 準備で外に出す前に、出願を済ませたか(各国の猶予期間はいつ切れるか)
  • 取れた周辺特許は、本命の何を押さえ、何を押さえていないか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/発明の選び方 — イシュー度×解の質に、特許にしかない軸を足す

PCR(ポリメラーゼ連鎖反応・Cetus からロシュへの権利売却)1983年(着想)〜1993年(ノーベル化学賞)、1991年に権利売却(報道)T9 発見先行・当事者不在型
丸島:三位一体不明 事業:頁は硤合反応との比較の範囲でしか PCR を書いておらず、権利者の事業構想は書かれていない[本文]。不明。/研究開発:不明(頁にあるのは着想が1983年という点だけ)[本文]/知財:PCR の権利は1991年に Cetus 社からロシュ社へ3億ドルで売却されたと報じられている(当時の報道の原文は未確認)[本文]。権利の中身(クレーム)は頁に無い。
Teece専有可能性 強・価値を取った側 不明 補完資産:繰り返し買われる物=耐熱性の酵素、装置、試薬キット[本文](持ち手:不明(酵素・装置・キットをだれが売ったかは頁に無い))
分業と結合ライセンス分業 権利は Cetus 社からロシュ社へ移った(報道)[本文]。それ以外の工程の分担は頁に無い。
オープン&クローズ不明 開いた:不明/閉じた:増幅の方法の権利(売却の対象になった)[本文]
所有と実行不明 投資の引き受け手:不明(着想から事業化までの投資を誰が引き受けたかは頁に無い)。1991年に権利を3億ドルで買ったロシュ社は、権利の買い手として対価を払った(報道)[本文/推論]。/実行の権限:不明
担保の置き場所特許

局面ごと

  • 成長期 噛み合い=不明・束ね=不明 研究・診断・鑑定の現場で日常的に使われ、酵素・装置・キットが買われ続けるなかで、1991年に権利が Cetus 社からロシュ社へ3億ドルで売却されたと報じられる(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。

結果 Cetus 社が権利を3億ドルでロシュ社に売却したと報じられる(原文未確認)。その後だれがどれだけ稼いだかは頁に無い[本文]。

戦略への示唆 Teece と丸島から:原理の新しさと、それを毎日使う人がいるかは別の問い。繰り返し買われる物(消耗品・装置)に届く技術は、科学の評価を待たずに市場が価値を見つける[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • この原理で、誰が何を繰り返し買うのかを一行で言えるか
  • 科学の時計(評価の時期)と特許の時計(存続期間)は重なっているか

出典:PCR は3億ドル。硤合反応は権利ゼロ。同じ「増幅」で何が違った?/ノーベル賞級の発見は、なぜ特許として残らなかったのか — 硤合反応の4件の出願から、発見を事業につなぐ条件を考える

ハイパーネット(板倉雄一郎)1996〜2001年(HotCafe 1996・出願1997・自己破産1997・特許の買収1999・登録2001)T9 発見先行・当事者不在型
丸島:三位一体部分的 事業:ブラウザ最前面にプロフィールに応じた広告ウィンドウを出し、広告料でプロバイダ料金を無料化する(HotCafe、1996、アスキー提携)=ユーザー無料・広告主課金の両面市場[本文]。/研究開発:プロファイル連動配信、閲覧量に応じたパラメータ、利用者がアクティブでなければカウントを止める判定(インプレッション課金の原型)[本文]。/知財:広範なビジネスモデル特許群を多国出願(日/米/欧/中/香/加の6系統+約200サブクレーム)。登録は特許第3245425号(2001)[本文]。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 混在 補完資産:事業を続ける資金と、広告主・利用者の両面を集め続ける運営[推論。頁はアスキー提携と負債37億円での自己破産を書く](持ち手:不明)
分業と結合不明 ハイパーネット=広告配信システムと ISP の無料化。HotCafe はアスキーとの提携[本文]。
オープン&クローズ開いて閉じる(O&C) 開いた:利用者側のプロバイダ料金を広告料で無料化した[本文]。/閉じた:広範なビジネスモデル特許群の多国出願[本文]。
所有と実行束ねた 投資の引き受け手:ハイパーネットと板倉個人——倒産の下振れを会社(1997-12 自己破産、負債37億円)と個人(1998-01 自己破産)の両方が負った[本文]。資本の出し手は頁に記載なし。/実行の権限:板倉雄一郎(ハイパーネット)[本文]
担保の置き場所特許

