ふたを開けると、レモンが浮き上がる「動き」の意匠を、22 秒の 3D 動画にして確かめる
アサヒビールの缶入りサワー「未来のレモンサワー」で、ふたを開けるとレモンスライスが浮き上がってくる一連の動きが、動的意匠として登録されたと報じられました(2026 年 10 月 21 日)。飲料で動的意匠が認められたのは国内で初めてだそうです。この頁では、その「動き」を Claude Code と three.js で 3D の動画にし、特許庁の公報で何が確かめられるかを調べました。
もとにした情報
・報道:「未来のレモンサワー」国内飲料で初の「動的意匠」取得(Yahoo!ニュース、2026-10-21)
・公報:J-PlatPat(2026-10-24 に確認)
・動画は説明のために作った模型です。商品の実物や、アサヒビールの資料を写したものではありません。ロゴや商品名の表示も入れていません。
動画:22 秒で見る
閉じた缶から始まり、ふたを開け、底のレモンに泡がつき、レモンがまっすぐ浮き上がって飲み口に現れるまでを、6 つのカットで見せます。右上の数字(缶の中の圧力、レモンについた泡の量、底からの高さ)は、下の表の模型から計算しています。
動的意匠とは
意匠(デザイン)は、ふつうは止まった形を守ります。けれども、物の形や模様が、その物の働きによって変わることがあります。そのときは、変わる前から後までの形をまとめて一つの意匠として出願できます。願書には、変化することと、その働きを書きます(意匠法 6 条 4 項)。これが動的意匠です。
報道によると、アサヒビールは 2022 年にも「生ジョッキ缶」の、開けると泡が盛り上がる動きで出願しました。そのときは、泡ができては消える様子が不規則で、決まった形や変化の規則が認められないとして登録されませんでした。今回は、レモンが浮き上がる動きに一定の規則があると認められた、とされています。
公報で確かめたこと(2026-10-24 時点)
J-PlatPat で、アサヒビールが権利者の意匠を調べました。
- 包装用缶(意匠分類 F4-712)の登録は 7 件。そのうち 2024 年 11 月に登録された 4 件(意匠登録第 1785604 号=基礎意匠、第 1785682 号・第 1785683 号=その関連意匠、第 1785605 号)は、どれも図が正面・背面・左右の側面・平面・底面の 6 面だけでした。「ピンク色の部分以外が意匠登録を受けようとする部分」と書かれた部分意匠です。変化の過程を示す図はなく、動的意匠ではありません。
- レモンが浮き上がる動きを示す公報は、まだ見つかりませんでした。同社名義で 2026 年に登録され、秘密意匠の期間中のため中身がまだ公開されていないものがいくつかあります。
このため、「図面は何コマで、どう動くか」は、公報ではまだ確かめられません。公報が出たら、図のコマ数と変化の順をこの頁に追記し、動画の動きもそれに合わせ直します。
動きの合わせ方:報道写真の 3 つの状態
代わりに、報道に載った写真の 3 つの状態に、レモンの高さと傾きを合わせました。写真では、缶を透かしてレモンを見せ、下のほう・なかほど・上のほうの 3 つの位置が並んでいます。
| 状態 | レモンの中心の高さ | 傾き(正面から見て) | 動画で通る時刻 |
|---|---|---|---|
| 1 下のほう | 缶の高さの約 38% | 右下がり 約 18° | 約 9.4 秒 |
| 2 なかほど | 約 50% | 右上がり 約 15° | 約 10.3 秒 |
| 3 上のほう | 約 70% | 右上がり 約 17° | 約 11.6 秒 |
写真から読むと、レモンは横にずれずにまっすぐ昇り、下のほうから中ほどへ移るところで傾きを一度だけ切り返しています。動画もそのとおりに動かしました。高さと傾きは写真から目で読んだ値なので、数度の幅があります。

図 動画の模型で描いた 3 つの状態(左から 下のほう・なかほど・上のほう)。
数字はどこから来るか
浮き上がる理由は、次のように考えて模型にしました。説明のための仮説で、メーカーの説明を確かめたものではありません。開ける前は、炭酸ガスが圧力で液に溶けています。ふたを開けると圧力が下がり、溶けていたガスが泡になります。泡はざらついた果肉につきやすく、ついた泡の浮力がレモンの重さを上回ると、レモンが浮き上がります。
| 前提・結果 | 値 | 意味 |
|---|---|---|
| 缶 | 直径 6.6 cm・高さ 12.2 cm | 350 mL 缶に近い寸法。液面は底から 10.6 cm |
| レモンの輪切り | 直径 5.2 cm・厚さ 0.5 cm | 体積 約 10.6 cm³ |
| 密度(仮定) | レモン 1.03/液 0.99 g/cm³ | 果肉は液より少しだけ重く、そのままでは沈む |
| 浮かぶのに要る泡 | 約 0.43 mL | 体積 ×(密度の差)÷ 液の密度 |
| 開ける前の圧力(仮定) | ゲージ 0.20 MPa | 開けると 0.25 秒ほどで 0 に下がるとした |
| 泡のつき方(仮定) | 最大 0.8 mL・時定数 4 秒 | 開けてから泡がだんだん育つ |
| 浮き始め | 開けて約 3.2 秒後 | 泡が 0.43 mL を超えたとき |
| 水面に出る | 開けて約 9.5 秒後 | 浮力の余りが大きいほど速く昇るとした(見せ方の目安) |
寸法・密度・圧力・泡の育ち方・昇る速さは、どれも一般的な値を置いた仮定です。商品で測った値ではありません。
作り方:4 つの段階
MacBook 1 台(GPU サーバーは使わず)で、Claude Code に段階を区切って頼みました。3D は three.js、撮影は Playwright の Chromium で 1 コマずつ画面を撮り、ffmpeg で動画にしています。22 秒・660 コマの書き出しは約 2 分です。
- 試し撮り:画面を出さないブラウザで、影や映り込みのある 3D が描けるか、数字のカードを重ねて撮れるかを 6 秒の小さな場面で確かめました。canvas だけを撮る方法では HTML のカードが映らないので、頁ごと撮る方法にしています。
- 模型と最初の動画:缶・液・レモン・泡を置き、上の表の模型で「いつ浮き始め、いつ水面に出るか」を先に計算してから、動きをそれに従わせました。時刻 t を決めれば 1 コマが決まる作りなので、何度撮り直しても同じ動画になります。
- 画づくり:缶は実際の缶の断面(底のへこみ、肩の S 字、口の巻き締め)を回して作り、外側に大小 900 粒の水滴を付けました。光は撮影スタジオのように縦長のソフトボックスを置き、その映り込みが縁に縦の筋として出るようにしています。液は白く濁らせつつ中のレモンが透けて見える濃さに調整し、液面は開けた瞬間とレモンが出たときに波打たせました。泡はレモンにつく泡・内壁の細かい点々・列になって昇る泡・液全体の泡の 4 種類を重ねています。カットは 6 つに割りました。
- 公報の確認と動きの合わせ直し:J-PlatPat で公報を確かめ、動的意匠の図がまだ公開されていないことを確認しました。そのうえで、報道写真の 3 つの状態に高さと傾きを合わせ、ゆれや横ぶれを取り除いて、規則のある動きにしました。
この先
- 動的意匠の公報が出たら、図のコマ数と変化の順を読み、動画の 3 つの状態をそれに合わせ直す。
- 「生ジョッキ缶」の泡と並べ、不規則な動きと規則のある動きの違いを、同じ模型で見せる。
3D の描画には three.js(MIT License)を使いました。