2ノードTP 実測メモ / DGX Spark ×2

1トークンの旅。
遅さは廊下のではなく、
廊下を往復した回数で決まる。

32Bを2台に分けたら、288 tok/s が 188 tok/s に落ちた。計算は半分になったのに。 その答えは、この4つの語彙だけで説明できる。

机の広さ

メモリ容量
載るか / 載らないか

ページの配達

メモリ帯域 GB/s
1トークンの生成速度

生徒の計算

演算性能 FLOPs
学習とプロンプト読込

廊下

ノード間レイテンシ
層ごとの答え合わせ

01 — 署名図

1トークンを作るのに、廊下を120回往復する

ニューラルネットは「前の層の答えを使って次の層を解く」構造です。2台に分けると、層をまたぐたびに お互いの計算結果を合体させる必要がある(all-reduce)。60層なら、1トークンあたり約120回の往復。 スライダーで廊下の長さを変えて、勝敗がどこでひっくり返るか見てください。

1台 — 一人で全部解く
0/60  ·  廊下往復 0回  ·  経過 0.0
2台TP — 半分ずつ解いて答え合わせ
0/60  ·  廊下往復 0回  ·  経過 0.0
2台TPは
1層あたりの内訳 — 1台:配達 1.00 / 2台:配達 0.50 + 廊下
配達で浮くのは 0.50 だけ。廊下が 0.50 を超えた瞬間、2台は損に転じる。
渡す紙は数十KBしかない。帯域(廊下の幅)は余っている。効いているのは往復の回数。
02 — 人物像

クラウド、Spark、Mac Studio

同じ「AIを動かす機械」でも、4つの軸の配分がまるで違う。得意な仕事が違うのは、性能の優劣ではなく配分の差です。

机の広さページの配達生徒の計算廊下人物像
クラウド
H200 ×8
1128 GB
4.8 TB/s
非常に高い
同室
NVLink 900GB/s
特待生が肩を並べ、後ろで300人が同じ教科書を覗く
DGX Spark
GB10 ×1
128 GB
273 GB/s
高い
なし 電卓は最新鋭。だが本棚が遠く、待っている
DGX Spark
×2 TP
256 GB
546 GB/s
高い ×2
廊下
~25GB/s・120往復
机は増えた。ただし毎層、廊下に出る
Mac Studio
M3 Ultra
512 GB
819 GB/s
低い
なし 机は体育館。配達もそこそこ。本人の計算は遅い

Mac Studio の理論値は 819 ÷ 145 ≒ 5.6 tok/s。Spark 2台の 546 ÷ 145 ≒ 7.5 より低い。 それでも Mac が実戦で勝つのは、廊下がなく理論値に近づけることと、机に 367GB の余白が残るから。 実測が 2〜9 tok/s と3倍も振れたのは、その余白のなさが出ています。

03 — 机を買う前に

教科書を薄くする

量子化は、教科書の中身を減らしません。減らすのは印刷の精度です。 「3.14159265」と16桁で刷ってあった数字を、「3.1」と刷り直す。書いてある内容の順番も構造も同じ。ページが薄くなるだけ。

bf16 の豪華本

Qwen2.5-72B — 145 GB
1台に載らない

4bit の文庫本

同じ72B — 約 40 GB
1台に載る・余白 85 GB
配達
約 3.6 倍速くなる司書が運ぶ紙が 145GB → 40GB。decode は配達律速なので、そのまま tok/s に効く。
生徒の計算
ほとんど速くならない文庫本を開いた瞬間、生徒は頭の中で桁を戻して(dequantize)フル精度で計算する。だから prefill(長いプロンプトの読込)は速くならない。むしろ桁を戻す手間でわずかに遅くなることもある。
机の余白
+85 GBここに生徒のノート(KVキャッシュ)を広げられる。バッチが積める。長いコンテキストが通る。2〜9 tok/s の振れが消える。実はこれが一番大きい。
廊下
消滅する1台に載れば all-reduce はゼロ回。120往復が丸ごと無くなる。
精度
丸めた分は失われるただし素朴な丸めは使わない。AWQ / GPTQ / NVFP4 は「重要な段落だけフルカラーで残し、埋め草は安い紙に刷る」= 外れ値の保護。さらに数十個の数字ごとに「このページは ×0.03 倍で読め」という倍率を欄外にメモする(グループ単位のスケール)。だから 1/4 に薄くしても、読める。

量子化は配達だけを直す薬です。「Spark は電卓が速く、配達が遅い」という診断と、正確に噛み合っている。

1台に載るなら、TPは使うな
載らないときだけ、TPは容量を買う道具として使え。
そして机を買う前に、教科書を薄くしろ

TP=2 の正体は「速度を売って容量を買う取引」。イーサネット結合では売る速度の値段が高すぎる。 Mac Studio は「価格を払って、速度を売らずに容量を買う」。4bit量子化は「精度を少し払って、容量と速度を両方買う」。 ── 支払う通貨が違うだけで、買っているものは同じです。