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=整合・束ね=束ねた 1996年に HotCafe をアスキー提携で始めてビジネスモデル特許群を6系統で多国出願したが、1997年12月に自己破産した(BCG ダイヤモンドの創造期の淘汰)[本文。噛み合いと束ねの判定は推論]。

結果 ハイパーネットは1997年に自己破産、特許は1999年にインターキュー(現 GMO)が買収した。事業は消えても権利は資産として残った[本文]。

戦略への示唆 丸島+時間(L2-e):早すぎた発明は、事業が権利に追いつかない。所有と実行:一人に束ねても、事業が続く時間を資本で支えられなければ権利は事業の外で活きる——誰が拾い、いつ活きるかまで設計に含める[本文+推論]。

実行のときに確かめる問い

  • 権利が成立する時点で、事業はまだ続いているか(権利化までの年数と資金の持続年数を並べたか)
  • 事業が止まったとき、この権利を誰に渡せば活きるか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/発明の選び方 — イシュー度×解の質に、特許にしかない軸を足す

硤合反応(不斉自己触媒・日本出願4件)1995〜2026年(出願1995・1996・1999・2010年/ノーベル化学賞2026年)T9 発見先行・当事者不在型
丸島:三位一体不明 事業:出願人(1995〜99年の3件は日本サーファクタント工業、2010年の1件は東京理科大学)がこの発明でどんな事業に勝とうとしたかは、頁に書かれていない。頁は「出願人がそう判断した理由は公開されていません」とする[本文]。不明。/研究開発:硤合憲三氏ほかの研究室が、繰り返すほど純度が上がる不斉自己触媒(1995年の Nature 論文)、キラルなものを加えずに偏りが生まれ増幅されること(2003年)、水晶・電場をかけた結晶の存在下での作り分けへと研究を積んだ。強さの源は教員・学生・共同研究者の「コンビネーション」だった[本文]。/知財:日本だけに4件を出願(特開平9-25269・特開平9-268179・特開2000-302763・特許5557278)。3件は審査請求をせずみなし取下げ、2014年に登録された特許5557278も2019-06-13に特許料不納で消滅。外国出願はない[本文]。公開公報は先行技術・発見の日付の記録として残り、硤合氏は2019年の解説記事の文献欄に挙げている[本文]。
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 誰も(公共財化) 補完資産:製造法として使うなら医薬・農薬メーカーへの販路とスケールアップの設備、道具として使うなら試薬の販売網や分析機器・分析サービス[本文](持ち手:出願人の資産(界面活性剤などを作る会社)が不斉合成の用途にどれだけ合っていたかは公開情報からは分からない[本文])
分業と結合不明 研究室が発見し論文で公開、出願は企業(初期3件)と大学(2010年)。製造・販売を担う相手は頁に出てこない[本文]
オープン&クローズ開くだけ 開いた:1995年の Nature 論文で条件と結果を公開。公開公報も先行技術として残った[本文]/閉じた:物(光学活性ピリミジルアルキルアルコール)・製法などの日本出願。権利としては残っていない[本文]
所有と実行分かれた 投資の引き受け手:研究への長期の投資を引き受けたのは国の研究費:硤合氏は2015年の寄稿で、小さな種目から大型の特別推進研究まで、研究の段階ごとに科研費に支えられたと書いている[本文]。研究の場は東京理科大学の研究室[本文]。発見を製造法・道具として事業にする投資を引き受けた主体は、頁には出てこない[本文]。/実行の権限:研究の実行は硤合氏と学生・共同研究者の研究室[本文]。権利化の判断(審査請求・特許料)は出願人(初期3件は日本サーファクタント工業、2010年は東京理科大学)[本文]。事業化の実行の権限を持った主体は頁に出てこない[本文]。
担保の置き場所なし

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=不明・束ね=分かれた 1995〜2010年に発見と4件の出願があり、研究は研究費と研究室で続いた一方、3件は審査請求をせず、1件も登録後に特許料を納めず手放された[本文]。研究の側は束ねられていたが、事業化の投資と実行はどの主体にも束ねられず、仮説(創造期に束ねが実現しやすい)とは合わない[推論]。

