分業の弊害と知財業務の再統合

分業は精度を上げ、視野を狭めた。AIは、その分業を再び束ねるかもしれない。

 スミスが称え、同時に警告した分業を手がかりに、工程ごとに細分化された知財業務がAIでどう変わりうるかを考える。

要点

  • スミスは分業を称えた一方で、分業が人の視野を狭めるとも警告した
  • 知財業務は工程ごとに細分化された、分業の産物である
  • AIによって、その分業が再び統合に向かいつつあるのではないか仮説

1スミスの警告

アダム・スミスは『国富論』第1編で分業が生産性を飛躍させると説いた。しかし第5編では、少数の単純な作業に一生を費やす人は理解力を働かせる機会を失い、視野が狭くなると指摘している。スミスが示した処方箋は公教育だった。

2知財業務は分業の産物

工程主な担い手
発明研究者・技術者
先行技術調査サーチャー
明細書作成・出願弁理士
翻訳特許翻訳者
期限・年金管理特許事務
契約・ライセンス知財部・法務
訴訟弁護士・弁理士

工程ごとに専門家が育ち、精度は上がった。その一方で、事業全体の中で知財を見る視点は分断されがちだった。

3なぜ統合に向かうのか

分業の利益は「専念による熟練」から生まれ、分業の限界は「工程間の調整費用」で決まる。AIはこの両方を動かす。

要因AIによる変化帰結
熟練調査・文書作成・翻訳の熟練を補う専念する利益が小さくなる
調整費用工程間の受け渡しや確認が軽くなる一人が複数工程を担える

専念の優位が薄れるなら、仕事は再び統合に向かうはずである。

4問い

これから価値を持つのは、一工程の深さよりも、発明から事業の収益化までを見渡してつなぐ力ではないか。

なお、統合が進んでも専門性が不要になるわけではない。最終的な判断と責任は専門家に残る、という留保は付けておきたい。

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