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日本から海外サービスの本人確認を通す — ID.me 実戦記

米国特許庁のオープンデータAPIを使いたくなり、そのために ID.me という米国の本人確認サービスを通す必要が出てきました。 日本在住だと自動審査に乗らず、パスポートを持ってビデオ通話という経路になります。半日で通りましたが、 公式ヘルプに書かれていない段差が7つありました。次に同じことをやる人が、そこで丸一日溶かさないための記録です。

2026-09-01 実施・実測/費用は無料/所要は着手から完了まで同日中

01まず、この話は「本人確認」全般に効きます

題材は特許庁のAPIですが、詰まった場所はどれも日本在住者が海外サービスの本人確認を受けるときに共通するものでした。 IRS、州政府、海外の金融サービス——ID.me を採用している先は多く、同じ段差を踏むはずです

そして最後に、英語の画面をAIに読んでもらいながら進めたので、 AIをどこまで使い、どこから先は自分でやったかも書きます。ここが一番、他の作業に持ち帰れる部分だと思います。

02この記事が始まる前に、済んでいたこと

この記録は「アカウントはあるが、本人確認が未了」という地点から始まります。 そこに至る手前で詰まる人もいるはずなので、前提を先に書いておきます。

済ませてあったこと補足
サービス側アカウントの作成数か月前に作成済み。無料
二要素認証(MFA)の登録認証アプリをスマホに入れて登録。アカウント作成フローの中で必須で、 ここを飛ばすとそもそもサインインできません。スマホに事前インストールしておくこと
ポータルが使える状態ログインして自分の案件一覧が見えている
本人確認サービス(ID.me)のアカウント1年以上前に作成済み。ただし本人確認そのものは未了だった

手前で混同しやすい3点

① アカウントがある ≠ 本人確認済み。本人確認サービスは、アカウント作成だけなら無料で数分です。 本人確認は完全に別の工程で、この記事の中身はそちら。私も1年以上「アカウントだけある」状態で放置していました。

② 2つのメールアドレスは一致しなくてよい。サービス側は業務アドレス、本人確認サービス側は個人アドレス——で問題ありません。 本人確認は「個人」に対して行われるものなので、むしろ自然な形です。ここで「揃えないと通らないのでは」と手が止まりがちですが、不要な心配でした。

③ プロフィールの必須項目は、本人確認とは別の話。「未入力だとアクセスを失う」という類の項目が別途あり、 本人確認とは無関係に埋める必要があります。片方だけ済ませて安心しないこと。

つまり所要時間の目安は、アカウントとMFAが未整備なら +30分、そこから先が本記事の範囲です。

03全体の地図

サービス側のアカウントを作る(+二要素認証の登録)。ここは詰まらない
プロフィールの必須項目を埋める。埋めないと後でアクセスを失う類のもの
本人確認(ID.me)ここだけ時間が読めない。書類提出 → 審査 → ビデオ通話
連携に同意して、目的のものを受け取る

①②④は画面入力だけで各10〜20分。③に全部の難所が集まっています。逆に言えば、③さえ抜ければ残りは同日中に終わります。

04踏んだ段差7つ

制度側の手続きで足を取られる話は日本国内でも同じで、日本の電子出願環境の構築を攻略記として書いたものがあります → 電子出願環境の構築 — 制度と社内の討伐録電子出願ソフト 起動への冒険

① 選択肢は3つ並んでいない

本人確認の方法を選ぶ画面で、ラジオボタンが2つ(自動照合 / ビデオ通話)出ます。どちらも米国の運転免許証やSSNを前提としていて、日本在住者は通せません。

正解はその下にある小さなリンク「I don't live in the United States」です。ラジオボタンではないので、「第3の選択肢」を探しても見つかりません。 そして Continue を押すと、上2つのどちらかで進んでしまいます。

② 🔴 日本語の書類には英訳の添付が必須(最大の落とし穴)

運転免許証を住所証明として出したら、却下されました。理由は「英語以外の書類には英訳が必要」。 指示された対応は 書類の写真と英訳を、並べて1枚の写真に収めてアップロードする原本には何も書き込まない(書き込むと無効。付箋も重ねず、隣に置く)。

認証翻訳(certified translation)は求められず、自作の英訳で通りました。印刷でも手書きでも、読めれば足ります。

書類種別を替えても逃げられません。公共料金の請求書も銀行明細も日本語だからです。 つまり日本在住者は、どの書類を選んでも英訳を作ることになります。最初から用意しておくのが正解でした。