結果 事業として稼いだ人は頁に出てこない。価値は科学の評価と研究資金という別の通貨で回収された[本文]。

戦略への示唆 Teece と丸島から:クレームの書き方を工夫しても市場は作れない。発見の直後に「だれが繰り返し使うか」を問い、補完資産を持つ相手と組み、出願を科学の時計に合わせて積む[本文]。所有と実行から:研究は研究費と研究室に束ねられて31年続いたが、事業化の長期投資と実行を引き受ける当事者は発見の近くにいなかった。束ねる相手(補完資産と資本を持つ企業)を発見の近くで設計することが、次の発見への手になる[本文/推論]。

実行のときに確かめる問い

  • この原理で、誰が何を繰り返し買うのか(物・製法・用途・道具のどこでお金になるか)を出願前に一行で言えるか
  • 審査請求の期間を見極めに使い、用途が見えた時点で出願を積んでいるか。囲わないなら、囲わないと決めて開いているか

出典:ノーベル賞級の発見は、なぜ特許として残らなかったのか — 硤合反応の4件の出願から、発見を事業につなぐ条件を考える/ノーベル賞級の発見の特許は、期限が来る前に手放されていた/PCR は3億ドル。硤合反応は権利ゼロ。同じ「増幅」で何が違った?

鉄道の誕生(レールと蒸気機関の結合・ワットの特許の満了)1769年(ワットの特許)〜1800年(満了)〜1825〜30年(ストックトン・ダーリントン鉄道、リバプール・マンチェスター鉄道)〜19世紀半ば(機関車の輸出産業)T9 発見先行・当事者不在型
丸島:三位一体不明 事業:事業者の構想は頁に無い。1825年のストックトン・ダーリントン鉄道は蒸気機関車を使う初の公共鉄道でスティーブンソン主導、1830年のリバプール・マンチェスター鉄道は都市間を定時運行する鉄道の原型[本文]。/研究開発:高圧蒸気機関を小型化して車両に載せる(トレビシック、1804年)。1829年のロケット号で多管式ボイラーなど以後の基本構成が固まった[本文]。/知財:ワットの分離凝縮器の特許(1769年)。1800年の満了で、ワットが避けていた高圧蒸気機関の開発が進み、機関を小型化して車両に載せる道が開けた[本文]。
Teece専有可能性 不明・価値を取った側 混在 補完資産:機関車の重量に耐えるレールと、運行の仕組み[本文](持ち手:不明)
分業と結合不明 レールの系譜(鉱山・炭鉱の軌道)と蒸気機関の系譜という別々の技術が結びついた[本文]
オープン&クローズ開かれてしまった 開いた:ワットの特許の満了(期限切れ)[本文]/閉じた:不明
所有と実行不明 投資の引き受け手:不明(資金の出し手は頁に無い)/実行の権限:発明者本人(トレビシック、ストックトン・ダーリントン鉄道はスティーブンソン主導)[本文]
担保の置き場所不明

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=不明・束ね=不明 ワットの特許の満了(1800年)後に高圧機関が車両に載り(1804年)、1825〜30年に機関車・レール・運行がそろって鉄道が生まれた(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。
  • 成長期 噛み合い=不明・束ね=不明 1830年代に米仏独などで開業が続き、19世紀半ばには英米独の機関車メーカーが鉄道を持たない国へ輸出する産業に育った(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。

結果 トレビシックの機関車は事業として定着せず、機関車・レール・運行をそろえた1825〜30年の鉄道が出発点になった。19世紀半ばには英米独の機関車メーカーが輸出産業として育った[本文]。

戦略への示唆 Teece(補完資産)から:主システム(機関車)だけでは事業にならず、レール・運行という補完資産がそろって価値になる。基本特許の満了は、それまで避けられていた設計を開く[本文/推論]。

