知財コンサルとは何か

知財でしか見えない先読みと、知財でしか打てない手で、事業を創り出す。

一つの問いから始まった対話の整理。定義は四度書き換わり、上が現時点の案。

【図1】定義は、判断への関わりが深まる方向に書き換わった
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    翻訳する

    知財を「権利」ではなく「経営の意思決定材料」に翻訳する仕事。

    起点
    知財(権利)
    立場
    経営・事業・R&D・法務の間に立つ通訳

    次へ動かしたもの:材料の質を上げても、顧客は決められない。一で詳しく

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    決められる状態をつくる

    顧客が事業上の判断を下せる状態を、知財の事実を根拠にしてつくる仕事。

    起点
    顧客がすでに抱えている判断
    立場
    根拠に責任を持つ。判断そのものは顧客が持つ

    次へ動かしたもの:先読みの三位一体と、当事者としての仮説検証という提起。二で詳しく

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    読み合わせ、つくり続ける

    事業で勝つために、知財・技術・事業の先読みを読み合わせ、知財の側からも仮説を立てて検証しながら、顧客(経営者、技術リーダー、事業リーダー)が決めて動ける状態をつくり続ける営み。

    起点
    まだ問われていない判断
    立場
    知財の仮説については当事者

    次へ動かしたもの:判断を前向きに動かし、事業創出に決定的に貢献したい、という方向づけ。三で詳しく

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    事業を創り出す現時点の案

    事業で勝つために、知財でしか見えない先読みから仮説を立て、経営者・技術リーダー・事業リーダーと読み合わせて自ら検証し、知財でしか打てない手で判断を動かし、事業を創り出す営み。

    起点
    知財でしか見えない先読み
    立場
    判断を動かす当事者

一翻訳から、決められる状態へ

最初の定義は「翻訳」だった。調査分析を掘り下げるうちに、材料を渡すだけでは顧客が決められないことが見えてきた。

出発点:成果物は権利ではなく判断

出願・権利化の代理(弁理士業務)や紛争対応(弁護士業務)と違い、成果物は権利ではなく判断。「その知財でどの収益をどう守り、誰に何をさせないか、させるか」を示せるかで価値が決まる。

【図2】知財を、経営の意思決定材料に翻訳する
権利 翻訳する 経営の意思決定材料
戦略策定
事業戦略とポートフォリオの整合、オープン&クローズの設計、出願と秘匿の線引き
調査・分析この部の主題
IPランドスケープ、競合・参入障壁分析、FTO、M&AやアライアンスのDD
価値化・取引
知財評価、ライセンス設計、共同開発・OI契約の条件設計、知財金融
体制づくり
知財部門の機能設計、発明発掘の仕組み、規程、人材育成

分析の質を高めるだけでは、応えられない

顧客が困っているのは「分からない」ことより、「決められない」「動かせない」こと。分析の質を磨く努力は、価値の連鎖の真ん中だけを磨いている。

【図3】価値の連鎖と、分析の外に残る三つの問題
  1. 課題設定
    問いの問題依頼された問いがずれている。「競合の特許網を知りたい」の裏に、参入可否の判断や社内説得がある。
  2. 調査・分析
    磨いているのはここ精度は必要条件。ただし品質差は顧客に見えにくく、AIで底上げもされる。
  3. 意思決定
    判断の問題分析が示すのは選択肢と根拠まで。顧客が欲しいのは、責任を伴う「で、どうすべきか」。
  4. 実行
    実行の問題事業部が動かない、予算がつかない、交渉で押し負ける。組織を通す作業が抜けると成果にならない。

三つの論点は、一本につながる

検索設計の専門性、使われ方が見えない課題、事業課題への踏み込み。判断の分岐点を知ることが、残り二つの前提になっている。

  1. 分岐点まで踏み込む
  2. 調査目的が分かる
  3. 検索設計が決まる
  4. 使われ方を確かめられる
【図4】検索設計の専門性は、式の手前と後ろに残る
式の手前

調査要件の定義

何を関連ありとみなすか。漏れとノイズを、どちらをどこまで許すか。

検索式を組む

分類・キーワード・母集団

AIで急速に差がつかなくなる。

式の後ろ

結果の保証

「この範囲は見た、ここは見ていない」と言い切れること。

手前も後ろも、調査目的が分からなければ決められない。無効資料調査、FTO、ランドスケープでは、正しい設計がまったく違う。

【図5】使われ方は、入口と出口で確かめる

入口で聞く

  • 誰が、いつ、何を決めるのか
  • どんな結果が出たら判断が変わるのか
調査

出口で確かめる

  • 報告の場に同席する
  • 一定期間後に「あの結果でどうなったか」を聞く仕組みを、依頼条件に入れておく

使われ方が見えないのは、依頼が「判断」ではなく「検索仕様」の形で届く構造の問題。

【図6】事業課題に、どこまで踏み込むか
必ず知る

判断の分岐点

どの選択肢の間で迷っていて、何が分かれば決まるのか。

ここまでは越権ではなく、検索設計の前提条件
信頼関係に応じて

知財の観点からの推奨

求められる関係ができるにつれて出していく領域。

持たない

事業判断そのもの

顧客の領域。

この線引きは二の議論で引き直される。知財の仮説については、知財の側が当事者として持つ。

流れは連続、性質には段差

調査分析から意思決定支援までは、論理の鎖としては連続している。ただし途中で問いの種類が変わる。

【図7】分析を延ばしても届かず、決定から逆算すると届く

何が事実か

答えは証拠で決まり、正しさを検証できる

  1. 問い
  2. 事実の収集
  3. 解釈

どうすべきか

答えは顧客の評価軸、リスク許容度、社内で通せるかに依存する

  1. 選択肢
  2. 推奨
段差問いの種類が変わる

分析の精度をいくら上げても、推奨は出てこない。段差を越えるには別の材料(顧客の判断基準、他の選択肢、制約条件)と、別の関係(意思決定者に近い位置と、意見を求められるだけの信頼)が要る。