③ 日本人の運転免許証に、ローマ字は無い

準備段階で「ローマ字併記のある書類を選べば安全」と考えていました。これは成り立ちません。 日本国籍の人の運転免許証は、氏名も住所も漢字表記のみです。

それでも免許証は第一候補でよく、理由が違うだけでした——顔写真付きの公的IDで、原本が常に手元にあり、鮮度要件(発行から90日以内など)が無いから。 帰結として、入力する英字住所は自分で作ることになり、漢字と英字の対応を説明できるようにしておく必要があります。

④ 公式ヘルプの順序どおりに進まない

公式は「書類審査(通常24時間以内)→ 承認メール → 通話を予約」と書いています。実際はこうでした。

書類送信 → その場で通話の待機列(目安18分)→ 待機中に審査 → 却下 → 英訳を添えて再提出 → 審査待ち

「今日は提出だけ、通話は後日」と構えているといきなり通話待機に入ります。逆に、待機列に入ってから却下が判明することもある。 提出の時点で、英訳・現物・通話の準備をすべて済ませておくのが正解です。待機列を離れると順番は失われます。

⑤ 「編集」を押すと全部やり直しになる

入力済みの氏名を確認する画面に Edit があります。押すと「Editing requires you to restart(書類と確認のプロセスが最初からになる)」。 大文字小文字を揃えたい、程度の理由で押す価値はありません。

ちなみに氏名が「名 姓」の順で表示されるのは、First/Last の2欄を欧米式に連結しているだけで正常です。 逆に入っていれば表示も逆になるので、表示順そのものが欄の割り当ての証拠になります。開いて確かめる必要すらありませんでした。

⑥ 電話番号の国が未選択だと、末尾の桁が黙って落ちる

スマホで撮影するためのリンクを受け取る画面で、国の選択欄が空のまま米国式の書式(3-3-4桁)が当たり、 日本の携帯番号(11桁)が10桁に切り詰められて表示されていました。そのまま送れば、存在しない番号にSMSが飛びます。

そもそも米国発のSMSが日本の携帯に届く保証がありません。PCのウェブカメラで済む工程なら、SMSを挟まないほうが速いです。

⑦ 「やり直させる画面」は、経路を間違えたサイン

本人確認に成功したあと、案内メールに従って進んだら、まったく別の本人確認(商標出願の代理人向け・SSNと信用情報が必要)に迷い込みました。 サービスのポータルには「本人確認」の入口が複数あり、名前が同じなのです。

判定に使えた基準

認証済みの人に必要なのは「同意」だけで、出るべき画面は「渡す情報の確認」と Allow の2つしかありません。 SSNの入力/役割(role)の選択/URLのドメインが別——このどれかが出たら、経路が間違っています。

ただしセルフィー撮影は例外で、正規の工程でした。私は最初これも「間違い」と判断して止めさせましたが、誤りでした。 人による通話確認と、顔とIDの自動照合は、別の確認だったのです。

詰まりの本当の原因は単純で、本人確認サービス側にサインインしないままポータルから入っていたことでした。 先に本人確認サービスにサインインし、同じブラウザ・同じプロファイルでポータルに戻ったら、素通りして同意画面に着きました。

05ビデオ通話は5分半で終わった

いちばん身構えていた工程が、いちばんあっけなく終わりました。実際の構成はこうです。

経過内容
1:21挨拶・氏名の確認
1:32書類の現物が手元にあるかの確認
1:58セキュリティ質問3つ — メールアドレス/どのサービスのための認証か/本サービス以外の誰かに認証を頼まれていないか
3:09身分証の番号と生年月日
3:50カメラで書類確認(運転免許証の表と裏、パスポートの顔写真頁)
4:43終了・次の手順の案内

3つ目の「他の誰かに頼まれてやっていないか」は詐欺対策の質問で、想定していませんでした。 高齢者などを騙して本人確認だけ通させる手口があるので、それを潰しているのだと思います。

240言語以上の通訳を頼めますが、使いませんでした。聞かれる内容が定型で、会話量が少ないからです。 ただし頼むなら冒頭で——中盤から頼むとやり直しになります。

準備の力点を、1つ間違えていました

日本の住所を英語でどう読み上げるか、順序が逆になることをどう説明するか、を作り込んで臨みました。 住所は聞かれませんでした。

住所が効いたのは通話ではなく書類審査の段階で、しかも必要だったのは読み上げではなく英訳の紙でした。 力を入れる場所は、想像ではなく、審査の順序から決まる——これが今回いちばん効いた学びです。