実行のときに確かめる問い

  • 自分の発明が事業になるために、同時にそろうべき補完資産(レールや運行に当たるもの)は何か
  • 他者の基本特許の満了で、どの設計の選択肢が開くか

出典:鉄道の発明と歴史 — 日本での機関車国産化まで

FA の位置センサの系譜(リミットスイッチ、オートスイッチ、無接点スイッチから自己発電型センサへ)1930年代〜現在参照のみ
丸島:三位一体不明 事業:不明(頁に企業名・事業構想は無い)/研究開発:「終わった」を機械に知らせる目を、より壊れにくく、手間なく、多く配置する改良の連鎖:機械式リミットスイッチ(1930〜50年代)→誘導形近接センサ・リードスイッチ(1950〜60年代)→磁石内蔵シリンダ+オートスイッチ(1960〜70年代)→ホール素子・MR素子の無接点スイッチ(1970〜80年代)→フィールドバス・IO-Link・無線(1990〜2010年代)→自己発電型センサ(現在)[本文]。各時代に人に残ったおもり(接点の交換、取付・調整、接点寿命、電源と配線、電池交換)が、次の時代の目の課題になった[本文]。/知財:個別の特許は頁に無い。頁の型の整理:ハード(検出機構)は特許化・譲渡しやすいが、自働化の運用能力はノウハウとして現場に残り移転しにくく、価値はむしろ後者に宿りやすい[本文]。
Teece専有可能性 混合・価値を取った側 不明 補完資産:現場の調整・保守の能力、電源と配線、通信(フィールドバス・IO-Link・無線)[本文/推論](持ち手:不明)
分業と結合不明 不明
オープン&クローズ不明 開いた:不明(フィールドバス・IO-Link の名前は出るが、開いたかどうかの記述は無い)/閉じた:不明
所有と実行不明 投資の引き受け手:不明/実行の権限:不明
担保の置き場所不明

局面ごと

  • 転換期 噛み合い=不明・束ね=不明 配線と電池交換が人に残ったおもりになり、現在の自己発電型センサがそれを機械へ移そうとしている(局面の割り当ては推論)[本文/推論]。

結果 稼ぎ手の記述は頁に無い。一つのおもりが機械に移るたびに別のおもりが人に残り、それが次の目の課題になった[本文]。

戦略への示唆 分業(ヒューズの逆突出部)と Teece から:次の製品の課題は、前の世代で「人に残ったおもり」にある。成立の条件は完了・異常を二値または明確な基準で定義できること[本文]。

実行のときに確かめる問い

  • 自社製品で、人に残っているおもり(調整・接点寿命・配線・電池)は何か。それは完了・異常として定義できるか
  • 検出機構を特許にし、運用の知見をノウハウとしてどこに残すか

出典:「おもり」の技術史 ― 飛び杼から自働織機、オートスイッチ、そしてAIへ

ゾルトラーク(『葬送のフリーレン』)フィクション作中・約80年前〜現在参照のみ
丸島:三位一体ずれ 事業:発明者の側に事業の構想は描かれていない(「人を殺す魔法」として作られた)[本文]/研究開発:腐敗の賢老クヴァールが術式を開発[本文]。人類は封印の間に解析し、防御術式を作り、フリーレンは魔族に特化した改良版を持つ[本文]/知財:権利はどこにも存在しない。実施すれば相手に見られるため秘匿でも守れない[本文]
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 追随者・模倣者 補完資産:解析と普及の担い手(人類の魔法使い)と、対抗技術(防御術式)[本文](持ち手:人類の魔法使い[本文])
分業と結合不明 発明=魔族、解析・標準化・対抗技術=人類、改良=フリーレン[本文]
オープン&クローズ開かれてしまった 開いた:実施すれば公開される(使えば見られる)。人類は一般攻撃魔法として普及させた[本文]/閉じた:なし[本文]
所有と実行分かれた 投資の引き受け手:該当なし(作中に投資の描写はない)[本文になし]/実行の権限:発明者は封印で実行の機会を奪われ、解析と普及は人類の魔法使いが担った[本文]
担保の置き場所なし

局面ごと

  • 創造期 噛み合い=ずれ・束ね=不明 クヴァールが防御も魔法耐性も貫く攻撃魔法を開発したが、保護の重心は最初から空だった[本文]
  • 成長期 噛み合い=不明・束ね=分かれた 封印の間に人類が解析し一般攻撃魔法として普及させ、防御術式も作った[本文](局面の当てはめは[推論])
  • 成熟期 噛み合い=不明・束ね=不明 ありふれた攻撃魔法となり、人類同士の戦争にも使われ、フリーレンは魔族に特化した改良版を持つ[本文](局面の当てはめは[推論])

結果 発明者には何も残らず、価値は解析と普及の担い手と防御魔法の側へ流れた[本文]