ケース:「A社の特許分析」の裏に、共同開発の提案がある

依頼の文面は「競合A社の特許分析をしたい」。実はA社から共同開発の提案が来ている。同じ文面でも、ほぼ別の調査になる。

【図8】文面どおりの調査と、判断から逆算した調査
依頼の文面どおり共同開発の判断から逆算
問いA社は何を持っているか受けるか、どんな条件なら受けるか
範囲A社の全体像(広く浅く)提案された対象技術とその周辺(狭く深く)
精度傾向が分かればよい自社の実施を妨げるA社特許は漏れを許さない
成果物ランドスケープ報告交渉と契約条件の材料

単独でやれるか

  • 対象領域で、A社の特許が自社の障害になるか
  • A社以外に組める相手はいるか

断れる立場かどうかが決まる

A社は何が欲しいのか

  • A社の出願の空白と、自社の強みの重なり
  • 最近の出願が自社領域に寄ってきているか

交渉力の源泉になる

組んだ相手にどう振る舞うか

  • 過去の共同出願の相手と件数
  • 共願の後に、周辺を単独出願で固めていないか

帰属、改良発明、実施範囲の条項に直結する

共有特許の実施
共有特許は相手も自由に実施できる。競合との共願は、自社の差別化要素を相手に開放しかねない。全体像の分析からは見えない論点。
分析より先にやること
協議が始まる前に、自社の関連発明を単独で出願しておく。調査結果ではなく助言で、段差の向こう側の仕事にあたる。
提案の存在を守秘で言えない場合
中身ではなく判断の種類だけを聞く。「競争、提携、参入のどれに関わる判断ですか」。提携と分かるだけで設計を切り替えられる。

二決められる状態から、先読みの読み合わせへ

二つ目の定義には弱点があった。判断が顧客の側にすでにあることを前提にしていた点だ。そこへ次の提起が加わった。事業で勝つために、知財の先読みを技術の先読み、事業の先読みと三位一体で読み合わせ、知財自身も当事者として仮説検証する営みではないか。

【図9】先読みを含めると、起点と立場が入れ替わる
二つ目の定義先読みを含めた後
目的決められる状態(勝敗は問わない)事業で勝つ
起点顧客がすでに抱えている判断まだ問われていない判断
根拠見た範囲の事実の保証事実の保証と、検証できる仮説
立場判断は顧客が持つ知財の仮説については当事者
形案件ごとに完結仮説と検証の繰り返し

A社の例でいえば、提案が来てから調べるのが二つ目の定義だった。先読みを含めると、A社の出願の動きから「組む相手を探している」と提案の前に読み、こちらから条件を設計して持ちかけることになる。問いに答える側から、問いをつくる側に移る。

根拠の性質も変わる。事実は過去についてしか保証できないので、「言い切る」責任が「仮説を明示し、外れたら更新する」責任に置き換わる。

顧客の解像度を上げる

顧客を経営者、技術リーダー、事業リーダーと特定すると、三者が三つの先読みに対応する。誰と読み合わせるのかが定義の中で見える。

【図10】三つの先読みと、その持ち手
経営者束ねて決める
知財の先読み知財の側
技術の先読み技術リーダー
事業の先読み事業リーダー
読み合わせる

顧客を意思決定者と明示すると、「調査結果がどう使われたかわからない」課題は構造的に解消される。依頼窓口ではなく、決める人が相手になるからだ。

残る緊張

当事者性と、外部という立場
線は消えるのではなく引き直される。事業判断は経営が持ち、知財の仮説(何を出願し、何を秘匿し、どう契約するか)は知財の側が持つ。外部の人間がそこまで担うには、単発の受託ではなく継続的な関与が前提になる。
定義の広さ
この内容は、知財という機能そのものの定義に近い。コンサルに固有の役割を残すなら、組織の壁で分かれている三つの先読みを、読み合わせる場をつくること。

三状態をつくるから、事業を創り出すへ

事業リーダーや技術リーダーと同格以上に、経営者から評価される知財リーダーとして。決めて動ける状態をつくることを超え、自ら仮説検証して事業創出に決定的に貢献する。その方向で述語を書き換えた。

【図11】同格以上と評価される根拠を、定義の中に置く

知財でしか見えない先読み

出願は事業より数年早く表に出る。他社の次の一手を先に読める。

知財でしか打てない手

権利化、秘匿、契約で、誰に何をさせ、させないかを決められる。収益の取り方や提携の枠組みを、構想ではなく形にできる。

事業を創り出す

「知財でしか」がないと、三人目の事業リーダーになるだけで、知財である理由が消える。加えて、知財は技術と事業の両方にまたがるので、三つの先読みを束ねる位置に立てる。

この言葉を選ぶと、引き受けるもの

経営者が同格に評価するのは、同じ物差し(事業の成果)で測れる相手。言葉だけ強くして、責任が根拠のままだと、主張と実態がずれる。

まだ決めていないこと