なお通話中、担当者が運転免許証を最初「Chinese」と言い、日本のものだと訂正する場面がありました。 読めない相手に説明する場面は実在します。英訳を添えた判断は、審査だけでなく通話でも効いていました。

06AIには「画面を読む」役に徹してもらった

英語の画面が続くので、AIに読んでもらいながら進めました。結論から言うと、 読解の補助に留めるのが、結局いちばん速かったです。

使い方具体
AIに頼んだ画面に何が書かれているかの確認/ドロップダウンやチェックボックスの選択肢を全部挙げてもらう(見落としが減る)/ リンクやボタンの飛び先の確認/専門用語や制度用語の意味/自分の理解が合っているかの突き合わせ
自分でやった入力・クリック・撮影・同意のすべて。パスワード、認証コード、身分証の番号、 そして取得した鍵の文字列

効いたのは「飛び先を先に確認する」だった

APIキーの画面にある「本人確認する」ボタンがどこへ飛ぶのか、押す前に確認したところ、 別サイトではなく同じサイトのアカウント設定内のセクションだと分かりました。

これで正しい入口の位置が確定し、以降は迷いませんでした。 何も考えず押していたら、画面遷移に流されて「いま自分がどの経路にいるのか」を見失っていたはずです。 実際、案内メールに従って押した先で別種の本人確認に迷い込んでいます(段差⑦)。

操作までは任せない、と決めた理由

最初は入力の一部も任せていました。途中でやめました。理由は2つです。

  1. 本人確認は、本人がやるものだから。この種のサービスは規約でアカウントの共有を認めていません。 同意ボタンを誰が押したのか曖昧になる状態を、自分で作るべきではありません
  2. 実際に、静かに間違えたから。チェックボックスの操作を任せたとき、 サイドパネルの幅が変わってレイアウトがずれ、クリックが隣の項目に当たりました。 正しい項目が外れ、別の項目が付いた状態になっていた

チェックボックスは、失敗がエラーにならない

押せなかった・隣を押した、が例外にならず、成功したように見えます。保存の直前に気づいたので実害はありませんでしたが、 気づかなければそのまま保存されていました。

以来、保存したあとに必ずリロードして、全項目を ☑/☐ で読み上げてもらい、期待値と突き合わせるようにしています。 「保存しました」の表示は、何が保存されたかを証明しません。

まとめると、AIに渡してよいのは「読む」まで。渡さないものの基準はこの3つでした。

この「AIに何を渡してよいか」の線引きは、組織の話としても同じ形で出てきます → 塞げる穴と、塞げない穴 — SlackにAIを繋ぐときの内部統制/ 設計の原理から知りたい方は Anthropic「Building Effective AI Agents」日本語図解

07持ち帰れる教訓

  1. 「エラーにならない失敗」を疑う。今回詰まった原因はほぼ全部これでした——桁が落ちた電話番号、隣に付いたチェック、 別フローへの迷い込み。どれも画面上は正常に動いています
  2. 公式ヘルプは「その国の住人向け」に書かれている。順序も所要時間も、自分の条件では変わりうると構えておく
  3. 準備の力点は、審査の順序から決める。「難しそうな工程」ではなく「先に来る関門」に投資する
  4. やり直しを要求する画面は、たいてい自分の経路ミス。ただし例外はあるので、 止める基準を具体的な文言で決めておく(今回なら「SSN/role/別ドメイン」)
  5. AIには「読む」を任せ、「決める」と「秘密」は渡さない。ボタンの飛び先を先に確認しておくだけで、経路を見失わずに済む

08これから同じことをする人へのチェックリスト

着手前に用意するもの
パスポート原本(有効期限内・番号が読めること)
運転免許証の原本(氏名と住所が印字されたもの)
🔴 上記の英訳を紙で(書類名/発行機関/氏名/生年月日/住所/交付日/有効期限/番号。自作でよい)
入力する英字住所——書類を見ながら作る。記憶で打たない
予備の書類1点(給与明細・銀行明細など。発行から90日以内のもの)
二要素認証アプリの入ったスマホ/カメラとマイク/静かな個室/安定した回線
半日の空き。提出したその日に通話まで行く可能性がある

撮影は机に平らに置いて真上から。逆光を避け、四隅を入れる。通話で書類を見せるときは肘を机につけて手ブレを止め、 画面に映る自分の映像を見ながら位置を合わせるのが確実です。

そして、通話の席には現物を置く

差し戻しの主因として明示されていた5項目の最後が、「通話時にアップロードした書類の現物を手元に用意していない」でした。 画像を送ったから不要、ではありません。原本の提示が通話の中身そのものです。

09次に読む

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