戦略への示唆 保護の重心が空いた技術は市場ごと解析した側へ流れ、標準と対抗技術を生むのは原理まで降りた者だけ(Teece と「理解の深さ」のレンズ)[本文]。AI をブラックボックスのまま使う組織への問いとして読める[本文]

実行のときに確かめる問い

  • この技術は実施すると相手に観察されるか(秘匿で守れる前提が成り立つか)
  • 使っている技術の原理まで降りて、改良や対抗策を作れる段にいるか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/ゾルトラークは誰のものか ── 葬送のフリーレンで読む、発明と価値獲得のズレ/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む

火を使う(人類最初の発明)約100万年前〜参照のみ
丸島:三位一体不明 事業:事業戦略はない。見返りは収益ではなく生存だった[本文]/研究開発:世界各地で何度も独立に再発明されながら受け渡された[本文]。研究開発を担った特定の主体は頁に現れない/知財:守=なし。広=共有と模倣そのものが普及の手段。隠=火の起こし方は集団内の暗黙知として継承(結果としての営業秘密)[本文]
Teece専有可能性 弱・価値を取った側 誰も(公共財化) 補完資産:頁に記載なし。継承の場は集団内の暗黙知[本文](持ち手:集団(人類)[推論])
分業と結合不明 頁に記載なし
オープン&クローズどちらでもない 開いた:共有と模倣(普及の手段)[本文]/閉じた:火の起こし方の集団内の暗黙知(結果としての営業秘密)[本文]
所有と実行不明 投資の引き受け手:不明(資本の出し手は頁に現れない)/実行の権限:不明(集団)[推論]
担保の置き場所なし

結果 誰も収益は得ていない(ビジネスモデルなし)。見返りは生存で、人類の腸と脳を作り変えたとされる(頁自身が有力な仮説と留保)[本文]

戦略への示唆 発明を「権利になったかどうか」で数えると人類史の大半が視界から消える[本文]。Teece のレンズで言えば、専有の手段を特許に限らず暗黙知・継承まで含めて棚卸しすることが出発点になる[推論]

実行のときに確かめる問い

  • この成果のうち、制度(請求項)に写せない部分はどこで、それを何で継承・維持するか
  • 「権利になったか」以外の物差しで、この発明の価値を数えているか

出典:知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む/知財ビジネスモデル図鑑 — 発明と、その守り方の型を歴史事例で読む

七出典と関連

レンズごとに読む本

レンズ本
丸島:三位一体丸島儀一『知的財産戦略』『キヤノン特許部隊』(光文社新書)/長谷川曉司『御社の特許戦略がダメな理由』(特許戦略は経営者の仕事)/『井深大 私の履歴書』・中村嘉秀『ソニーがくれた夢』(創業期の事業と技術と知財)
Teece広野彩子・入山章栄『世界最良の経営論』(Teece 本人の講義の章)/入山章栄『世界標準の経営理論』
分業と結合藤本隆宏ほか編『ビジネス・アーキテクチャ』/小川紘一『国際標準化と事業戦略』(分業の合理性から国際標準化へ)
オープン&クローズと標準小川紘一『オープン&クローズ戦略 日本企業再興の条件』/名和小太郎『技術標準対知的所有権』(中公新書)/山田英夫『デファクト・スタンダードの経営戦略』/新宅純二郎『デファクト・スタンダードの本質』『コンセンサス標準戦略』/加藤恒『パテントプール概説』/Dave Mock『The Qualcomm Equation』
所有と実行『ベインキャピタル企業価値向上力の秘密』/『日本企業を再成長させる魔法の正体』(日経BP)
時間軸と歴史相葉宏二『プロが教える 問題解決と戦略スキル』(BCG ダイヤモンド)/入山章栄『世界標準の経営理論』第12・13章(知の探索・知の深化)/加藤雅則ほか『両利きの組織をつくる』/水越豊『BCG戦略コンセプト』/H. チェスブロウ『OPEN INNOVATION』/石井正『歴史のなかの特許』/名和小太郎『起業家エジソン』

主に羽矢崎の蔵書から、このレンズに効く章を確かめて選んだもの(『日本企業を再成長させる魔法の正体』はベイン型の論考の出典)。Teece の原論文(1986)、March (1991)、Thomke『Experimentation Matters』、Stanley & Lehman『目標という幻想』、スミス『国富論』、チャンドラー、Baldwin & Clark『デザイン・ルール』は、手元の蔵書にないため今後足す候補。